第26話 まさかの事実にキャパオーバーしました
街へ行くまでの間、なぜか溜め息が多かったジェイコブさんたち。ただ、街へ来てからは、というかジェイコブさんの家を見て、ジェイコブさんたちのことを知ると、今度は私が溜め息を吐くことになったよ。
いや、もちろん、ジェイコブさんたちの前ではやらなかったよ。そんな失礼なことね。ただ……。
ただね、本当にジェイコブさんの家でやっていけるのか、何か失礼なことをして、ジェイコブさんたちを困らせることにならないかって。これからのことを考えたら、思わず溜め息が出ちゃってね……。
まず、街までの道のりだけど。森で魔獣に襲われた以外は、これといった問題は起きず。おかげで順調に進むことができて、予定よりも早く、ジェイコブさんたちが住んでいる街、カトリアーナに着くことができたんだ。
それで着くまでに、カトリアーナはこの辺りで1番大きな街で、かなりの人が住んでいると聞いていたんだけど。確かに、カトリアーナに着くまでに、5つの街で泊まったけど、その中で1番大きいと思った街の5倍はあったかな。
そして街は、異世界ファンタジーみたいな街で。木造建ての建物に石畳の広場が広がる、私の大好きな街だったし。魔獣たちや他の外敵からの攻撃を防ぐために、街全体が高く厚い城壁で囲まれていて。これが本当に圧巻で、とっても感動したんだ。
ただ、どの街も同じなんだけど、街へ入る時は、外壁に設けられた大きな門を通らなくちゃいけなくて。そこで、街に不審者や犯罪者が入らないように、身分の確認が行われるんだけど。
この入り口であることをおかしいと思い、後で予想していなかった事実を知ることになったんだ。
この世界には、一般の人々と貴族の人たちがいて、貴族の人たちはなるべく速やかに街に入れるように、一般の人々とは門が分けられているの。
そうしたらね、ジェイコブさんが貴族用の門の方へ行って。そこでは、騎士の人たちが、ものすごい勢いでジェイコブさんたちに敬礼したんだよ。
それで私はこれまで、普通に、っていうのはあれだけど。そういうのを考えずに、街で普通に暮らすって考えて、街に来ちゃっていたから。貴族? あれ? ってなっちゃって。
そんな何とも言えない感じのまま、貴族専用の門から街に入り、ジェイコブさんたちの家に到着すれば。ジェイコブさんの家は大豪邸でした。
そこで私は子供っぽく、
「おおきいおうち! じぇいこぶしゃん、しゅごい!!」
って言ってみたよ。というかね、なんかプチパニック? みたいになっていて、普通に聞けなかったの。そうしたら、ジェイコブさんが、
「俺はとっても偉いんだぞ!」
と言ってね。それから、家族の紹介を受けて分かったこと。ジェイコブさんは、侯爵家当主だったんだ。
いきなり現れた私を、家族に迎え入れてもらえるなんて、こんなありがたいことはなくて。本当に感謝しているよ。
だけど、これまで地球の、狭いひとり暮らし用アパートで暮らしていた私にとって。貴族なんて、全く関係ない世界で生きてきた私にとって。この事実は、あまりにも大きすぎた。
お屋敷の中に入る前から、豪華な庭に驚き。玄関前に着けば、出迎えてくれた使用人さんやメイドさんの数に、さらに驚き。そしてお屋敷の中に入れば、その豪華さに驚いて、目がチカチカしてしまい。
あまりのことに、私のキャパシティがオーバーしてしまって、私は夕飯前にダウン。それで、ジェイコブさんたちを心配させてしまうという、大失態をやらかしてしまい。目が覚めれば、もう次の日の朝だった。
それから、グルルには、一応治癒魔法をかけてもらったんだけど。精神的なものが追いつくのには、まだまだ時間がかかりそうで。それで、誰にも気づかれないように、何度か溜め息を吐いたって感じなんだ。
「ヒトミちゃん、ご飯は食べられそう?」
「あい」
「そう? でも無理はダメよ。消化に良いものを作ってもらったから、食べられるだけ食べてね。それからまたゆっくり休んで、元気になったら家の中を案内してあげるわ」
「あい」
『ヒトミ、パン食べるんだじょ!! そうすればすぐに元気なんだじょ!!』
「そういえば、ヒトミちゃんはパンを作れるのだったわね。こんなに小さいのに凄いわね。そうだわ。食べ慣れている方が良いでしょうし、スープにパンを浸して食べたらどうかしら」
「そうだな。その方が食欲も出るかもしれないからな」
そう言われて、マジックバッグから全粒粉パンを取り出す。それをじっと見てくる、グルルとモルー。そしてジェイコブさんとオリヴィアさん。
堂々とは見てこないけど、気になるのかチラチラと見てくるのは、私付きのメイドのライラさん。筆頭執事のセバスチャンさんだけは普通にしていて、ライラさんのことを注意していたよ。
ジェイコブさんとオリヴィアさんの姿が、グルルとモルーにそっくりだった。
「……あの、みんなのぶん、だちましゅ」
そう言って、その場にいた全員分のパンを、いろいろと出した私。それをササッとお皿に乗せるセバスチャンさん。
そうしてなぜか全員で、私の部屋で食事をすることになり、ひと口パンを食べたジェイコブさんたちの反応は……。美味しいの連呼で、勢いよく残りのパンを食べ終わると、その勢いのままどこかへ行っちゃったんだ。
いつも1番騒がしいモルーが、あまりの勢いに驚いていたよ。うん、喜んでもらえたようで良かった。
でも……。はぁ。私はまた小さく溜め息を吐く。早く慣れないとなぁ。ジェイコブさんたちに失礼だよね。
ただ、この後、まだまだ私たちに、いろいろと面倒ごとが起こるとは、この時の私は思ってもいなかったよね。
面倒ごとというか、ちょっとやらかしちゃったっていうか、原因はバカ神なんだけどね。まぁ、後々それで、みんなを助けられることになったから良いんだけどさ。




