表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ちっちゃなパン職人、焼けば魔獣が寄ってくる!? 〜みんな私のパンにメロメロです!!〜  作者: ありぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/43

第2話 焼きたてパンは巨大な魔獣をも飼い慣らす?

 バカ神!! いつでも見守ってるから、なんて言うなら、今すぐに私をあんたの所へ戻してよ!!


 見守っているとのたまわったバカ神に、そう心の中で叫んだ、その時だった。


 私が今いる場所から、洞窟は3方向へ続いていいるんだけど。その中で1番大きな通路、鳴き声が聞こえた方から、カタッ、コトンッ、と何かが転がるような音がしたんだ。


 風かな? うん、風で何かが転がっただけに違いない!! そう思い込もうとした私。だけど……。そのすぐあと、暗闇の奥から、


『グルウゥゥゥゥゥゥッ!!』


 という、低くて圧のある唸り声が響き。さらにペタ、パタという、何かが歩いてくるような音が、どんどんこちらへと近づいてきたかと思うと、それが現れたんだ。


 毛が銀色に光って見え、牙は異様なほど大きく、ライオンの3、4倍はあろうかというような、馬鹿みたいに巨大なオオカミのような生き物がね。


 その瞬間に思ったよね。『あ、これ、終わった』って。転生数分で新しい人生が終わるって、考えられないんだけど……。


 これも全部、あのバカ神のせいだ!! 何が「新しい世界で幸せに」よ。お前のせいで、転生して数分で人生が終わろうとしてるは! 覚えておけよ、これで死んで、またあんたの所に戻ったら、絶対に許さないからな!!


 ああ、もう!! あんな生き物に襲われたら絶対助からないし。逃げたとしても、このちびっ子の体じゃ一瞬で捕まるよね? うう……、食べられるのは本当に嫌だけど、どうせなら苦しいとか痛いとか感じないで、一瞬で殺してくれないかな?


 と、こんな感じで、目を覚まして数分で2回目の人生を諦めた私。どんどん近づいてくる、大きなオオカミみたいな生き物。近づくにつれて、ただ息をしているだけなんだろうけど、体が大きいせいか、その息が風みたいに私の髪を揺らす。


 そして数歩で、私の1メートルくらい手前まで来たその大きなオオカミ似の生き物は、ピタッとその場で止まり、鋭い目つきのままジッと私を見てきたよ。


 そんな大きなオオカミ似の生き物を、私も見つめる。あの、すみません。やるならサッサとやってもらえませんかね? 怖い時間を長引かされるのは、ちょっと……。


 あっ、前足が上がった。あの~、今のままだとちょっと手が届かないんじゃ? もう少し前に出てもらったほうが……。

 って、何で今にも死ぬそうな状況で、私がそんな事を考えなくちゃいけないのか。本当、殺すならササッと殺してくれ。


 大きなオオカミ似の生き物が自分でも、『あれ? 距離が……?』とでも思ったのか、首を少し傾けたあと、また私の方へ歩いてこようとしたよ。

 いや、あなた、見た感じなかなか強そうなで、判断力がありそうなのに、その『あれ?』って何。


 はぁ……そうそう。うん、もっと近づいて。それで痛いって思う暇もないくらい、サッサとお願いね。


 やられる前にまさかの心配をしながら、これから襲いかかってくるであろう衝撃と痛みに備えて、私はそっと目を閉じた……はずだった。


 2秒も経っていなかったんじゃないかな? 突然、


『グルウゥゥゥゥゥゥッ!!』


 大きなオオカミ似の生き物が、また今までみたいに、圧のある大きな声で唸ったんだ。いや、目の前に私という餌が大人しく座ってるんだからさ、そんな今唸らなくても良いじゃない。


 私は思わず目を開けて、向こうの様子を見ちゃったよ。するとまた、


『グルウゥゥゥゥゥゥッ!!』


 と唸るあの大きなオオカミ似の生き物。……ん? 唸る? 今の唸ってた? いや、今の声、喉からじゃなかったような?


『グルウゥゥゥゥゥゥッ!!』


 うるさいな! さっきから何回唸れば……って、あれ? 今、お腹から聞こえた? 聞こえたよね!? この同じ唸り声……。まさか、今までの唸り声だと思っていたものは全部、お腹が鳴ってる音だったの!?


 まさかの真実に、今置かれている状況も忘れて、じっと大きなオオカミ似の魔獣のお腹を見ちゃったよ。というかね、本人も自分のお腹を見てるし。


 どれだけお腹が減ってるのよ。それに、そんな唸り声みたいなお腹の音を鳴らすくらいなら、サッサと私を食べれば良いじゃないか。こんなに時間をかけてさぁ。

 ここには私とあなたしかいなくて、食べられるの物と言ったら、私しだけなんだから。ゆっくり食べられるでしょう。私が食べ物を持っていれば別だけどさ。


『グルウゥゥゥゥゥゥッ!!』


 だから、うるさいって。もう少し静かに鳴らせられないの? あー、でもお腹の音じゃ、自分じゃ無理かぁ。

 私も静かな場所でお腹が鳴って、めちゃくちゃ目立って恥ずかしい思いをしたもんなぁ。って、だから違うって。今はそんなことを考えている場合じゃなくて。と……ん?


 今度はどうしたんだ? 私が心の中でいろいろ言っているうちに、何故かクンクンと、いろいろな場所の匂いを嗅ぎ始めた大きなオオカミ似の生き物。

 そしてさらに私に近づいてくると、何故か私には目もくれず、私の横に置いてあったマジックバッグの匂いを嗅ぎ始めたんだ。


 何でバッグの匂いを? バッグの匂いを嗅いでも、良いことなんてないでしょう? まぁ、本人が好きな匂いがバッグに付いているとか、食べ物が入っているとかなら別だけど。


 ……ん? 食べ物? ちょっと待って、食べ物!? マジックバッグに入っている食べ物の匂いがするかは分からないけど、私、食べ物持ってるんじゃん!! もしかしてそれに反応してる!?


 私はそっとマジックバッグに手を伸ばし、自分の膝にバッグを乗せる。と、大きなオオカミ似の生き物は、そのバッグの動きにもついてきたよ。


 あの、もし良かったらなんだけど。反応してるのが、『あれ』に対してかは分からないしね。だけど『あれ』をあげるから、ちょっと落ち着いてもらえないかな? それでもしあれだったら、見逃してもらえないかな? 


 私は自分で焼いた、そしてバカ神が増やしてくれた『あれ』を思いながら、マジックバッグに手を入れる。いろいろあり過ぎて、自分では気づいていなかったけど、私の手は震えていたよ。


 私がマジックバッグに手を入れてすぐだった。私の手に何かが触れて、ふわっと良い香りが漂ってきたよ。焼きたてのあの香りだ。

 そう、私が取り出そうとしているのは、私が焼いたパン。匂いと感触から、どうやらちゃんと取り出せたみたい。


 私はもう片方の手もバッグに入れ、両手の手でパンを持つと、カバンから手を引き抜く。すると私の手には、ふわふわで温かい食パンがしっかり握られていたよ。


 と、その瞬間、大きなオオカミ似の生き物が、ピンッ! と耳を立たせ、ヘッヘッとリズミカルに息をしながら口を開けたの。その顔が、どうにも笑っているように見えてね。

 ほら、柴犬とかコーギーとか、わんちゃんが口を開けると、自然と笑っているように見えることがあるでしょう。それと同じで、喜んでいるように見えたんだ。


 私は大きなオオカミ似の生き物の前に、そっと食パンを差し出しだす。


「お、おなかしゅいてるんでちょ? ど、どじょ……?」


 人の言葉を理解できるかは分からないけれど、仕草を交えてなんとか伝える。ちょっとあなたのサイズ的に、ひとくち……いや、ひとつまみ? みたいな感じかもしれないけど、どうぞ。


 すると、大きなオオカミ似の生き物の鼻がひくひく動いたかと思うと、すごい勢いでパンの匂いを嗅ぎ始め、数秒後……。がぶっ!! と一瞬でパンをたいらげたんだ。


 そして、ブンブンとめちゃくちゃ激しくしっぽを振り始め、さっきよりもニッコリと笑って見えたんだ。


「あ、あの、おいちかった? これしゅき? もひとちゅたべる?」


 私はそう聞いてみる。それに思い切り頷く大きなオオカミ似の生き物。……言葉が通じてるのか? 


 私はもう1度マジックバッグに手を入れ、次は別のパン、ミルクブレッドを取り出してみた。同じものよりも違う物の方が良いかなって。そしてまた目の前に置いてあげる。と、匂いを嗅ぎ、また一瞬で食べた大きなオオカミ似の生き物。


 そこから先は、あっという間だった。私は2日間で、いろいろなパンを作っていたんだけど。順番に出してあげれば、20個ぺろっと食べ尽くしてしまったんだ。


 しかも途中から私の横で伏せをして、私がパンを出すたびに、私の体に自分の顔を擦り付けてから、喜んで食べてくれたんだよ。うん、その喜びに関しては間違いないと思う。しっぽなんて、ブンブンふりっぱなしだったし。


 そうして食べた後は、大きなゲップをして、私の横で顎まで地面につけ、ゆっくりし始めたんだ。これはあれかな? 襲われなくて済む感じ? なら嬉しいんだけど。ゆっくりまったりする大きなオオカミ似の生き物を、動かずに見る私。


 と、その時だったよ。私たちの後ろにある通路から、声が聞こえてきたんだ。


『良い匂いだじょ!! こっちからするんだじょ!』


 ってね。そして現れたのは、子犬サイズのもふもふとした、コウモリみたいな生き物だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ