第18話 上手くいった戦闘、そして……
ネズッツーの動きは単調で、ほとんどの攻撃が真っ直ぐ突進してくるか、ジャンプ攻撃をしてくるかなんだ。あとは、レベルが高いネズッツーだと、そのいつもの攻撃に加えて、噛みつき攻撃と引っ掻き攻撃をしてくる感じ。
だからネズッツーと戦う時は、相手がどれくらいのレベルなのか、なるべく確認してから、相手に合わせて戦うと良いの。さて、今回のネズッツーは……。
確認するのは歯の長さと爪の長さ。どちらも一定の長さを超えると、噛みつきや引っ掻き攻撃をしてくるよ。歯は、普通は口から出ている部分が3センチくらい。だけど、噛みつきをする場合は6センチくらい。
爪も、普通はやっぱり3センチくらいで、引っ掻きをしてくる時は5センチくらい。それに爪先が鋭く尖っているの。
私は急いで、突進してくるネズッツーを確認する。すると今回は、歯も爪も普通のネズッツーだった。よし! これなら一旦攻撃を交わしてから……。
数秒後、止まらずに突っ込んできたネズッツーは、やっぱり噛みつきも引っ掻きもしないまま、私に体当たりしてこようとして。私はそんなネズッツーをサッと避けると、次の攻撃に備えながら、また不思議棍棒を構える。
勢いがつき過ぎて止まることができず、少し向こうまで走って行ってしまったネズッツー。でも何とか止まると、すぐにまたこっちへ突進してきて。そしてもう1度、私に体当たりしようとしたんだけど。
私は見逃さなかったよ。ネズッツーが、後ろ足に力を込めるところをね。これはジャンプ攻撃だ!!
『キキィィィーッ!!』
「ちょおぉぉぉっ!!」
私の目の前で、やっぱりジャンプ攻撃をしてきたネズッツー。
でも私は、それに合わせてしっかりと、ネズッツーの胴体を切るように不思議木刀を振ったから、私の攻撃はビシッと決まり。ネズッツーの胴体にスパッ!! と綺麗な深い傷を負わせることに成功。
でもここで安心はできない。深い怪我を負っていても、向かってくるのがネズッツー。私はすぐに倒れているネズッツーに近づき、しっかりと止めをさしたよ。そうして動かなくなるネズッツー。
よし、1匹目は終了。次はモルーが毒で弱らせてくれたネズッツーだ! と、そちらを振り返れば、ちょうどモルーの姿も見えて。モルーはもう、2匹のネズッツーを倒していたよ。さすがモルー、私も最後までしっかりやらないと。
毒でヨタヨタしているネズッツーに近づく私。が、近づきながら気づいた。こいつはレベルが高いネズッツーだと。私は一旦近づくのをやめて様子を見る。
するとヨタヨタ、フラフラしているくせに、それでも私に向かって突進してきたネズッツー。そしてガブッ!! と噛みつき攻撃をしてきたんだ。
やっぱりと思いながら、私は攻撃を避けネズッツーの後ろに回り込むと、そのままグサッ!! と攻撃し、しっかり止めをさしたよ。
ふぅ、ちゃんと確かめておいて良かった。焦って早く倒そうとして、ちゃんと確認せずに近づいていたら、思わぬ噛みつき攻撃を受けるところだった。
私はモルーに声をかける。
『もるー、かくにんちた!?』
『これからなんだじょ!!』
『ちっかりかくにんね!!』
『分かってるんだじょ!!』
それをこの前しなくて、怪我しそうになったのは誰さ。止めをさしたつもりでも、時々生きていることがあるから、死んでいるかもしっかり確認しないと。
『もるー、どう!?』
『問題なしなんだじょ!! ヒトミはなんだじょ!!』
『あたちも、もんだいなち!!』
『確認してもらうなんだじょ!!』
私たちはネズッツーとの戦いを終えると、グルルとシエラを呼んだ。最後はいつも、ちゃんと倒せているか確認してもらうんだ。そしてその時に、次はどうしたら良いとか、あそこが悪かったからこうした方が良いとか、アドバイスをもらうの。今日はグルルが私を見てくれたよ。
『うむ、なかなか良いんじゃないか。ただ、避けるときに、もう少ししっかりと避けられるようになるといいな。避けた後すぐに攻撃するのに、ヨタつかないようにだ。こう、片足だけでも良いから、しっかりと地面に足をつけるようにしてみろ。戦いに慣れるまではな。慣れたら、そこからまた新しい攻撃方法を考えれば良い』
「あい!!」
『だが今日は、それ以外はとても良かった。良くやったぞ』
「へへへ」
『ヒトミ、お話し終わりなんだじょ?』
「うん! もるー、どうだった?」
『おいら、褒められたじょ。でも、また頑張るところもあったじょ。ヒトミはどうだじょ?』
『あたちもおなじ!』
『そか、なんさじょ!』
『2人とも、今日は全体的に良かったわよ。はい、ご褒美のメロロよ』
そう言いながら、メロンに似た果物、メロロを出してくれたシエラ。
『やったなんだじょ!!』
「ありがちょ!!」
大きさもメロンと同じくらいで、それを半分に割ってもらい、モルーはそのまま。私はリスに似ているリッスが、木を削って作ってくれた木のスプーンを使って、メロロを堪能したんだ。
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『ここまでは特に変わった様子はないな。オリヴィア、何か気づいたことは?』
俺たちは、冒険者ギルドからの報告を受け、竜巣の森で起きているという異変を確かめるため、数日かけて森の少し手前までやって来ていた。
ただ、森だけで異変が起きているのかは分からなかったからな。道中でも異変を見逃さぬよう、ずっと気を配ってきたのだが……。
「私もこれといって。いつも通りだと思うわ。人がいないのも、いつものことだしね。ルーシャン、あなたはどう?」
「そうだな。強いて言うなら、時々この辺りでも、魔獣と人の戦闘跡が残っていることがあるが、それが見当たらないってところか。もっとも、たまたまこの道にないだけで、他の道にはいつも通りあるのかもしれん。あるいは今回の森の異変に関係していて、こちらでも騒ぎがないか……。どちらとも言えないといったところか」
こんなふうに、小さな異変はあったものの、俺も妻のオリヴィアも、騎士団長で幼馴染のルーシャンも、大きな異変には気づかず。いつも通りの日数と時間で、ここまでたどり着くことができていた。
『確かにどちらかか分からないわよね』
「まぁ、何だ。もう少しで着くからな。そうすれば、少しは何か分かるだろう。なにしろ、いつもはこの辺りまで聞こえている魔獣たちの声が、今はほとんど聞こえていないからな」
俺の言葉に、皆が竜巣の森を見る。すでに目の前に広がっている竜巣の森。このまま行けば、あと数時間で森の入り口に着くのだが。
いつもなら、この辺りまで聞こえてくる、たくさんの魔獣たちの声を、今日は数回しか聞いていない。
冒険者ギルドの報告通り、森で異変が起きているのは間違いようだ。
「本当に静かね」
「いつもだったら俺たちが近づくと、誰かしら俺たちの方へ向かってきたんだが、今回はそれもなさそうだしな」
自分の力を示すために、俺たちが森へ近づくと、毎回必ずといって良いほど、俺たちに攻撃をしようと、誰かが向かってきたのだが。ルーシャンの言う通り、今回はそれもない。
「一体何が起きているのか」
「新たな存在が現れて、皆を押さえ込んでいるのか」
「他の問題が起きているのか」
「気を引き締めて調べた方が良さそうだな。もう少し近づいたら一旦止まり、装備を整えて森へ向かうぞ」
「それが良いわね」
「さて、何が待っているのか」
俺たちは再び進み始める。しかし……。
俺たちの不安とは裏腹に、このあと竜巣の森であんな驚きの体験をし、驚きの光景を見ることになるとは。そして、ある人物との出会いが待ち受けているとは、全く思いもしていなかった。




