凜々花
凜々花は家族と朝食をとっていた。
「いやあ、伯父さん様様だな」
兄がそう言いながらコーヒーをすすった。
凜々花が以前住んでいた街は異様でいびつな権力構造でできていた。
戦前からある旧家とやらが作った事業が経済の根幹となっていた。そのためその旧家の人間は街の中ではやりたい放題だった。
凜々花の祖母はあの街で生まれ育った。すでに老齢であり亡くなるまでは生まれた家で死にたいという希望を叶えることにしたが、亡くなったら墓じまいして別の街に引っ越そうと家族で話がついていた。
そんな中凜々花がその家の跡取り息子に目をつけられたのだ。
それからの毎日は悪夢のようだった。
本人のみならずその手下のような連中も入れ代わり立ち代わり脅しにかかってきた。そして金目当ての女たちは凜々花を目の敵にして毎日のように嫌がらせ。
心痛でもともとやせぎすだったにもかかわらずやせ細った。
そんな状態の娘を心配して引っ越しを速めようかという話になっていたがそれに待ったをかけたのが伯父だった。
「事情は言えない、だが、この日まで待て」
そう言ってカレンダーに印をつけた。
ずっと引っ越す相談や凜々花の事情などを説明しているのを聞いていて、そう言った。
とにかく、その日までは耐えるしかないと凜々花は覚悟を決めていた。
そんな時特にしつこいあの男がやってきたのだ。
あの時はイチかバチかだった。
愛の告白を聞いてどんな反応をするか。そしてあの男はどこまでも犬だった。
凜々花が自分のものだと誤解したあの男は凜々花にリボンをかけて差し出すことを考えた。
そして凜々花は自分を殺して大嫌いな奴の相手をしていた。
最後の最後に状況をあの大嫌いな奴に教えてやったのは全部わざとだ。聞いているのを確認してわざと話していた。
いや自分のことを嫌っている女にわざと裏アカの情報を流したのもわざとだ。
凜々花はSNSに自分の本当の情報を流したことは一度もない。すべて二人をだますためのフェイク。
そして、伯父に教わった日を決行日にしたのはその日で消えたとしても奴の目先はあの男に向かうだろうと考えたから。犬に歯向かわれるのは最も頭に来ることだろうし。
だけど、そこまでする必要はなかった。
翌日奴の家に税務署の監査が入った。伯父は税務署に勤める公務員だった。
まあ、結構な巨額脱税で目をつけられていたそうだ。それを後で聞いたがそれほど意外に思わなかった。もう奴に凜々花を追いかける手段はない。
ドウもあの家は破産したらしい。あるいはそれに近い状態か。
ふとテレビに目をやると。ある殺人事件のニュースをやっていた。




