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正雄 凜々花

 俺のスマホに凜々花からの通知が来た。

『お願いがある』

 その言葉とともに時間と公園の場所が。

「どういうことだろう」

 だって凜々花は幸せになったはずだ。あんな風にあの人と過ごして、これでやっと二人幸せになったはずだった。

 俺はずっと二人の幸せを願っていたのに。

電話がかかってきた。

出れば一言だけ言って切られた。

「愛してる」

 その一言だけ。どうしていまさらそんなことを言うんだろう。

 公園に行けば凜々花は一人で立ち尽くしていた。

「ねえ、私言ったよね。貴方が好きだって」

 囁くような声で凜々花は言った。

「私ずっと我慢してたの、貴方のためだって思って、大っ嫌いなあいつの相手をして、吐き気をこらえるのがどれだけつらかったか」

 とつとつとそう言う凜々花に俺の頭に血が上った。

「お前、まだそんなこと言ってんのかよ、俺のためだったらちゃんとあの人のこと好きになれよ」

 凜々花の目に涙がたまる

「好きになれって、そんなのできないよ、だって私が好きなのは貴方だし」

「だからどうしてそうなるんだよ、あの人の幸せが俺の幸せなんだ、俺の幸せを考えられないっていうのか、俺はあの人の幸せだけを考えている。お前にもそうなってほしいんだ」

 凜々花はぽろぽろと涙をこぼしながらそう言った。

「じゃあ、貴方が最初に私を、そうすれば我慢してあいつの相手をするわ、でもあいつが最初なんて絶体嫌、だって大嫌いなんだもの、あいつの物言いもあの人を馬鹿にした顔も何もかも本当に嫌い」

 凜々花はかんしゃくを起こしたように最後は泣き喚いた。

 だけど、このままではせっかくあの人のためにおぜん立てしたすべてがだめになってしまう。

「落ち着けよ、凜々花、俺はお前にも幸せになってほしいんだ。だからあの人と二人幸せになってほしくて」

 俺は凜々花の肩をつかんで何とか言い聞かせた。

「でも、それなら私、どうしても最初は貴方がいいの、だからお願い夢を見させて。ねえ、私にどうしてもそうしてほしかったら、どうしても最初はあいつなのは嫌なの」

 凜々花はそう言い張って聞かない。

「わかったよ、相手してやる、だからその後はちゃんとやってくれよ」

「もちろんよ、貴方のためだもの」

 凜々花が泣き笑いのような顔でそう言う。

「じゃあ、その時はお願いね」

 それでも何とか凜々花は笑ってその場を立ち去った。

 俺も家に戻ろうとしたときあの人の声がした。

「どういうことだ」

 聞き覚えのある声がした。



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