正雄 凜々花
衝撃の告白を聞いた後しばらく正雄は考えこんでいた。
「俺のことを好きって本当か」
凜々花はこくっと頷いた。
凜々花は不安そうに正雄を見上げた。
正雄は自分の脳みそをフルスピードで回転させた。
「じゃあ、俺のためなら何でもする?」
考えたことのために確認しなければならないことを確認してからおもむろに切り出した。
「じゃあ、俺のためにあの人の恋人になってよ」
凜々花は大きく目を見開く。
「え、何を言っているの」
「だからあの人の恋人になってって言ったの」
凜々花はそのまま後ずさる。
「何を言っているかわかっているの。私は貴方が好きだって言ったのよ」
「俺のことが好きなら俺の幸せを考えてくれるよね。俺が大切な人が幸せになるのが何よりの幸せなんだ。そのために協力してよ」
凜々花は小刻みに震えていた。そのまましばらくうつむいていた。
「私が協力したら、あなたは幸せ、私の気持ちにこたえてくれる?」
「俺はおまえにも幸せになってもらいたいと思ってるよ、大丈夫あの人はすごい人なんだ、あの人の傍にいればお前だって幸せになれる」
「そうなの?」
「だってお前、俺のこと好きなんだろう、だったら俺の大事なものを好きになれないはずないだろう」
そう言って正雄は凜々花の肩をつかむ。
「お前が俺のためにできるたった一つのことだ、あの人のところに言ってくれ、それが俺に幸せだ。そしてお前も幸せになれるたった一つのことだ」
正雄はそう断言した。
「本当にそう思っているのね」
「当たり前だろう、俺はあの人が誰よりも好きだし、俺のことを好きになれたなら絶対お前だったあの人の殺す気になれるよ、今まで好きになれなかったのはちょっと誤解があっただけだ」
信じ切ったその目を見て凜々花は深いため息をついた。
「わかったわ、やってみる」
「よかったよ、これでみんなハッピーエンドだ」
凜々花はうつむいたまま唇をかんでいた。そのことに正雄は気づく由もなかった。