三条悟 佐藤正雄
三条悟はすでに学校を卒業している。一応実家の会社に籍はある。
たまに会社に出て出された仕事をこなすがそれなりに遊びに行くだけだ。
最初は下っ端仕事だけだと言われている後に三年は面白い仕事は回ってこない。
つまらない、そして今日も凜々花はさそってものってこなかった。
凜々花は幼馴染のような存在だった。
子供のころは自分に対してもそうとげとげしい対応をしてこなかったのだが。思春期に入ってからは顔を合わせても表情が凍り付きろくに口も利かずにその場から立ち去ったり、何か言ったとしても目をそらして無視する。
何年も何年も凜々花を追いかけてきた。だけど一向に凜々花は自分を見ない。
凜々花以外の女はいくらでも寄ってきた。だがすぐに飽きた。
どうして凜々花がいい。
そして舌打ちした。
「あの、三条さん?」
不意に声をかけられた。
振り返ればいつもの顔だ。自分を慕ってくれる後輩の佐藤正雄。
自分のためなら何でもするそういう男だ。
頼りないと思っているが信頼はしていた。
「あの、耳寄りな話があるんですが」
正雄はそう言って一息ついた。
「俺、凜々花を説得することに成功しました、凜々花、三条さんとデートするそうです」
そう言ってにっこりと笑う。
「それは、どうやって」
正雄は大きくうなずいた。
「頑張ったんです。俺、三条さんのためなら何でもできます。
「本当か?」
にわかには信じられない話だったが思わず身を乗り出した。
「本当です、だから安心して幸せになってください」