正雄 凜々花
肩までの髪をポニーテールにして薄いピンクのジャケットを着た可愛い娘。
あの人が愛してやまない凜々花。
あの人は俺の親友であの素晴らしい人が俺を友人という立場においてくれたことを誰よりも感謝しているのは俺だ。
俺はあの人を崇拝していると言っても過言ではない。
ほかにも俺の仲間はいる。あの人を崇拝している仲間だ。だけど俺はその中で頭一つ抜けていると信じている。
だけどそんな素晴らしいあの人を凜々花は理解できないでいる。
何度も声をかけられても嫌そうに顔をしかめ手を触れようとしても振り払い。口汚く罵るだけだ。
何故あの人の素晴らしさがわからないのだろう。
だから俺は彼女、凜々花を説得しようと思った。
だから凜々花の行く先々に先回りして声をかけ続けた。
だが凜々花は悲しそうに首を振るだけだ。
「なんで答えてやらないんだよ」
凜々花はかたくなに嫌だという。あんなにも愛されているのに、どうして答えられないというんだ。女なんて男に愛されているだけで幸せだろう。
「どうしてあいつのためにそこまでするの?」
凜々花は少し釣り気味の目を見開いて俺にそう尋ねた。
「何言ってるんだよ、あの人の家はこの街を支えている立派な家で、そんな人に好かれたら儲かったも同然じゃないのか」
「どうして、わかってくれないの。私、貴方が好きなの」
「は……?」
唐突に言われた言葉に俺はただ凜々花の顔を見つめ続けるしかできなかった。
「ずっと、好きだった、でも貴方はあの三条悟にばっかりついていて、私のことなんて見てくれない、だからずっと悔しくて」
凜々花の目からぽろぽろと流れてくる。
「わかって、私貴方が好きだって、ねえ、佐藤正雄さん」
俺は凍り付いたように凜々花の顔を見ていた。