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剣聖

拾われて3日…ではなく、5日目。

ここ2日はパロン先生の魔法講座を受けていた。自身の体を器として魔力を水に見立てて、それを流す。器を満たせばあとは想像する。具体的に想像すれば魔力は火力を増し、大きさを増す。大きさを指定できなければそれは暴走となり、とんでもない威力になるか、霧散する…らしい。


飛ぶ云々の前に魔力を使えなければまず生きていけない。今の俺は料理も洗濯も掃除もできない一人暮らしと同じ。せめて、飛べるようになる為には風属性と火属性の習得を急がなければならない。普通、鳥モンスターはこんなことを考えずに父親や母親を見て自然と飛び方を覚えるらしい。人間が親を見て育つのと何ら変わらない。ただ俺の場合はそういうことを教える親も居なければ、経験もない。つまり、教材がない状態で覚えなければならない。攻略本でもあればなぁ。


ってなところで今日の修行はおしまい。結果は一進もせず。ただ数秒浮くようにはなった。浮くようになっただけ。空中で糸で宙吊りになってるみたいな感覚。シャンデリアってこんなんだろうなぁなんて思いながらもパロンネキに凄い目されてた。あとは推進力。要は今は水に浮かぶ船なのでそこからオールを付け足さなきゃいけないみたいだ。つまり翼の使い方をどっちみち考えなきゃいけない。…というところでリズによって回収される。毎日数時間のレッスンだが、なかなかに学びがあるものだ。


そして、本題。タンベルのフィードネット家を何者かが尋ねてきた。アルカナイド王国の使いの者で名をグレゴリー・ストンフィールド。頭を丸めた巨漢という印象で目には一閃切り傷が。彼は現アルカナイド兵団団長だということを会話から伺えた。

ゾータは彼を旧知の友として迎えていた。なんでも、師弟の仲らしくグレゴリーは見た目こそ強面だが、かなり真面目な様子。そんな彼が開口一番放ったのがこれだ。


「剣聖様のお力添えを願いたい。」


その言葉に好々爺の顔は一変。

歴戦の猛者となり、グレゴリーの顔を見た。

























「それで。どうかしたのか、グレゴリー。」


グレゴリーを客間に通し、話を伺う。胡座をかくゾータと正座のグレゴリー。そして、俺たちはその隅に居た。グレゴリーの顔は何も変わらないものの、声色はとても低い。


「はい。アルカナイド王国北方、レイズ山脈にて多数のワイバーンの目撃情報がございまして。冒険者や討伐士たちが数多く行方不明、または重症、または死亡で上がってます。王国はギルドを上げ、そのワイバーン討伐へと乗り込もうとし、我ら兵団が尖兵を送るも連絡を絶たれ…。恥ずかしながら南下していくと次に襲われるのはこの街を含めたこの一帯かと。そこでアルカナイド王の勅命により、ゾータ師匠(せんせい)の元へと足を運んだ次第でございます。」


グレゴリーの顔がとても険しい。

それほどの敵ということだ。それに比べてゾータの顔は涼やか…というかどこか貫禄がある。流石に剣聖と呼ばれるほどの…か。


「お爺ちゃん。ワイバーンってなぁに?」


「レイズ山脈に住む小型の竜型モンスターだよ。鳥モンスターの比にならないほどの速度で空中を飛び回り、口から炎を吐く。硬い鱗に体を包まれていて尻尾には槍のような部位を持っている。並の兵団なら一体倒すだけでも多数の犠牲者を払う。だからこそ、レイズ山脈を上るためにはかなりの準備が必要なんだが…。」


ふむ。話に聞く限りワイバーンってのはかなりの戦闘民族っぽいな。まぁ、ビッグネームではあるか。そもそも竜型モンスターの小型ってどのくらいなんだ?


『わかりにくいかもしれませんが、大体成体で40mほど。これで小型です。竜型モンスターは巨体と強さが取り柄のモンスターですので。上位のものになると街一つ優に超える怪物もいるくらいです。』


…何その怖い話。

俺もそのぐらいデカくなれるのかしら。いやデカくなってどうするんだって話だけど…。


「…ワシが帝王龍(カイザードラゴン)を討伐したのは随分前の話じゃ。この老耄にそうそうと出来ることは無かろう。」


「そ、そんな!?」


…また仰々しい名前が出てきたぞ。それにグレゴリーが初めて慌てた顔をしている。ゾータが強いのは知っていたけどドラゴン倒せるレベルだったのか…。


「だが、この村を落とされるならば話は別だ。よいか、グレゴリー。王国兵団をワシに貸してくれ。討伐に向かう。」


そう啖呵を切ったゾータの目は威厳に満ちていた。グレゴリーも胸を撫で下ろしてホッとしていた。





























しかし、討伐に向かうまでもなかったのである。

既に奴らはタンベルを目指し、南下していた。

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