ペット生活
拾われて1日目。
この家のことが大体わかってきた。ユロの話も入っているため、眉唾物ではあるが、信じる以外にやることはない。
先ず、この街はタンベルという農村らしい。街のように見えたが、村にしては大きな部類だったらしく、城下町はもっと広くもっとでかいとのこと。このタンベルが位置するのが、シーロンのアルカナイド地方と呼ばれており、アルカナイド王国の主な穀物輸出を賄っているのがこのタンベルらしい。そして、リズ・フィードネットの祖父…ゾータ・フィードネットはそのタンベルの村長兼剣道場の師範を行っているらしい。
そんなゾータが俺の鳥籠を作ってくれた。木の香りのするいい鳥籠だ。あの祖父は1人孫にすごく甘いらしい。わからなくはない。
そして、わかったことだが、フィードネット家はゾータとリズの2人しかいないらしい。リズが幼い時にリズの母は他界、リズの父は徴兵制度でアルカナイド城に向かい、先の戦争で死んでいったらしい。幼いながらに何度もとんでもない経験をしてきたんだなぁ…。あの爺さんが大事にする理由も伺える。
さてと、こちらはこちらで最初の問題。
…鳥なのに飛べない。
どういうことなんだろうね。
「お爺ちゃん、キンちゃん、なんで飛ばないんだろう…」
リズの心配そうな真っ青な目がうるうると訴えかけてくる。なんだか、病気だなんて思われてそう。
違うの。飛び方がわからないだけなの。
「ふむぅ…。キンちゃんはまだ幼い時に捨てられたからのぉ。飛び方がわからないうち…だったのやもしれんな。」
おじいちゃんの目は鋭い。
だが、この体躯で流石に飛ばないは…まずい。ユロに教えてもらったが、今の俺は少女の両掌に収まる程度。幼体の中でもかなり小さい…大体、元の世界のスズメよりも小さい程度らしい。そりゃ飛べなきゃ終わる。因みに飛び方を教えてくれと言った時の回答がこれだ。
『そのうちできますよ。』
…神様じゃなきゃぶちのめしてやるところだ。
さてと、ゾータが道場で鍛錬中。リズもその姿を見ている。そこが唯一、俺の自由時間。そこ以外はリズと一緒に遊んだり、ご飯食べたりなどである。リズは剣というものに非常に興味を示していた。なんてったって門下生の話では、祖父のゾータは剣聖とまで呼ばれた人間である。徴兵から帰ってきた老兵というだけで化け物なのだ。頭がおかしい。
さてと、この馬鹿でかい庭まで出てきて…やることは一つ。そりゃあもちろん。飛ぶ練習だ。
『おや、練習でもなさるのですか?』
誰かさんのせいでしなくちゃならなくなったんだよ。もっと簡潔に教えてくれたらこんなことにならなかったんだが。
『私は何にでも…または、何でもない。そんな生物の固有能力のお話などできません。大変申し訳ございません。』
…本当に申し訳なさそうに思ってるのが逆に腹が立つ。というか、羽というのも体躯に見合ってそれほど大きくない。無作法にバサバサと動かしてみる…。
………疲れるだけだ。てか思ったよりすげぇな。すぐに目の前が霞出す。生まれてから日が少ないんだっけか?何回だ。
…次はジャンプしたのちに羽バタバタ。
結論、ちっとも浮かない。無作法だ。
…よし、次は崖から飛び降りて…いや、鳥ミンチになっておしまいか。ユロもさっきからダンマリだし。ナビゲータはどうした、こら。
「…なにやってるの。」
あれ?リズの声…にしては少し大人びているような。パッと前を見れば、半分鳥半分馬の…確か名前はパロンか。がいた。馬小屋から抜けてきたのか?
「失礼なお子ちゃまね。私はご主人様からいつでも抜けられるように配慮されてるの。」
あっ、そう。…じゃあ、失礼ついでに一つ聞いていい?
「ん?」
…お前喋れたっけ?




