鳥籠に閉じ込められたいわけじゃない
…一言で言えば長閑な農村といったところだ。所謂、ファンタジーもののあの人々が跋扈する城下町…的なそういうのではない。言わば田舎町というところである。…当たり前か、俺のような鳥が即滅されず、生き残っている。また、あのような猪のモンスターが生きている…となれば、大きな草原や木々が鬱蒼と生えた森林が近くにあるのは…食べるものが豊富で開拓されていないこういうところなのは頷ける。
そこから音もせず神様と話せる馬車道。
それに見える景色も小麦原。というよりも小麦かどうかはわからないが、それに類似した何かを育てる畑が点在している。それでいて、俺を握り締めんがばかりに持つ少女…確か名前はリズと言ったか。その少女がお家と称するのは…かなり大きい。
お屋敷という言葉が近いか。
一般家庭という言葉が正しいかわからないが、その村の大地主と言ったところか。確かに落ち着いて見れば少女の身なりも老父の身なりも大層なものだ。ただし、金に身を効かせたそれではない。胡散臭いというものではなく、綺麗なものだ。
「ただいまぁ!!」
「はいはい。お帰り。」
リズの応答に老父が答える。中もとても綺麗だ。
…あの馬?…なにあれ、冷静に見れば馬の姿をした化け物じゃん。顔が鳥の形をしているし、翼も生えてる。
「パロン。行くぞ。」
老父はその生き物…パロンを連れて行く。これだけ大きなお屋敷だ。近くに馬小屋でもあるんだろう。だが、別れ際、真っ青な綺麗な目が俺を凝視していた。…明日、食われるかもね。怖いね。
「キンちゃん、お部屋に行こうね!」
リズは俺を抱き上げ、そのまま階段をかけて行く。艶やかな黒髪が揺らめいていた。今の状況にはそぐわないが…この世界にもシャンプーやらトリートメントやらあるんだろうか。
というか、大きくて広い階段だ。窓もあちらこちらと大きいな。今日は空は晴れ晴れとしていて、雲も少ないから陽光がよく入る。リズの部屋は…二階か。
そういえば、死ぬか生きるかだったから気にしてなかったが、なんでこの子達の言葉が理解できるんだ。それだけじゃない。なんで、目もしっかりと…。
『言語知覚、及び視覚情報はこちらで矯正させていただいております。』
うわ。出た。
…そういや、さっきの話、終わってねえぞ。全部繋がってるんだとしたら、アンタ…拾われるの前提であそこに俺を置いただろう。
『拾われるかどうかは存じ得ませんが、然るべき事態のためにその辺りは黙秘したく。』
きなくさぁ…。
アンタ、確かあの時、かなり偶然というか慌てたように俺のことを扱ったよなぁ?魂は人の器にどーのこーの。眠くてよく理解してないけど。
『…そこら辺の話はおいおい。今のアナタでは全てを伝えても何もできません。ただ一言説明するならば、拾われるまでの一連の動きは私の仕業なれば、ここからは私も知り得ないこと。なにが起きようが何もしようがありません。だからこそ、私も注力させていただきます。』
…なんかやらされることだけはわかりました。
「キンちゃん、ちょっと狭いけどここにいてね。」
神様と話している間、リズはずっと鳥籠代用の何かを探していた。それで見つけたのが止まり木もない、お菓子の空き缶…らしい。まぁ、鳥籠の中に入っていたいわけじゃないからいいかな。…まだ飛べないし。
「リズぅ。ご飯にしよう。」
「はぁい。…じゃ、また後でね。キンちゃん。」
そう言ってリズは階段を降りて行った。
…さてと、じゃあゆっくりお話ししようか、ユロさんや。




