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神様

…移動中に考えることは多い。

微かな少女の花のような優しい香りのカバンの中に包まれながらも、俺はどこの誰で一体なんなのか。存在そのものが現状、謎だ。周りの風景…老兵の様相、そして自分自身の仮説が正しければ、俺は『鳥型のモンスターの幼体』ということになる。実に奇怪だ。そもそも、モンスターってのは一体。

ゲームやお伽話の世界の話だ。微かに記憶の奥底にあるような…喉に張り付いた一本の毛のような感触の記憶の中にある『俺の元いた世界』とやらではただの偶像に過ぎない。一体これは…この世界はなんなのか。ふーむ。


『失礼しました。ご説明がまだでしたね。』


おっとまたこの声。…綺麗な…女の人の声だ。というか、こんな間近で声を出して、女の子や老父に気づかれないのか?


『ご心配なく。私の声はアナタにしか届きません。所謂、テレパシー…というものにございます。行き詰まった際、若しくは、気軽に声をかけてください。私がアナタをナビゲーションして差し上げます。』


それはいいんだけどさ。

なんでそこまでしてくれるの?てか、ここどこなの?いろいろ知りたいことがあって…パンクしそうだ。それに結局、アンタはなんなんだ?


『それはごもっともでございます。…一つ一つ丁寧に説明していきましょう。まず、私は『ユロ』。所謂、死者の魂の行末を決める神様とでも申しましょうか。』


神様だぁ?

…そんなこと信じられるわけが…と言いたいが、もうここにきて信じられないことばかりだ。神様なんて最も偶像から近しい場所にある存在。本物に会うなんておそらく過去の俺なら眉唾物だな。


『その反応はもっともでございます。ですが、私のことはお気になさらず。ナビゲータのようなものです。…先ず説明いたしますのは、アナタの使命について。アナタは不幸な事故で死んだ…こととなっておりますが、それは偶然などではございません。』


…死んだことが偶然ではない?

生憎だが、そもそも前世のことなど今はどうでもいい。所謂、転生だとして全く覚えて…。


『…まぁ、実際問題。過ぎたことを知る必要はございません。ですが、アナタは必ず知恵を必要とする。知りたいと考えるようになる。いつでもお答えいたします。』


…そうか。

で?なんで俺は今ここにいる。しかも、魔物の姿で。


『お答えいたしましょう。先ず、アナタの今の身体はただの鳥の魔物…というわけではございません。それは生きてみたらわかる話なのです。私からあまり公言できないのはお許しください。』


なぁんだ。

ナビゲータとか言ってあんまり教えてくれねえんだな。発売当初の攻略サイトみたいに。


『…恨んでおりますか?…私のことを。』


いいや。別に。

昔のことはあんまり覚えてないけれど、思い出すに値しないことだろうしな。昔のことよりも今は今のことだ。今の俺は…なんなんだ?


『…今のあなたの器は鳥モンスターの幼体。あなたは死に、その世界のその体に定着しました。しかし、生まれ落ちる場を間違えてしまった。故にこのようなゴタゴタに…。』


計算した…わけではなくて?


『そんなわけがございません。』


言い方に含みがあった。

…訂正だけがやたら早かった…ただ、全てがような気がしただけだ。アンタが違うと言えば…そこまでだが。


『思ってることは筒抜けでございますよ。…全てのことは意味がある。私も間違えるかもしれません。』


…そうかよ。


「ついたぁ!!」


健気な少女の声が響く。

てか、急に掴み上げられて…苦しい…。


「ここがお家だよ!キンちゃんっ!!」


…わかった、わかったから!!苦しいから!!離してくれぇ!!

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