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「生まれ変わったら?」


陳腐な質問だと思った。高校生に向かってその質問はとても簡単で…難解だ。先生はカタカタと黒板を書き記し、ただこう言った。


『生まれ変わったらなにになりたいか』

『理想の自分とは何か』


まさしく夢だ。


「巴くんは『鳥』?」


隣の席の…名前なんだっけ。兎に角、女の子が聞いてきた。田舎の街から編入したばっかでまだ全員の名前を知らない。教室の窓から見える都会の喧騒は…温度すら感じないビル群は息苦しいと思った。だからこそ、真っ青な青空をたった一羽で飛ぶ鳥が…はてしなく、自由に見えたんだ。





































その日、轢き逃げがあった。

急加速をしてきた高齢者ドライバーの乗る車が、男子高校生を跳ねて疾走した。ドライバーは完全に痴呆であり、免許返納を勧められていたが、その頑固さゆえに逃げてきたらしい。最後のドライブにとハンドルを握った瞬間、今までの記憶がまるでゲームのセーブデータを消すかのようにふっと…消えた。

そのままアクセルを踏み込んで…ズドン。人の顔も名前も覚えないからバチが当たったんだと思った。高校生の名前は…巴一城…俺だ。


































親の死に目にも会えなかったな…と我に帰る。

…どこだ。ここは。


見渡す限り、白白白。…いや、白いんじゃない。光ってる。なにもない。それがわかる場所。逆に…俺の体はわからない。比喩でもなんでもない。まるで黒子だ。正体不明の…ミスターX。真っ白な画用紙に子供が描いた何かわからない絵のように…。

待て。俺はなんだった?

親ってなんだ?…わからない。


ただひたすら無限に続く白い空間をひたすらに歩んでいくだけだ。…歩くという動作はわかる。だが、なにも感じない。


「ようこそ。桃源へ。」


…少し歩いた時だった。そんな言葉が頭に響いたのは。聞こえた…なんて生やさしいものじゃない。頭に直接、ごぉんっと響いた。頭の中で言葉が紡がれているかのように。


「おや、いけませんね。アナタは自身の存在を失いかけている。記憶の欠如と魂としての欠如。…これからの生き方になにかしらの影響を及ぼすかもしれません。」


そこでようやく気がついた。

頬に何者かが触れる感触。今までシャットアウトされてきた感触が蘇ってきた。でも、俺はなんだった?

そもそもなぜ俺は俺と言っているんだ?


「すみません。アナタの魂では人の器は余ってしまいます。そうなれば、簡単に霧散し、消えていってしまう。すみません。…本当に申し訳ない。手助けはさせていただきますので…今はあの身体に。」


そう言って取り出されたものが…俺を…吸い込んで!?


「…お行きなさい。人と魔のモノが共存する場所『シーロン』へ。」

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