2.落ちこぼれ令嬢の見る奇妙な夢
この話はこの物語に重要なものとなっています。
私は幼い頃からよく奇妙な夢を見ていた。
御伽噺に出てくるような城にいていつも夢を見る度に
その城は燃え上がっていた。そんな燃え上がる城の中に1人のお姫様がいた。お姫様は、燃え上がっている城から抜け出そうとしていた。抜け出そうとしている途中で所々にこと切れた魂が倒れていた。けれど炎によってこと切れた魂は永久に消えていった。炎の力は瞬く間に強くなっていて、煙を吸ってしまって肺が焼けるように痛くて息が苦しかった。
お姫様の身につけているものは全て、高価な物でおそらく上級貴族の人だと思う。しかし、こんな燃えている状態のため腕や足は火傷していて、ドレスも数カ所焦げていた。
また綺麗だった髪も酷く乱れていた。
それでもお姫様は気にせず必死に城から抜け出す道を探した。
気づけば、城から外に抜け出していて炎に包まれて今にでも崩壊しそうな城を呆然と眺めていた。おそらくお姫様が住んでいたお城。自身の家だったというのにこんな形で消えるとは想像もしていなかったと思う。お姫様は今にでも泣いてしまいそうだったけれど泣いている暇なんてなかった。
何かから追われているのかお姫様は木の後ろに立って息を殺していた。けれど隠れている時間は長く続かなくて、お姫様の前に現れたのは、屈強な兵士達だった。
兵士の1人が獲物を見つけたような目でお姫様を見ていた。
逃げようとしていても兵士なのだから、圧倒的に兵士の方が強く、お姫様は兵士に取り押さえられてしまった。
必死に抗っても、逃げることができずに兵士がこのまま刺して殺してしまおうといい、剣をとってお姫様の腹部に目掛けて突き刺した。剣が腹部を貫通し、剣から溢れんばかりの血がたれ流れてきた。
強引に剣が腹部から抜かれそのままお姫様は倒れ込んだ。
刺された腹部を手で抑えても溢れ出てくる血を眺める。
今逃げようとしてもこの状態では逃げることはできなくて
このまま死んでしまうのかと思っていた時。
「リリー!!」
兵士の後ろから誰かの声が聞こえ、見てみると
銀色の美しい髪に血のように赤い瞳を持つ男がいた。
「…!」
刺されたお姫様を見て酷く絶望した声でそう言って
剣を出す音が聞こえて
「…死ね」と恐ろしい言葉を使い殺気で溢れる目で兵士を見て切りかかった。次々と兵士達は切られてバタバタと倒れ死んでいった。
兵士全員を殺し剣を収めた後、男はすぐにお姫様の前に駆け寄り強く抱き締めた。お姫様は安堵していた。
男はお姫様の耳元で何かいいながらも涙を流していた。
お姫様は、最後の力を振り絞って男に触れて
『私のこと…忘れないで』
そう告げて
お姫様の意識は途絶えた。
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