6話 女の子。
KAWAIIは正義。そうだろ?
『どう?信じてくれた?』
トラスはそういうと、こちらを覗きこみながら微笑む。
肌は透き通るほど白く、雪のように美しい。
その瞳は髪と同じ薄いオレンジ色で、まるで宝石のようだ。
吸いこまれそうなほど滑らかな髪がなびく。
トラスは話の途中、うろうろしながらあっちこっちふらふらしてたため、改めてトラスと向き合う。
...改めて見ると、めちゃくちゃかわいいなこいつ。
しかし、かわいいのと信じるかは別問題。
「いや全く。そもそもお前の話した情報だけでお前を信じるわけないだろう」
『えぇ~!今のは信じる流れだったでしょ』
「あいにく少し人を信じるのが苦手でね」
『じゃあこれを見てもらうしかないね...本当は人が見るとろくなことにならないんだけど...』
「オイまて、そんな物騒なもんみたくn...」
パチンッ
俺がそういいおわるより前に、トラスが指を鳴らす。
次の瞬間。眼下には枯れ果て、荒廃した星が広がっていた。
さながら、月から見た地球のように。
ただし、この星は半分は赤黒く荒廃し、半分は青や緑に覆われた、いびつな見た目をしていた。
「んなっ!?」
『驚いた?これがこの星の真の姿。あなたが暮らしている左側の世界は、世界のほんの一部に過ぎない。そして、マナ枯渇は日に日に進行してる。人間の感覚なら長いと思うかもしれないけれど、あと500年もたたないうちにこの世界は形を失う。でも、このままでは私は見ているだけで何もできない...だから協力して。ね?』
俺は黙り込む。
できるなら力になりたい。
でも、こいつの言ってることは正しいのか?
半年以上ネットで培った無駄な疑り深さが邪魔をする。
俺がそうして下を向いたとき、
『お願い、世界を助けて!私を、助けてよ!』
泣きそうな声で、トラスが叫んだ。
その声で目が覚めた。
目の前で女の子が困っている。
助けを求めている。
それで理由は十分だ。
騙されてやろうじゃないか、このかわいい存在に。
KAWAIIは正義だ。
ならば俺は目の前の女の子を、トラスを信じてやる。
俺の異世界ライフは、トラスのために使おう。
そう決めた。
『たすけてよ...ばかぁ...』
「わかった。わかったよ。だから泣かないでくれ。」
『ほんと!?やったぁ!もう、どうやっても信じてくれないからどうしようかと思ったよ。』
マジかこいつ。今のは噓泣きか?
なんという早さの変わり身、俺でなきゃ見逃しちゃうね。
それでも、俺はこいつを信じると決めた。
少なくとも、あの叫びは嘘じゃない。
そんな気がした。
『それじゃあ改めて。私は白神トラス。かつては創造神の側近。今は囚われの身の女の子。神様だから敬うように!よろしくね』
トラスはそういって胸を張る。張るほどないが。
「あぁ。俺はバライムだ。よろしくな、トラス」
『ちょっと、敬意が感じられないんですケド?』
「ソンナコトナイデスヨ、トラスサマ。」
『むぅ...ほんとにえらい神様なんだからね?まぁいいや。戻ろうか』
パチンッ
そういうと、トラスは少し困ったような、嬉しいような顔をして指を鳴らす。
すると、先ほどまでの光景はなくなり、再びあの白黒の空間に戻ってきた。
童貞丸出しで死にたい。俺には妄想の女の子像しか書けないんだ...