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31話 龍の試練②

 

 ガイアとクルトが同時に動き出す。

 クルトが大槌を投げつける。


「なんだいまさら...?」


 ガイアは拍子抜けしたように、飛んできた大槌をパンチ一発で粉々に破壊する。


「!!!」


 大槌がガイアの視界を遮った刹那、クルトはその一瞬の隙でガイアの背後へと回り込む。

 そしてガイアが大槌を破壊した瞬間、クルトの正拳がガイアの背中を捕らえた。

 ガイアがわずかに体勢を崩す。

 クルトは好機とばかりに、ガイアに連撃を叩き込んだ。


 攻撃の余波で地面が抉れ、大地が振動する。

 大質量の岩塊が飛び交い、一帯が砂埃に包まれる。

 クルトの攻撃は、確実にガイアへとヒットしている。


 ......確かに当たってはいる。

 だが、その全てが浅い。

 ガイアは体勢を崩しながらも、クルトの攻撃をいなしている。

 急所は避け、決め手となる攻撃には当たらない。

 やがてクルトの攻撃が途絶えた。

 ガイアがその隙を見逃すはずもなく、やがて攻守が逆転する。


 ガイアの攻撃はその全てが巨岩のように重く鋭い。

 クルトはすぐにガイアの攻撃を防ぐことで手一杯になる。

 いつもならばこのまま押し切られて敗北だろう。

 だが、今日はタイマンじゃない。

 俺がいる。


 クルトが稼いだ時間は、俺がマナを練り上げるには十分な時間だった。

 体内のマナが煮えたぎるように熱を帯びる。

 少し制御をミスれば、身体が内側から爆発してしまいそうだ。


 過剰圧縮に耐え切れないマナがバチバチと弾け、俺の周りが青白く帯電する。

 やがて、幾度となく圧縮されたマナだけが体内を駆け巡り始める。

 今できる最高のマナ純度で、今できる最高火力の魔法を。

 一つずつ確実に、丁寧に魔法を構築する。


 やがて、ついにクルトが攻撃をさばききれず吹き飛ばされた。


 ここだ。

 ガイアとクルトが、一瞬だけ距離を開けたこの瞬間。


 光聖級魔法「ホーリーエンド」

 本来なら広範囲殲滅技のこの魔法に、指向性を持たせて無理やり威力を増幅させる。


「いっけえぇぇぇ!!!」


 そして、魔法が放たれる。

 極大のレーザーのような光魔法が、ガイアに迫る。

 ガイアは反応する間もなく、光の奔流に飲み込まれた。


 だが、これで終わりではない。

 ガイアが倒れるのをこの目で見届けるまでは、絶対に気を緩めてはいけない。

 それはこの半年、ガイアとの修行で耳にタコができるほど言われ続けた、ガイアの教えだ。


 魔法の発動が完了した瞬間、再びマナを練る。

 クルトも油断することなく大槌を構え直す。


 光の奔流が収まる。

 そこには、全身にやけどを負いながらも依然として立ち続けるガイアの姿があった。


「「!!」」


 俺とクルトは、すぐさま臨戦態勢に入る。

 大丈夫、想定済みだ。

 今度は二人での近接戦で...


 すぐさま身体強化を使い、手に魔法を纏わせる。

 そして、クルトと同時に不規則に、しかし完璧な連携で動き出す。

 決して油断はない。

 どころか、かつてないほどマナは研ぎ澄まされ、身体強化はさらに上の次元へと俺の身体を引っ張り上げる。

 クルトの動きも自分の動きも、微細なマナの流れさえ、全てが手に取るようにわかる。

 ガイアの動きを見ながら、ヒット&アウェイで隙を作り出す。

 大丈夫だ、作戦通りやればまだ手はある。


 その時だった。

 ガイアがおもむろに腕を伸ばした。

 それは今までのような洗練された戦いの動きとは違う、隙だらけの挙動。


 罠だ、今行ったら確実にやられる。

 しかし、ガイアがいま隙だらけの格好であることは事実だ。


 ...いく。これが罠だとしても、この機会を逃せば確実に懐に潜り込めることはもうない。


 一瞬の決断。

 クルトと目があった。

 彼女も、すでに突撃準備はできていた。


「ッらぁ!」


 クルトの大槌が迫り、俺の拳が雷電を纏いながらガイアに肉薄する。


 一瞬。

 ガイアがニヤリと笑った。


 あぁ、やはり罠だった。

 そう思ったときにはすでに遅かった。

 視界が回転する。

 どうやら吹き飛ばされたらしいことだけは、理解できた。


 視界が黒く塗りつぶされていく。

 もはや目を開けていることすら、苦しかった。

 あぁ、クルトは無事だろうか。

 トラスに泣かれるかもな......

 また死んじまったな......


 そんなことを思いながら、俺の意識は深い暗闇へと沈んでいった。



 ...



 ......



 .........



 ...............暖かい。


 ほのかな土の香りと、包み込むような暖かさを感じる。

 ゆっくりと目を開けると、涙目で俺をのぞき込むクルトの顔が飛び込んだ。


「クル...ト......?」


 ぼんやりとした頭が、だんだんと動き出す。

 クルトの顔と、視界の端にうつる空。

 後頭部の暖かく柔らかい感触。

 あぁ、そういえばトラスともこんなことがあったような......。


「......!?!?」

「バラ!無事でよかった!!」


 反射的に飛び起きる俺と、俺を抱きしめようとするクルト。

 二人の行動が奇跡的に噛み合い、互いの頭部が急速に接近する。


「「いっだ!!!」」


 その結果引き起こされる、不幸な事故。

 俺たちは顔をこれでもかというほどぶつけ、額に大きなたんこぶを作ることになったのだった。




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