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<小話>少女冒険譚①

クルト視点の小話です。

※削除する可能性、本編と設定が違う可能性あり。

※時系列が前後します。

 

 ある日の朝、私は初めて師匠の言いつけを破った。


 絶えず人が行き交う大通り。

 ひとごみにもまれながら、私はある建物へと向かっていた。


 きっかけは、両親が話してくれたおとぎ話。

 冒険者としてひっそりと暮らしていた勇者が、ある日神託を受けて悪鬼を打ち倒す。

 そんなありふれたおとぎ話が、私に冒険者へのあこがれを抱かせた。


 トラスや師匠も、私が小さい頃はいろいろなお話を教えてくれた。

 英雄の冒険譚、神々の生活、都市伝説やふふっと笑えるような失敗談まで様々だ。

 そのなかには、とてもおとぎ話と思えないような、妙にリアルな話もあった。

 師匠たちは悠久の時を生きた神々だ。

 実話も混じっているのだろうと、今では思っている。


 そうして、私の中の冒険者へのあこがれはどんどんと強くなっていった。


 ひとごみの中というのは、いったい何年ぶりだろうか。

 昔は両親とともに町に出れば町民が集まってきたが、その町や両親もすでにない。

 いや、よく考えれば昔もひとごみは馬車から眺めるだけの存在だった。

 ならばこれは、人生初のひとごみなのだ。


 高揚する気持ちを抑えながら、丘の上からも見えたこの近辺で最も大きな建物『ギルドホーム』へと向かっていた。


 ひとごみの中を歩くというのはなかなかに難しく、何度も肩がぶつかる。

 そのたびに「あ、ごめんなさい!」と振り返って謝るのだが、すでにぶつかった相手はひとごみの中に消えている。

 私は別に気にしないのでいいのだが、ぶつかったり痛くさせたら謝るようにって教わらなかったのだろうか?


 そんなことを考えながら歩いていると、すぐに目的地にたどり着いた。


 後半はぶつからないように歩くのにも慣れ、身体強化まで使って衝突を避けたからか、案外スムーズだ。


「ふぅ...よし、行くぞ!」


 入り口の前で一度気合を入れなおし、扉を勢いよく押し開...けなかった。

 引き戸だったようだ。


 なんとも情けない第一歩だ。

 しかし、中にいる連中はそもそも私のことなど気にもしていないようで、一瞥もくれることなく、おのおの好きなことをやっているようだった。


 手ごろな依頼を探すもの、昼間から飲んだくれるもの、仲間と談笑するもの、淡々と事務作業をこなすもの、ただ座ってぼーっとしているもの...


 私のあこがれたかっこいい冒険者像は姿かたちもなかったが、まぁこんなもんだろうと予想していたので大した落胆はない。


 冒険者たちを尻目に、そのまま受付窓口へとむかう。

 窓口に行くと、優しそうなお姉さんが対応してくれた。


「すみません、登録したいんですけど...」

「登録ですね。こちらに氏名と希望する職を書いてください」

「職って?」


 おとぎ話では”勇者”や”女神”など、様々な単語が出てきたが、そうじゃないだろうことは何となく想像がついた。


「前衛、中衛、後衛のどれかわかれば結構です」


 そういって紙とペンを渡された。

 年齢や保護者なんかについてとやかく言われないかと身構えていたのに、特にそういった確認はされないらしい。

 拍子抜けしそうなほど事務的だ。

 氏名はクルト、職は前衛で提出した。


「しばらくおまちください」


 そういって、お姉さんは奥へと去って行ってしまった。

 暇なので、軽く周囲を観察する。


 ギルドホームですることといえば依頼の受注か素材の買い取り、あとは食事くらいなもので、見ていて面白くなるような出来事は何もなかったが。


 そうしてしばらく待っていると、お姉さんが戻ってきた。


「こちらが登録証になります。依頼受注のやり方はわかりますか?」

「わからないです」

「では、ご説明しますね」


 依頼ボードに貼られている依頼を受付に申請。

 その後、登録証を水晶にかざして受注完了。

 受けられる依頼は自身のランクの2つ上まで。


「説明は以上になります。もしわからないことがあれば、お気軽にお尋ねください」

「ありがとうございます」


 師匠が座学で言っていたことと、何ら変わりはない。

 さっそく依頼を受けてみようと、依頼ボードの前に向かった。


 何日もかかる依頼はNGだ。

 ちゃんと帰らないと師匠にバレてしまう。

 師匠に怒られる分にはいいが、トラスを心配させるのは気が引けた。


 そうなると、受けられる依頼は限られる。

 何かいいものはないかと、ボードを睨みつける。


 行商人の護衛、収穫の手伝い、土砂崩れの撤去、街道周辺の魔物討伐、etc...


 どれもつまらなさそうな、地味な仕事ばかりだった。

 その中に、一際くすんだ色の依頼書を見つけた。


【No,12/下位魔狼ダークウルフの群れの討伐。Aランク】


 下位魔狼(ダークウルフ)とは、10匹前後の群れで行動する狼型の魔物だ。

 狡猾で力も強く、非常に厄介な魔物だ。

 以前修行で相手にしたことがあるが、なかなか手を焼かされた。


「これにしよう」


 受付にいき、依頼受注を申請する。


「ダメです」


 が、拒否されてしまった。

 やはりランクが低いと、楽しそうな依頼は受けられないらしい。


 思えば、勇者だって最初は土木作業ばかりのしがない冒険者だった。

 ならば自分も土木作業から始まるのは当然だろう。

 そう考えると、仕方がなく適当な土木作業の依頼を受けてその場を退散した。

 やはり楽しそうな依頼をやりたかったが...



 ーーーーー



 ひとごみをかき分け、作業現場に向かう。

 30分ほどほど進むとひとごみから抜け、街からも遠ざかる。

 町の外には、小さな街道が続いていた。

 さらに街道を進むと、今日の作業現場に到着した。


 目の前にあるのは、10mはあろうかという巨大な岩と、大量の土砂。

 これを少しずつ砕き、街道を復旧するというのが依頼内容だった。


 先に到着した冒険者たちが、支給されたハンマーや自分の武器などで岩を砕こうと悪戦苦闘している。


 ......弱いな。

 彼らは力の限り武器を振るっているようだが、削れているのは表面の風化してもろくなった部分に過ぎなかった。


 私ならおそらく一撃で粉砕できるだろう。

 とはいえ、私のような冒険者なりたてのちんちくりんが何を言ったところで馬鹿にされるだけだろうことは簡単に予想がつく。


 しかたなく、他の低ランク冒険者たちとともに土砂の撤去にいそしむことにした。


 私のような女の子が土木現場に来ることは珍しいのか、最初のうちは注目されたが、私が問題なく仕事しているところを見ると、皆自分の作業に集中し始めた。

 しばらく作業していると、昼休憩になったのか皆が木陰に集まり昼飯を食べ始める。


 やるなら今のうちだな。

 そう思い、大岩の周囲を確認する。

 誰かを巻き込んでしまったら大惨事だ。


 岩の周りに誰もいないことを確認すると、身体強化のレベルを引き上げる。

 スッと手を伸ばすと、桜の意匠を施した大槌が現れた。


 うん、最近は創造にも慣れてきて、大分上手くできるようになってきたな。


 修行の成果を確認しながら、両手に大槌を構える。

 スッと息を吸い、大岩めがけて大槌を振りぬく。


 大岩は粉々に粉砕され、あとには大量の土砂だけが残った。


 私が結果に満足して振り返ると、冒険者たちが唖然とした表情でこちらを注視していた。


 やってしまったかもしれない。

 そう思ったときにはすでに遅く、私は彼らに取り囲まれていた。


「あ...あのぅ......」


 やばい、怒られるかも。

 そう思ったのもつかの間、聞こえてきたのは怒号ではなく、割れんばかりの歓声だった。


「すげえええええ!」

「どうやったんだよ!?」

「嬢ちゃんすげえな!」


 皆が、興奮した様子で私に詰め寄ってくる。

 怒られたりするようなことはなく、賞賛と驚愕の言葉が次々と投げかけられる。

 あの襲撃以来、師匠たち意外と会話をしてこなかった私が、大人数と同時に話すなんて高等テクを持ち合わせているわけがない。


 怖い。

 見知らぬ男たちに囲まれるというのは、たとえ私のほうが彼らより強いと分かっていても本能的に恐怖を感じる。


 ―――結果、私はその場を逃げ出した。

 ...本気の身体強化を使って、ジャンプで。


 手ごろな大木を見つけ、枝に着地する。

 あぁ、きっと今頃は正体不明のバケモノ少女の話題で持ちきりだろう。

 目立つのはいいが、名も知らぬ男たちに囲まれるのはもうごめんだ。

 御伽噺の勇者は大勢に囲まれて幸せそうにしていたが、私にはあれは無理だな...


 勇者のようにはなれないことに落胆しながら、とぼとぼと家に帰る。

 この日は、午後の修行にもあまり身が入らなかった。







バイトが忙しすぎてまともに書けませんでした。

.........嘘です。ヘブバンというゲームにはまってしまい、すべてを投げ出して遊んでました。

がんばって本編も書きます


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