2話 異世界
やめて、見ないで。自意識過剰でもはずいもんははずい!
目が覚めると、赤みがかった金髪の美女が、俺をのぞきこんでいた。
……ここはどこだ?俺は助かったのか?
我に返り、周りを見渡そうとする。が、うまく動くことができない。
「あーぅあー」
ここはどこ?あなたは誰?
そう思って声を出したが、俺の口から出たのは弱弱しいうめき声だけだった。
「よかった...あなたの名前はバライムよ。」
そういいながら、女性は俺を持ち上げる。
そして、女性が発した言葉で理解した。
俺は、生まれ変わったらしい。
ーーー
一ヵ月が過ぎた。
俺は生まれ変わり、汐藤葵はバライムとなった。
そのことを受け入れるのにはかなり時間がかかった。
異世界転生なんて夢物語だと思っていた。
俺だって男の子だ。
そういう妄想をしたこともある。
さすがに、本当に転生することになるとは思わなかったけど...
ここ一ヵ月で分かったことをまとめてみる。
まず、最初に顔を見た女性が俺の母親であるということ。
次に、ここが日本ではないこと。
そして、俺の家族はめちゃくちゃ偉い人っぽいこと。
生のメイドさん軍団を見れる日が来るとは思わなかった。
...眼福です。
母親の年齢は二十代前半といったところだろうか。父親の顔はまだ見ていない。
そして、ここは日本ではないということも推測できた。
ろうそくで明かりをともす豪邸など、インフラ整備の進んだ日本ではありえないだろう。
さらに言うならば、ここはどうも地球でもないらしい。
メイドさんたちが、ぼそぼそつぶやいたと思ったら、何もないところから火を出すのだ。
最初はマジックかと思ったが、そんなもの誰も見ていないところでやるだろうか?
マジックではないとして、ほかに考えられるもの。
あれは、魔法ではないだろうか。
魔法といえば異世界転生なら定番中の定番だが、この目で実際に見ると感動する。
魔法、俺も使えるのだろうか。
ーーー
さらに一ヵ月後、ついに父親と会った。
母親よりも少し赤味が強い金髪で、彫が深く整った顔立ちだ。
「バライムー!会いたかったぞー!」
俺を見るなりそう叫んで、何回も高い高いをしてきた。
会いたかったことは伝わってくるが、とても怖かった。
「おかえりなさい、あなた。」
「帰りが遅くなってすまなかったな、レモニア。城での後処理に手間取ってな」
彼はそういって俺をベッドに寝かせると、母親に軽くキスをした。
「大丈夫なの?」
「ああ、もう大丈夫だ。あとはあちらで話そう。」
そういって、両親は奥の部屋へと戻っていった。
これが俺と父親の、最初の出会いだった。