表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/25

13話 哀愁

 

「失礼いたします。バラ様、起きておられますか?朝食が...」


 そういいながらヤウラが扉を開ける。

 まずい、早く(トラス)をどこかに…


「バラ様?」

「うん、おはようヤウラ...」


 間に合わなかったあああああ


「バラ様、後ろに何か隠していませんか?」

「い、いやなにも?」


 バレるのはやすぎ!?


『おいトラス、お前早く隠れろよ』

『そんなこと言ったって動いたらバレちゃうよ!』

『じゃあどうするのさ』

『えーーーーーっと』


 黙り込んでしまった。

 とりあえず(トラス)を隠すためシーツを手繰り寄せる。


「えーと、ヤウラ、これは違くって...」

「あぁ。バラ様、私は何も見ていませんし知りません。大丈夫です。皆小さい頃はやってしまうものですよ」

「へ?」


 すると、ヤウラが何か納得したように首を振った。

 しめた。

 どうやらヤウラは俺がおねしょを隠したがっていると誤解したようだ。


『おい、おいトラス、今のうちに…』


 俺がヤウラから気をそらした瞬間。


「うにゃ!?」


 (トラス)の鳴き声が聞こえた。

 見ると、ヤウラにがっちりと首根っこをつかまれて(トラス)がうなだれていた。


『私神なのに...神なのに...こんな...』

『その、なんだ。ドンマイ?』

『にゃはは...』


 首根っこをつかまれたトラスはなんというか、哀愁がすごかった。

 トラスの哀愁漂う姿を見ていると、ヤウラが俺に質問する。


「バラ様、この猫は?」


 困った。どうしたら丸く収まるだろうか...


「ええとヤウラ。その猫は昨日の夜に寒そうにしているところを見つけて、部屋に入れてあげたんだ。そしたら、なんか懐かれちゃって...」

「さようですか。それはよかったですね」


 お、好感触か?

 このままもう一押し...


「では、捨ててまいります」

「にゃ!?」

「ちょちょちょ待ってヤウラ!」

「バラ様、たとえ懐いていても、素性も知れぬ猫を屋敷に置いておくわけにはいきません」


『にゃはは...捨て猫...捨て猫の神...』


 トラスがどんどんやつれていく。

 ...正直ちょっとおもろい。

 じゃなくて、どうにかトラスを屋敷においてもらう方法を...


 あ、これなら...

 けどなあ...プライドが...

 いや、いい。やってやろう。


『トラス、ちょっとあっち向いて耳ふさいでくれる?』

『動けない...』

『じゃあ今からのこと忘れてね。思い出したらポイだから』

『わかったから、助けてほしい…』


 しゃーない、やってやりますか。

 スッー...


「やだやだやだ!この猫ちゃんは大丈夫だもん!猫ちゃんじゃなきゃ嫌だ!やだやだやだやだああああああああああ!」


 秘儀、駄々っ子作戦!

 4歳だから許される作戦!

 どうだ!俺のプライドをかけた作戦は!


「はぁ、仕方がありません。バラ様、奥様の許可が取れたら。ですからね。奥様がお許しにならなければ諦めてくださいね」

「やったあ!ありがとうヤウラ!」


 よし、ヤウラ攻略!

 駄々っ子(やだやだやだやだやだ)作戦は大成功だ。

 (トラス)に向かってサムズアップする。

『バライムぅ...』

『大丈夫だから、泣くなって』


 そして俺とヤウラ、首根っこをつかまれたまの(トラス)は母様が待つ朝食の席へと向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ