10話 転生チート?
光が収まると、そこには見慣れた庭が広がっていた。
どうやら無事に戻ったらしい。
「すごいわバラ!」
母様が満面の笑みで俺の手を握っている。
えっと、確か魔法を発動した直後に戻るんだったな。
母様が褒めてくれるということは、俺の人生初魔法は無事成功したようだ。
残念ながらトラスのせいでその実感は全くないが...
「ありがとう母様」
「まさか一回目で成功するなんて。トグリ、すぐに魔法の先生を探してちょうだい。この子は絶対魔法の才能があるわ!」
「かしこまりました。事務のものに伝えてまいります」
「ええ、お願い」
「では、失礼いたします」
母様は興奮気味にトグリに指示を出す。
ちょいちょいちょい、母様や。
初級を使えたからってそれは親ばかすぎると思うぜ。
「ええと。母様、ただの初級魔法だよね?先生だとかは少し大げさなんじゃないかな...僕はまだ4歳だし...」
「いいえ、バラ。本当にすごいことなのよ」
そんなに褒められるとむず痒い。
助けを求めるようにヤウラのほうに目線を向ける。
「バラ様、先ほどお教えしたことは忘れてしまいましたか?」
さっき教わったこと...?
まずい、トラスとの会話が衝撃的過ぎて勉強したことが頭からふっとんだ。
ーー「魔法は誰でも使えるというわけではありません。庶民の中では魔法が使えるのはごく少数。庶民より格段に魔法適正が高い貴族の方々でも、10歳ごろになってようやく初級魔法を使えるようになる方が多いです」ーー
「あ。」
思い出した。
初級魔法を成功させる平均は10歳前後。
俺は今4歳で、初めてで初級魔法成功。
母様が興奮する理由にも納得がいく。
そうか、俺は魔法系異世界チートだったのか。
あふれ出る才能が恐ろしいぜ。
将来は大将軍として英雄になっちゃったり?
あるいは歴代最強の冒険者とか、魔法史を大きく進めた魔法の父とか...
魔王を打倒した伝説の勇者とかもいいな。
魔王がいるのかは知らんが。
なんて妄想をはかどらせていると、トグリが戻ってきた。
「奥様、ただいま戻りました」
「お疲れ様。先生は見つかりそうかしら?」
「そのことで、少々奥様にご相談したいことが」
「あら、それはここではできないお話かしら」
「申し訳ありません」
「そう、わかったわ。バラ、残念だけど私は席を外すわ。初魔法成功、本当におめでとう」
「うん。今日はありがとう母様」
そう言い残して、母様とトグリは戻っていった。
「それじゃあ、僕たちも戻ろうか」
「かしこまりました」
ようやく部屋に戻ってこれた。
現実では1時間ちょっとしか経っていないが、体感ではずいぶんと長いこと外にいたように感じる。
神階の時間の流れはどうなっているのだろう。
扉が完全にしまったことを確認して、ベッドにダイブする。
どっと疲れた。
そういや、トラスのやつ後で合流するって...
どうするつもりなのだろう。
あいつは軟禁されていたはずだが...
俺はトラスとの会話を思い出しながら、襲い来る睡魔に身をゆだねた。