現状
メニューを選び終えシャッキンさんが口を開く。
「さて何からお話ししましょうか?」
話す事柄が多いのか考え込んでしまう。
「あの、言い出しにくかったんで言いますけど、ログアウトしていいっすか?」
「出来るならして下さっても結構ですよ」
(?・・・・・・)
無言で指を上から下に振り下ろすとメニューボードが・・・・出ない。
「あれ?メニューボードが出ない」
「出るわけないでしょう、現実世界にメニューボードなんて無いでしょう?」
「・・・・・・・・」
「先程も言いましたが、今、あなたが居る場所は地球では有りません。
異世界、別宇宙、色々呼び方がありますが我々が住んでいる世界とは別の世界です。
多元宇宙論【マルチバース】とかあなた方は呼ぶみたいですね。
ここは、創造主パルネリアが作りし宇宙、ガルガレア銀河団、クィート銀河、ラッカ星系第5惑星ベェールに有るアリアドネ魔王国です」
「・・・・・・・・」
「俄に信じられないかも知れませんが、今からお話しする事は現在あなたに起きている事なので心して聞いてください」
「は・・・・・はい」
返事をするのが精一杯だ。
「まず、あなたの現状としてラストフロンティアをプレイ中にインド洋上空で事故に遭遇しました。
これは事故なのか襲撃なのかは捜査中です。
船は敵に包囲された上に艦内にも侵入されましたので艦長は緊急脱出を選択します。
本来なら脱出する際には『ゲート』と呼ばれる物を使用するのですが、今回はゲートとを作成できる者が傍がいませんでしたので、重要人物だけ逃がそうとしたみたいですね。
絶望的だったのですがゲートを作成出来る者機転を利かせ外部から救出します」
「スイマセン、質問いいですか?、ゲートってなんすか?」
「ゲートとは異世界と呼ばれる別宇宙を繋ぐ技術の総称です。
扉を使用するのでゲートと呼ばれます。
この技術は、利用次第ではこの広大な宇宙をとても狭い物にしてしまった技術です。
原理はとても簡単です。
A地点から異世界に繋ぎ、異世界からB地点に繋ぐと何万光年、何十万光年掛かる距離を5秒で移動出来る技術なのです」
「え?マジ?」
「そして今回の脱出はゲートを一度アリアドネに繋ぎアリアドネから我々の宇宙に繋ぎ救出するつもりだったのですが、ここでも有り得ない事故が起きてしまいます。
竜巻さんが鎖の魔法で要救助者を確保、救出しようと」
「ちょ、ちょっと待って、なんか有り得ないワードが出て来たよ?魔法?」
「あぁ、そう言えば地球人には魔法とか超能力とかは否定されている物でしたね。
まぁ、宇宙世界一般的にもそうなのですが。
それは追々お話しします」
「あ、はい」
「話しを戻しますと、この救出の際に魔法の鎖で3人を確保。
鎖をたぐり寄せたのですがゲートから出てきたのは2名しかいませんでした。
1人を何処かで落としたのです。
原因は解りません。
ですが、落とした場所はすぐに分かりました。
ゲートで繋いだ、ここアリアドネの中継地点です」
グジュルと音がすると竜巻に似た服装の女性達が料理を持って入ってきた。
竜巻が歓喜の声を上げる。
「摘まみながら聞いて下さい」
俺の目の前に運ばれてきたのは大皿に魚のから揚げっぽいのが5匹と調味料らしき5皿だ。
荻田さんもシャッキンさんも料理を口に運ぶ。
「さて、ここまでで質問はありますか?」
「えーと、色々有るんですが、まず、ラストフロンティアと言うゲームは電子世界では無く現実に行われている事って認識で良いですか?」
「はい」
「じゃあ、やっぱりゲームだ。
俺が女になってる理由がまずつかないっすよね?
女のアバターに移ってしまったバグですよね?これ?」
軽く否定してみる。
「確かにそう思われるのが普通だと思いますが、我々にとっても今回の事態は予想外なのですよ。
先程、ゲートが異世界に繋ぐと言いましたが、ゲートを潜る際にある一定の条件があります。
まず、魂だけではゲートを潜れません。
魂が物に憑依した状態でも同じです。
我々はこれを世界の壁と呼んでいます」
「え?なに?魂?また変なワードが出て来ましたよ?」
「シャッキン、ラストフロンティアの構造も説明せんとあかんで」
荻田さんに助け船を出された。
「あぁ、そこからですね。
ラストフロンティアと言うゲームはプレイヤーの魂をアバターに憑依させて、プレイするゲームなのですよ」
「ハイ?」
「我々は長い時間を掛けて魂とか、霊体とかを科学的に解明している種族なのですよ。
まぁ、それは置いといて、今回の花の道さんの異世界移動は前例の無い事象なのですよ。
花の道さんがゲートを潜る際にはブラックボックスに憑依してましたが、先程も説明しましたが物に憑依状態では世界の壁を潜れません。
ですが潜れました。
百歩譲ってもブラックボックスに憑依状態で潜れたとしても、ブラックボックスと肉体に同時に憑依している。
前例の無い事象なのです」
「・・・・・・・」
「ブラックボックスは憑依し易い様にしてますが肉の体には憑依はかなり難しいはずです。
訓練を為ていないと肉体に宿っている元の魂に弾かれるはずなのですが。
なぜこんな事になってるのか正直よく分かりません。」
「えーと、・・・・・・・マジ?マジで現実?」
「はい、現実です」
全身の力が抜ける、考えようとするが頭の中がぐるぐると回り考えが纏まらない。
「シヤッキン、花の道が限界だわ、明日にせぇへんか?」
「そうですね、明日にしましょうか」
「シヤッキン、空いてる部屋とか有るか?」
「有りますね、竜巻さん案内お願い出来ますか?」
「了解~」
竜巻に手を引かれ部屋を後にする。
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体がふわふわする
(あ、これは夢だ)
昨日、説明してくれた部屋。
目の前にシャッキンさんが居る。
シャッキンさんがタブレットを差し出してきた。
(ゲームで所属勢力決めるときに出てきたタブレットに似ている)
「・・・・・・・・・戸籍放棄宣誓書及び奴隷誓約書です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はい?」
よく聞き取れない。
「意味が分からないかと思いますが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「花の道さん、・・・・・・・・・サインす・・・・・・・・・はな・・・・・・よ、・・・・・・・・・奴隷・・・・・・・・・・・・とかであ・・・・・・人生・・・・・・・終わり・・・・・・よ」
(え?奴隷?なにそれ?)
「花の道さん、聞こえますか?」
頭の中の後ろから声がする。
(あれ?視角が変ださっきと違う)
「花の道さん、起きて下さい」
(え?俺座ってたよね?立つの?)
「新しい体はどんな感じですか?」
《「すこぶる良好っす」》
(あれ?頭の中から機械の声がする)
《「凄いっすね、こんなにも違うもんなんすね」》
(なにが?)
「そうでしょう、フェルガナ製の最新擬体ですからね」
《「昨日まで俺が使ってたのがグーレイ製でしたっけ?」》
「よく覚えていますね、と言うか聞こえていたんですか?」
《「ブラックボックスからでも聞こえてましたよ」》
「これは聞いたことの無い事象やな」
(荻田さんも居るのか)
「お手柄ですね、竜巻さん」
「でしょ~、朝ここに来たら~ブラックボックスに花の道の魂が視えてるんだもんね~」
「肉の体から機械の体に移った訳では無いのですよね?」
《「あちらとまだ繋がってます」》
(繋がってる?)
「フェダだっけ~魂と魂の繋がりの糸~、ちゃんとこの花の道から出てるからから~」
「これも新しい事象か?」
(え?なんの?)
「そうですね、報告例が無いわけではないですが少ないですね、2つ体に魂は1つ、同時に動かせる訳では無いです。
それに報告例はもっと短時間ですね」
「まだ、あっちの花の道さんは寝てるんですよね?」
「起きたかも、ちまちまテレパシーが聞こえるわ」
《「あ、俺まだ繋がってますよ」》
《(おーきーろー)》
頭の中で大音量の声が響く。
一瞬で目が醒める。
(五月蠅い)
《(昨日の食堂来ぃーや、みんな集まってんで)》
(・・・・・・・・・)
「あ、僕迎えに行くね~道分からないだろうから~」
《(いや、竜巻が迎えに行ったわ)》
(・・・・・・・・・)
思考が働かない。
いや、働かせたくない。
現実と言っていたが認めたくない。
色々と考えてしまう。
元の体はどうなったのか?
これからどうなるのか?
どうすべきなのか?
何も分からない。
考えることを諦め、うわ布団を除けベットに腰掛ける。
違和感を覚える。
(あれ、服は?)
服を脱いで寝る習慣なんて無い。
ベットの前にあった姿見鏡を見ると両胸に覚えの無い物が付いてた。
アクセサリー?赤い石が付いているピアスだ。
他に両耳にも股間にも付いていた。
(昨日は無かったよな?)
グジュルと音がすると壁が開き、その先に竜巻が入ってきた。
「おはよ~よく眠れた~?あ、アクセサリーも綺麗じゃ~ん」
「え?昨日こんなの付けてた?」
「いや~、花の道が寝た後、僕が付けたよ~」
「は?なんで?」
「安全処置かな~花の道が怪しい動きすると~一気に加熱して一瞬で体が蒸発するからね~」
「は?危なっ、なんでそんなもの・・・・・・」
「お前さーその体、グーレイ製だろ?
危ないって自覚ある?
時限式の生体爆弾だったとしても何も驚かねーよ」
いきなり声のトーンを落とし口調すら変えて話し出した。
コッチが本当の竜巻なのかも知れない。
「他種族なんて虫けら、いや、部屋に積もる埃ぐらいにしか思ってない連中だ。
目的達成の為なら何億もの知的生命体を殺しても眉1つ動かさねー。
そんな種族が作った物なんてなんで信じられるんだ?」
「い、いや、あ、あの」
「大丈夫よ~怪しき動きさえしなければ起動しないから~」
笑顔を浮かべ何時もの口調に戻る。
「さ、皆待ってるよ、さっさと服着て~外で待ってるからさ~」
得も言われぬ不気味さが心を占めるが今の俺はどうしようも無い。
廊下に出ると竜巻が立って待っていた。
「お待たせ」
恐る恐る声を掛けてみる。
「遅い~皆待ってるから行くよ~」
手を引き歩きだそうとする。
「いや、竜巻、ちょっと待って」
「な~に?」
「股間のアクセサリーがショーツに触れて何とも言えない感じになるんだが」
オブラートに包んで抗議してみる。
「気持ち良いならいいじゃん」
そう言うと俺の手を引き歩きだした。
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こんな拙い物を読んで頂きありがとうございます。
遅筆なので申し訳御座いません。
4/18大幅加筆変更しました。