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証明

反射的に体を動かすと壁にぶち当たった。

両手で壁を確かめる。

ヒンヤリと金属特有の冷たさがある。

どうやったか分からないが閉じ込められた。


《世界が闇にまた包まれた。

と思ったが、うん、意識は飛んで無い、自信ある。

けど、手足の感覚が無い。

地味に恐怖沸いてくる》


声を出そうとするが上手く声が出ない。


《周りは酷く暗い、数メートル先しか見えない、天井はおろか壁一面の扉すら見えない。

聴覚もおかしい、水中から外の音を聞いてるみたいだ》



体躯座りをして足に顔を埋める。

視界がおかしい足に顔を埋めたのに頭の後ろにもう一つ視界がある。

そちらから地味に湧いてきた恐怖が伝播する。


《ふと、視界が高くなる。

手のひらに乗っている。

竜巻であろう女性が拾いあげたようだ》


「そんな不安そうな色を出すな~、心配しなくても大丈夫だから~」


「・・・・」「・・・・」


恐怖が体を支配する身動き一つすら怖い。


《声を出そうとしたが声は出なかった。

考えれば触覚もない、ゲーム内での感覚を越えている気がする》


恐怖と言う感情が首を擡げ体を支配する感じがする。


「無理に他の器官を作ろうとしなくていいよ~無理に作っちゃうとさ~元の体に戻れなくなるかもしれないからさ~」

竜巻の声が頭の後ろから聞こえるし遠くから話しかけられている気がする。


「花の道さん、アバターの活動が停止しました。

ですのでAIではない事が証明されました。

では、その説明を私し商店街フェルガナ国、技術技師官『オマ・エノ・シャッキン・フミータ・オース』がさせて頂きます。


まず、あなたのアバター視て下さい。崩壊が始まり出しました」


《いつの間にか目の前にいた蟹さんなのか蜘蛛さんなのか分からないが凶暴そうな口を動かし説明しだした》


《アバターを見るとゆっくりと光の粒子になり霧散しだした。

ゲームでダメージを食らって死んだ時のエフェクトに似ている、いや、同じか》


《彼女の思考が流れてくる》


アバターの崩壊により暗闇に光が入り出したが顔を埋めているため気づかない。


《この後、死んだ場所に機械生命体ならブラックボックスと呼ばれる正方形の黒い箱が、有機生命体ならコアクリスタルと呼ばれる虹色の正方形のクリスタルが残るのだが》


パリパリと音を立ててアバターが光の粒子に変わっていく。


「このエフェクトみたいなのはオーハーコンと言う合金が一定の条件下で崩壊する場合の自然現象です。

それをゲームの死亡エフェクトに利用するとは上手いですね。


しかも、最新技術である、電気信号でオーハーコン合金を自由に変形させ複雑な機械をも作り出せる技術を船やアバターに使うとはゲーム制作者は慧眼きの持ち主ですね。


オーハーコン合金は地球上には馴染みが無い金属ですので、さぞかし神秘的に写ったでしょうね。

一般的には比較的扱いやすい金属の上とても安価ですが、しかし、なぜか地球上にはオーハーコンを合金するのに必須金属のデイダと言う金属がありません、結構何処にでもあるんですがね・・・」


「シヤッキン、シヤッキン、それ長くなるか?」

《話しが長くなりそうなので荻田さんが言葉を遮る》


「すいません、話が脱線しました。

つまりですね、ニュープライズ現象を解除してオーハーコン合金のアバターが崩壊すると言う事は先程までブラックボックスが彼方の魂を認識していた、と言うことになります。

ブラックボックスには魂が抜けるとアバターとの接続を切るプログラムしていますので、AIプログラムでは無いと断言できます」


「ブラックボックスも弄られている可能性はないか?」


「ブラックボックスは我がフェルガナ製を使用していますのでグーレイ如きの技術レベルでどうのこうのは出来ません、断言できます。

ただ、この世界にアバターと一緒に来られませんし、フェダが途切れてるはずなのに活動出来ていた理由が分かりませんが」


《は???ん???フェルガナ??フェダ??この世界???》


「シヤッキンさん~、コイツ分かってないわ~、もっと最初から話さないと~」


「あぁ失礼しました。そうですね、彼は何も知らないプレイヤーなのですから分かりませんよね」


「その前に~荻田さんコイツ、ブラックボックスに戻してあげて~魂の崩壊が始まったから~」

そう言いながら俺をブラックボックスの上に置いた。


《(え?魂の崩壊?ねぇ?なに言ってんの?ほんとにこれゲームだよね?ねぇー?)》


「おう、音声コマンド、同権限者、秘匿項目1条19項、ニュープライズ即時実行」


《ストンと落ちる感覚といつものログインする感覚が同時に襲ってきた。

「デバイス情報・・・確認」

「ログイン申請・・・受理」

「アカウント情報・・・確認」

「プログラム情報・・・正常」

聞き飽きた電子音声が流れてくる。

「プログラムログに不正回覧の痕跡を発見しました。改竄された可能性があります、強制停止及び強制ログアウトを実行。強制停止、実行完了。強制ログアウト、72%完了、エラーが発生したため完了出来ません」》


《聞き慣れない電子音声を引き金にまたブラックボックスから放り出された》



風が流れる感覚がする、顔を上げ無意識に目の前の黒い箱を掴んで走り出す。


「!?」「!!」「あかん!コイツ意思があるわ!」

荻田さんが声を張り上げる。


《中学生くらいの裸の女の子が俺を放り出したブラックボックス持って走り出した。

彼女の恐怖が流れ込れこみ、見てる景色が頭の後ろから見える》


(くそっ!、嵌められた、罠や!、パカリの保護も花の道の機体もグーレイが仕込んだ罠や!)


《口を動かしていないのに大声の荻田さんの声が聞こえる。いや、頭の中に荻田さんの声が飛び込んで来る感覚、やたらと鮮明だ》


「シャッキン、動きを押さえる、ふん縛れ!」


《荻田さんがヒレを横に振ると女の子の頭が何かにぶつかったかのように衝撃が伝わってきた。

今度はヒレを振り下ろすと胸からの痛みが伝わって来る》



走っていると頭に衝撃が走り、仰向けに転がった。

そこに見えない何かが胸を押さえられた。

手足をバタつかせ藻掻くが微動だにしない。


「ふぅ、焦ったわーまさかグーレイがこんな手の込んだ事するとは思いもよらんかったわ」


「どういう事~?」


「スパイや、さっきインド上空でパカリ保護したやん、あいつグーレイから逃げてきたらしいわ」


「あ~、あの海老みたいなのパカリなんだ~」


「なんや、知らんかったかいな」


「だって~パカリって~、水生種族だから陸上で見たこと無いんだよね~」


《(頭の後ろから見える風景が段々と赤くなってくる、赤くなればなるほど伝わってくる感情が小さくなる)》


「荻田さん」


「パカリかて、仲間なんやさかい覚えときや」


「荻田さん!」


「なんや!シャッキンうるさいで!」


「彼女ヤバくないですか?」


《自分の目で見ると彼女は明らかに人間じゃ無くなってた。

さっき船を襲撃してきた奴等に似ている気がする》


「ほぅ、なんかええ感じになってきたやん」


「これなに~?」


「リヴィアサンや、正確にはリヴィアサンの遺伝子を移植された試験体らしいわ」


「リヴィアサンって宇宙害獣の~?」


「そや、保護したパカリが言ってたわ。

シャッキン鎮静剤投与」


「了解」


首に針で刺された痛みがすると急速に視界が暗転する。


「投与完了です。

グーレイからの刺客ですか、研究のしがいが有りそうですね」


「そやな、グーレイのあんぽんたんにひと泡吹かせられるネタやな」


シャッキンと呼ばれた蜘蛛蟹さんと荻田さんが悪い顔をしている気がする、人間からかけ離れ過ぎて分からない。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


「で、お前何者やねん?」


荻田さんが手なのかヒレなのか分からない手でコップを渡してきた、中身はコーンポタージュみたいだ、トウモロコシの良い匂いがする。


「何者って言われましても、桜井花の道です」


見慣れない幼く綺麗な少女の手でコップを受け取る。

コップに口と付ける、一口飲んでみる、トウモロコシの味が良い結構上等な物っぽい。


先ほど俺は暗闇から目が醒めたときあり得ない感覚に改めてパニックになった。

一つは人間のごく自然な見え方。

心配そうに上から俺をのぞき込んでる褐色肌の女性と鰻頭が見えた。


もう一つは後頭部に目があるかのような感覚で視えてる、こっちには奇声を上げながら手足をバタつかせている少女と取り囲むように褐色肌の女性と2匹の生物が見えた。


「なんで逃げ出したんや?」


荻田さんが言い終わると、また、見えない力に動けないように軽く全身を押さえ付けられている感覚がある。


「パニくりました、なんか無意識に走り出した感じです」


落ちつくまでの間に荻田さんは、竜巻であろう女性に俺が着る服の用意、蟹蜘蛛さんのシヤッキンに新たなブラックボックスを持ってくるように指示してた。


「逃げ出さんかったら手荒な事せんでも良かったんやけどな。」


「だから無意識ですって、しかも、なんかのバグ続いてますし、ブラックボックスからの視線が同時に接続状態になってますよ」


「ブラックボックスと同時に視線があるんかいな?」


「ウィッ、これって運営に連絡したら治るんですかね?」


「運営って・・・・・まぁええわ、シヤッキン来たら解るやろ。

もうすぐ竜巻が服持ってくるさかいちょっと待ってや。

けど、他人とこの文化、馬鹿にする訳やないけど、あれは痴女に見えるわ」


クックックッと笑いながら話す。


「たしかに露出が少し多いですね」


いつもの男の低い声では無く、女性の声に戸惑ってしまう。


「他人事みたいに言ってるけど竜巻が持ってくる服ってあんなんやぞ」


「男なんであんな服装でも大丈夫っす。ブラはしくてもいいかな?痒くなりそう」


「一応中身は男でも体は女性やで、そこら辺は考慮してくれや」


「了解っす、でも、ゲーム初期には居ましたよね」


「あぁゲーム開始直後によくいた奴な、直ぐに意味の無い規制が入ったが。

あれはほんまに凡ミスや、ゲーム作成時に服を日常的に着る文化が無い者が作るとあんな風になるんやな。

唯一服を着る文化の有るルーシーは胸は隠すもんやなく見せつけるもんらしいからな」


(うん?今の常識でそんなことあるか?・・・・・ラストフロンティアって作ったのはどこの国?)


世界の何所でも胸を見せつける文化なんて殆ど無い。


「竜巻が来たわ、どんな服か楽しみやわ」

クックックッとまた笑い出した。


カチャリと扉が開くと竜巻であろう女性が入ってきた。


「花の道~お待たせ~こんなのしか無かったわ~」


そう言いながら短いベルトと長い革のベルトに黒い布が打ち付けている服を広げて見せてきた。

短いベルトを首に巻き、長いベルトを胸の下に巻く。


(なんかベルトに妖しい文字が彫ってあるんだが凄い禍々しい感じがする)


「下着は後で買いに行こう~人の使った後のはいやでしょ~」


ズボンの代わりに大きめの黒いスカーフを巻き。


「なんや案外普通やな、面白無ないな」

荻田さんが明らかに残念がる。


「荻田さん~何の話し~」


「いやいや、竜巻があまりにも露出の多い服を着とるさかいな、花の道に持ってくる服も露出の多い服持ってくると思っとんたんやけどな」


「うっわ~酷いわ~僕を露出狂か痴女かなんかと思ってたわけ~。これ僕達オーグの民族衣装なんだからね~」


なんか2人のいつもの漫才を観てると安心する。

けど、竜巻って女性アバター持ってたって事は別アカウントか?


「さーて、三文芝居にも飽きたしメシでも食いに行こうや、花の道にも状況説明せなあかんしな」


荻田さんが漫才を打ち切り竜巻が入ってきた扉に歩き出す。


「僕もお腹すいた~ほら、花の道行くよ~」


竜巻が俺のブラックボックスを拾いもう片方の手でひかれて歩き出す。


ドーム型の部屋を出ると一風変わって木目調の部屋に出た。

床も壁も天井も全て木目調、しかも四角い部屋なのに継ぎ目が見え無い。


ラストフロンティア内ではこんな場所、見たことが無い、隠しステージだろうか?


後ろで、グリュっと気持ちの悪い音がした。

振り向くと先ほど潜った扉が無くなっていた。

正確には壁に溶け込んでいる様に見える。

扉があった場所の木目の模様も色も違う。

微かに振動してる、上がってる感覚、これエレベーターか?


「うん?何処に向かってるんや?これ?」


「尉官食堂ですよ~」


「竜巻、さっきメシに呼びに来たって言ってなかったか?」


「あぁ~、軍支給の糧食貰ってきたんだけど~

さっきは早朝でどこも開いてなかったんですけど~この時間なら食堂開いてるんですよね~・・・開いてるんですよ~」


「なんや、奥歯に物が挟まった言い方わ」


竜巻がモジモジしながら。


「荻田さんにお願いあるの~荻田さんって役職持ちでしょ~上の食堂行きたいな~」


「上って佐官か?」

「もう一つ上~」

「将官用の食堂かいな、あそこってアホみたいに高いで、ワイそこまで手持ち無いで」


「お金は大丈夫~荻田さんお願い!~僕の階級じゃ、あそこに入れないの!~」


「まぁ一般食堂でする話でもないし、まぁええか」


「ヨシッ~~行き先変更ナムの棟25階に~」

ガッツポーズと共に行き先変更を告げると進行方向が変わった感じがした。


(シヤッキン、将官用食堂に来てくれや)

また、頭の中に鮮明に荻田さんの声が聞こえた。

驚き荻田さんを見るが口は動いていない。


「どうしたんや?」

「い、いえ、何でもないです」


視線に気付いたのか問いかけられたが、慌てて否定する。


微かな衝撃がすると部屋の中央に円形の机、机を囲む様に椅子らしき物が迫り出してきた。

いや、正確には床が机と椅子の形に変形したと表現する方が正しいかもしれない。


「お、着いたな。まぁ花の道座りや、最初から説明したるさかいに」


そう言いながらいの一番に座ったのは竜巻だった。


「メニュ~」


座ると同時に叫んだ。

机に何か現れたのかもしれない、机をなぞるように指を上下左右に動かし始めた。


「竜巻は置いといて座りや」


「あ、ハイ」


荻田さんに再度促され竜巻の横に座る。


「メニュー」


想像通り机の上に文字が現れた、文字を触り上にスライドさせてみると下からも文字が出てきた。

この机スマホとかタブレットの延長だ。

だが、初めて見る文字だ。

ラストフロンティアでは世界の人が接続するから文字、言語は翻訳されるはずなのに。


「花の道。お前のはワイが頼んどくわ。読めんし意味わからんやろ」


「あ、お願いします」

(え?荻田さん読めるのか?)


「ぁぁぁぁぁくっそ高い」

(竜巻も読めてる)


隣から怨嗟の声が聞こえる。


「たく、将官クラスに来るからや、佐官クラスでも十分美味しいんやで」


「だって~、荻田さんこっちに来ることないじゃないですか~だからチャンスだと~思ったのに~ヴェェェ」


机に突っ伏せ泣きだした、嘘泣き臭いな。


「あーあーあーワイが奢ったるさかいに泣き止め」


「マジですか~!!」


一瞬で泣き止みやがった。やっぱり嘘泣きだったか。


「ハァーこれで竜巻は片付いたな。さて、花の道」

深いため息が終わると俺に向き直った。


「はい」

「もう、ある程度察しはしてるとは思うが、何処から話せばいいか分からん。とりあえず花の道の疑問から潰していこうか」


(何を?察しろと?)


「・・・・・・それじゃ、なんで、荻田さんはエセ関西弁なんすか?」


「最初の質問がそれかい!!」

凄まじい勢いで返答が帰ってきた。


「ブッフッ」

竜巻の壺に入ったらしい、盛大に吹き出した。


「とりあえずって言ったじゃないですかー」

少し半泣きで返してみた。


「色々あるやろ、自分がどういう状態なのかとか」


「荻田さんが真面目な雰囲気出すから。

それに荻田さんがバグ解決出来るんですか?」

責任転嫁してみた。


「時と場所選べや!!、雰囲気とか読むとか日本人そういうの得意やろが!!」

ガチで怒られた。


「スイマセン」


「ハァー」

深いため息が部屋に響く。


「私が説明しましょうか?」


いつの間にか蟹蜘蛛のシヤッキンさんが後ろにいた。

シヤッキンさんって明らかにクリーチャーなのに馴れたのか恐怖も感じない。


あれ?借金さんが二廻り程小さい気がする。


「借金、頼むわ、疲れた」


「音もなく入ってくるの止めて~」

荻田さんが力無く答え、竜巻が文句を言っていた。


「了解、では、何からお話ししましょうかね」

少し悩んでるみたい。

1番の疑問を聞いてみた。


「じゃぁ、質問、なんで荻田さんはエセ関西弁なんですか?」

ダン!!

荻田さんが眉間に皺を寄せて机を叩く。


「そうですね。それ以外のお話ししましょうか」

シャッキンさんも椅子に座りメニューを選びながら語り始めた。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

最後までお読み頂きありがとうございます。


4/15 大幅に加筆、変更しました。

今後のストーリーが大きく変わりますので意味が分からないと思います。

加筆、変更しましたら前書き、活動にてお知らせします。

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