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バグ探索

 現在の文明に触れている人は地球は何色ですか?と、聞くほぼ全ての人は青いと答えるだろう。

残念、『ラストフロンティア』の地球は赤いのよ。

赤くなっている原因は温暖化現象で金星と同じ状態になっているらしい。

原因は度重なる紛争と環境汚染で居住でき無くなり地球での文明は滅亡したらしい。


しかし、人類は宇宙航海時代に突入しており、生活の場を宇宙に変えて細々と存続していた。

しかし、同時期に他の知的生命体に太陽系が発見されてしまう。


彼等が言うには文明は惑星に根ざしていなければ文明と呼べず、我等は太陽系にただ住む難民なのだと言う。


主と呼べる種族が居なくなった太陽系は複数の他星系の種族、母星を持たない難民種族、違法採掘業者、犯罪組織が流入し入り乱れた結果、治安は急激に悪化し混乱する。


宇宙に上がり、母星を失ってやっと1つに纏まった人類政府は難民が流入したと同時に存在が明らかになった『多国籍軍事協商連合スィーティ・スィージュ』に加盟、加盟と同時に既存加盟国に治安維持部隊の派遣を依頼。


依頼された国は治安維持部隊ではなく軍を派遣、しかも太陽系に入ると太陽系の領有権を主張されてしまう。

大国の理不尽な行動に人類政府は明確な否定も出来ず、沈黙の否定と言う最悪な行動を取ってしまう。


他の種族は、沈黙=黙認とみなし太陽系は混乱に拍車を掛かけ無法地帯となり人類政府は統治能力を急速に喪失し派兵国の傀儡政権となり果ててしまう。


派兵した国の中でも一際大きい国、『神聖グーレイ覇権国』、『レセプティ・ドラゴニア共同議会』、『ミールー商人協商連合体』、3カ国の三つ巴の戦いが今始まろうとしている。


君は3カ国のいずれかに所属して銀河を駆け巡ぐるもよし、様々な物を生産し都市を築くもよし、または傀儡政権と化した人類政府に加担し独立を勝ち取るか、何を選ぶかは君の自由だ。

最後の本当の自由を謳歌せよ。



船が爆発した光と共に文句が飛んでくる。


「花の道、いい加減、戦闘に入るたびにナレーション語るの止めへんか?」


内蔵スピーカーから爆発音と文句の声が聞こえる、俺が狙撃した船が爆発した音だ。


「俺、声出してました?」


「毎度毎度、普通にナレーション語りするからびびるよ~囮になってる僕たちの身になってほしいね~」


どうやら戦闘のたびに『ラストフロンティア』のナレーションを声に出してたらしい。



現在、地球軌道上インド洋上空。


竜巻に卑怯とまで言わせ、クランリーダーのレモンハートに妬みの種になっているであろう船にそれぞれ乗り込み地球軌道上で本日3度目の他のプレイヤーと戦闘をしている。


バグの発見を聞きつけ調査しに来た奴等なのか、たまたま地球観光に来た奴等なのか分からないが遭遇し即戦闘に入った。


こちらから喧嘩ふっかけた訳じゃないのよ、相手から喧嘩売ってきたんだからね。


「ラスト~」


竜巻が最後の敵を撃墜したみたいだ。


荻田さんは勝者の権利とばかり撃墜した他のプレイヤーのアイテムや船の断片を片っ端からアイテムボックスに放り込んでいる。


俺は少し離れた場所にいるので急がないと良い物は取られてしまう。


戦闘の仕方は簡単、荻田さんと竜巻が駆逐艦クラスに詰める最大のエンジンを積み込み囮兼撹乱兼白兵戦担当。

そして俺が今買える1番値段の高いレーダーと1番射程の長い狙撃用兵器を積み込み遠距離から狙撃。

本来、駆逐艦は艦隊の防御役、駆逐艦だけがうろついていれば鴨がネギ背負って歩いてるようなもんだ。

ま、俺らはその考えを逆手に取ってるんだけどね。




「花の道、レーダーになんか見えるか?」

アイテムを拾い終えた荻田さんがレーダー係の俺に聞いてくる。

「何にも見えないっす、てかレーダーに映らないバグだからレーダー見ても意味ないんじゃ?」


疑問を口にしてみる。


「ちゃうちゃう、商船が居れば良いなって思ってたんやが、やっぱおらんか、地球なんて観光しに来る以外意味ないもんな」


「あれだけプレイヤー返り討ちしてるのに、まだ襲う気ですか」


「金はなんぼ有っても困らん」


「さっすが~マンション代を浮かす程の守銭奴ですね~」


「やかましいわ!てか、何で竜巻も寄宿舎におったんや?」


「あ~僕は~ね~」

言葉を濁す所を見るとコイツも借金あるな。

まぁ、俺も借金有るし人のこと言えないなー


「お!」


荻田さんから驚きの声が聞こえる。


「何かありましたか?」


「なにか黒い物が見えるわ、花の道、80キロぐらい先レーダーでなんか見えるか?」


「80キロって肉眼でよく見えますね、100キロ先まで何も無し」


「これがバグぽっいな、花の道、スコープで見えるか?」


船に装備している狙撃用システムにリンクし望遠スコープで覗くと無数に広がる大小様々な金属片が広がっていた。


「金属片が見えるね、ただのデブリっすね」


「デブリのバグか~、無駄足だね~」


竜巻の呆れた声が聞こえる。


「花の道、なんか使えそうなパーツとかあるか?」


「分かんないっす、近づいてみないとなんとも言えないすっね」


遠目からは溶けてたり、変形したりと歪な物しか見えない。


「まぁ、近付いてみようや、なんか金目の物があるかもしれんし」


「さっすが守銭奴~バグ探索じゃないんですね~」


「竜巻、辛辣過ぎるぞ」


3隻の船がデブリ帯に侵入していく。


デブリ帯に入り使えそうなパーツを探すが、めぼしい物は見当たらない。


軍艦なのか貨物船なのか中継基地なのかも分からないほど原形をとどめていない。


「何処の所属の船ですかね?形から所属が分かるんですけど」


船の形からおおよその所属国が分かる、例えばグーレイ覇権国なら四角を強調した船が多く、レセプティ・ドラゴニア共同議会なら三角、ルーシー協商連合なら流線形などだ。



「これ、原型が無いほど壊されてます?」


「必要以上に破壊されとるな、ここまでする必要あるんかいな?」


「オーバーキルだね~」


「ん、救難信号?」


荻田さんの船が救難信号を拾ったみたいだ。


ゲーム上、死んだら登録している都市で蘇るのだが。

有機生命体なら培養ポット、機械生命体なら製造ラインで装備と所持金を失って尚かつ14万ダロルと言うゲーム内通貨を支払って蘇るのだが、装備や所持金を失ないたくないとか、14万ダロル払いたくないって奴がたまに救難信号出してる。


しかし、宇宙は広大だから救難信号拾っても場所が特定出来ないとか、敵陣営が拾ったりだったりとかであんまし意味のない機能なのだが。


「味方っすか?」


「・・・・」


「荻田さ~ん」


「・・・・」


何かに熱中しているみたいだ、返答が無い。


ふと疑問が頭をよぎる。


「あれ?俺は救難信号拾って無いけど、竜巻は拾ってるか?」


「いや~僕も拾って無いよ~」


荻田さんだけが拾えて俺と竜巻が拾えてない、そんな救難信号あるのだろうか?電波が微弱?特定の救難信号?

そんなのあるのか?。


「・・・・」


カタカタとキーボードを打つ音だけがスピーカーから聞こえる。


沈黙は荻田さんの大声で唐突に終わりを告げる。


「特定した、花の道、1時方向30度、何が見える?」


え!?え!? 突然の発言に戸惑い動きが鈍る。


「早う!」


急かされ指示された方向を見る。


デブリしか見えない、が、1つのデブリに半透明の球体が付着しているのが視界の片隅に入る。


疑問に思いピントを合わせてみるが、半透明なので中身が見えない、シルエットから推測するに。


「海老?か?」


ひとりごとが口から滑り落ちる。


「それや、距離は?」


ひとりごとを聞かれたようだ。


「距離は・・・2000メートル・・程・です」

俺の言葉を言い終わる前に荻田さんの船がスゴい勢いで発進させていた。


デブリの間を縫うように航行しているが、すごい航行技術だ、デブリに当たりもすれば大惨事なのに。


俺も遅れまいと船を走らせるが目標地点に到達した頃には救助者はデブリと共に荻田さんの船に入る所だった。


荻田さんと救助者が会話をしているのだろうが、何故か荻田さん達の言葉が聞き取れない、翻訳機能が動いていない、口にしている言葉が翻訳出来ていない。

救助者の通話デバイスが俺と違うのか?。


疑問が頭で渦巻いてるうちにコックピット内がアラーム音と共に騒たましく赤と紫の色が交互に点滅しだす。


ロックオン警報だ。


「ロックオンされた?いつの間に敵が?」

レーダーを確認するとレーダー画面の端に艦影が多数。

レーダーの探知範囲は100キロ程、100キロ離れた目標にロックオン出来るほど高性能な船って巡洋戦艦クラスでないと無理だ。


なんか、いやな予感する。


「花の道どうしたんや?」


「ロックオンされました、離脱しま」


言葉が終わらないうちにゴォォォォンと爆発音と共に船体が大きく揺れる。


衝撃と同時に赤と緑の点滅から赤の点灯に変わった、ミサイル警報だ。

ミサイル警報と着弾がほぼ一緒だった。


「このミサイルは!!」


心当たりがある、火力を抑え航行速度を最大まで上げ、レーダーの関知より早く又は同時に着弾する亜音速ミサイル、そんな物を最初の牽制として使う戦い方をする人を。


即座に離れないと不味い。

航行システムにリンクしエンジンに最大の燃料を送り込む。


エンジンが勢い良く火を噴く。

船が進み始めると、紫色の閃光が走った。

直後、グゴオォォォォン!と凄まじい爆音と共に俺の船の全てが爆散した。

かろうじてコクピットが脱出機能が役目を果たしたらしい。

生身のまま宇宙空間に放り出されても生きていけるのは機械生命体の特権だ。


紫色の閃光、光学兵器が直撃したみたいだ。


「クソ、動きが読まれてる」

明らかに動き方を知ってるかのような攻撃された。

予感が疑惑に変わる。


微かに爆発音が聞こえ周りを見渡すと竜巻の船が爆散してた。


徐々に敵の姿が目視出来るほどの距離に近づいてきた。


疑惑が確信に変わった。


「フレンドリーファイアーが出来るからって、ここまでやるか?」

そう、攻撃をしてきているのが巡洋戦艦レモンハートなのだから。

クランメンバーの船を沈めるなんて、嫌がらせの領域を越えているぞ。

いや、嫌がらせじゃないのかもね。


「無事なのは荻田さんだけか」

上手くデブリを利用して攻撃を避けてる。

だけど、避けるので精一杯か、反撃の機会が上手くつかめていない。


これからの行動に選択肢は3つ。

1、このまま生身ごとレモンハートに突撃アタック。

無理無理、生身の武装なんてたかが知れてるし、簡易スラスターで近づくなんて自殺行為だわ。


2、荻田さんが敵を撃退し救助を期待する。

ムリムリ、駆逐艦ごときで巡洋戦艦に勝てるかいな。

救出されるのは絶望的だな。


3、荻田さんの船に行き、手持ちの簡易砲台、簡易電磁シールドを増設する。

これが1番現実的かなー。


男のロマン、ロケットパンチ(ロケット鋏か?)を発射、鋏が荻田さんの船を掴む。

船を掴んだまま、飛ばした鋏が戻って来るのを逆利用して俺が荻田さんの船に近づく。


船に張り付き簡易砲台を設置し始めると、船内の会話が振動で伝わってきた。


「荻田くーん、隠れてないで出ておいでよー」


「・・・・・」


「無視してないでさー」


「・・・・・」


相手はレモンハートか?声はレモンハートだが口調が違う気がする。


「必死なるのも分かるよ、君のその体は生身だからね」


「・・・・・」


「死ねば終わりだからね、ねぇサージェリーの旦那」


サージェリー?なんの単語?聞いたことない。

それに何言ってんだコイツ?荻田さんは有機生命体だから、生身だろ。


「分かっとりながら攻撃するんかい」

(あ、言葉が理解出来た)


「やっと喋ったねー」


「ワイがサージェリーって分かっとりながら攻撃するって事は国際問題にしたいんか?」


「いやいや、サージェリーと事を構えるつもりは無いよ。

ただね、その海老野郎を私に渡してくれたら今までの非礼は詫びるよ」


「カッカッカッ」

荻田さん特有の笑い方だ。


「何か可笑しい事が?」


「そりゃ無理な話や、海老野郎ことパカリはワイらサージェリー市皇体制国が保護種族に指定しとる、しかもパカリ・インターソーラー国は立派な同盟国や。

つまり、ワイは、このパカリの安全が確認出来るまで保護せなあかんのや」


「海賊の集まりを国と呼ぶな!!」

なんか凄まじい怒りを感じる。


「その海賊に商品発注して、海賊だからと言う理由で金払わんとか、人としてどうかと思うで」


この人達は何の話をしているんだ? 


ポンと音と共に視界端にメールの受信のポップアップが出てくる。

《荻田さん様よりメールを受信しました》機械音声が宛名を告げてくる。


荻田さん?話ながらメール打ってる?器用なことしてるわ。

作業の手を止めメールを開く。


題名:今どこ居る?メールで返信くれ

本文:


Re題名:無題

本文:荻田さんの船の外壁で簡易砲台増設中


ReRe題名:至急、コックピット来

本文:


ReReRe題名:無題

本文:了


(急いでるねー荻田さんも機体は失いたくないわなー。

この状況でコックピットに来いって事はアイテムの受け渡し?この戦況を覆すアイテムってことか?)


考えても仕方ないと、簡易砲台の設置の手を止めコックピット前室に入る。

外壁の扉を閉めると、もの凄い勢いで水が注水され始めた。

水?あぁ、荻田さんは自称、海洋生物だからコックピット内も水で満たしてるって言ってたな。


俺の船と違い重圧感のあるコックピットの扉を開けると、けたたましい赤青紫の光の喧騒、警告音の音の暴力が一気に溢れ出る。

如何に逼迫した状況なのかがいやでも分かる。


水が流れたのが分かったのかコックピット内にいる生物が振り向く。

1人は明らかに地球外生命体の荻田さんだが、もう1人も明らかに人類では無い、人間の体に頭だけを海老一匹を丸々すげ替えた生物だ。


「花の道、背中のトランク開けろ」


「うん?はい?」


「早よぅ!!」


強い口調に急かされ背中に白兵戦用の武器等を納めている腹部の収納スペースを開く。

昆虫型とかの独特格納スペースだ。


「武器とか全て外してくれや」


言われるがまま接続を外すと海老さんが背中に座り込む。

「は?何して」

ぐじょっと気色の悪い音がすると海老さんの頭と体が分離した。

軽く恐慌状態になる。

荻田さんがガシッと俺の顔を掴み真剣な声で話し出した。


「ええか花の道、よく聞けや、今から言う事を必ず実行してくれや、でないと人類文明は滅ぶで」


「は?何を言って…ます?」

荻田さんの真剣な声に気圧される。


「船を出て戦闘が終わるまでデブリで隠れてくれ、戦闘が終わったら、月都市の静かの海の第4ドックに行ってくれや、そこに蟹なのか蜘蛛なのか分からんシャッキンちゅう奴が居る。

そいつに背中の中身を渡してくれや。

くれぐれも他の奴等に渡したらあかんで。

それにトランクの中身はアイテム化出来ん、死んでもあかんで」

「わ、わかりました」


一気に説明され混乱気味になるが荻田さんの気迫に押され返事するしか無かった。


「すまんな花の道、一般人のお前を巻き込んで、こんな時の為の竜巻なんやけど肝心な時におらん・・・1年も遊んどらんけど楽しかったで」


今生の別れの用な言葉を吐く。

なんかのイベント?ドッキリ?理解が追いつかない。


「さぁ行きや」

有無を言わさない言葉に促されるまま船を出ようと扉に近づくと異変に気づく、重圧感のある金属製の扉がバラ板を組み合わせた木製の扉に変わっていることに。

思考が停止する。理解が追いつかない。


扉の向こう側から微かに声が聞こえてきた。

「誰が~役立たずか~~」

声が聞こえると同時に扉に勢いよく引き寄せられ叩きつけられた。


原因はすぐに分かった扉のバラ板の隙間から鎖の用な物が二本出ていた。

一本は俺に巻き付いている、もう一本は・・・

ゴンッっと水の中なのに激しい音が聞こえるほど荻田さんも扉に叩きつけられた。

声にならない声が出ている。

荻田さんの体にも鎖が巻き付いている。

鎖の引き寄せる力は扉に叩きつけられても変わらずメキメキッと扉が悲鳴をあげている。

その悲鳴はバキバキッと絶叫に変わり遂にバラ板が割れた。


その先に2本の鎖を握っている、褐色の女が見えた。

が、俺の意識はそこで途切れた。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

誤字、脱字等を発見しましたらお知らせ下さい。

3/25加筆

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