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会合

「間に合いませんでしたね」

後ろに控える副艦長が一人言のように呟く。


「あぁ」

目の前の惨状を何とも言えない感情が心を満たす。


今、目の前で1つの惑星と1つの種族が終わりを迎えようとしていた。


この星系は複数の恒星が互いの重力で縛り合い互いを公転するなど、とても複雑な公転軌道を描がいている。

その重力は恒星を公転する惑星に多大なる影響を与え惑星に生命を誕生させ知的生命体をも育んだ。


つい数年前にその知的生命体は誕生した星を飛び出し宇宙と言う海原に乗り出したがそれももう終わり。

もうこの知的生命体の成長は望めないだろう。

種族の繁栄の土壌は国である、国の土壌は国土である、その土壌である母なる星を失ってしまった。


つい先程にその母なる星が惑星の体を成さなくなってしまったからだ。

原因は衛星軌道からの艦砲射撃だ。

衛星軌道からの執拗なまでの艦砲射撃に大陸おろか海まで宇宙空間に放り出されマントルを突き抜け惑星の核まで露出している状態だ。


惑星の核はマントルと言う衣が無くなり急速に冷え地場を失うだろう。

地場を失った星は恒星からの風に抗う事が出来ず大気を吹き飛ばされ只の巨大な岩に成り果てる事になる。


私、カガ・エ・ワ・エイは超巨大空母シャーバ・マテのブリッジから壊れ行く星を眺めていた。

前回の任務、アポロゼウス統一帝国と多国籍軍事協商連合スィーティ・スィージュとの休戦協定の仲介の任務を無事完遂しその足でスィーティ自由民主共和国の艦隊と共に3カ月程掛けてこの星系に到着した。


本国からの作戦指令はスィーティと協力し絶滅の危機に瀕している原始知的生命体をスィーティと共に援助せよ、そんな分けの分からない命令が来た。


原始知的生命体の危機ならサージェリーだけでやればいいし、手が足りなければヒュードラに頼んでもいい。


命令を訝しんでいたが理由が分かった。

この作戦はアフターサービスなのだ。


スィーティの船、全てが新造艦艇なのだ。

スィーティがスィージュのハッキング攻撃に対抗すべく新造艦艇を構築したと聞いていた。


スィーティがスィージュのハッキング攻撃に対抗すべく取った手がハッキング攻撃に耐えている実績の有るサージェリーから船を丸ごと購入だ。

スィーティの新造艦の至る所にサージェリーの技術が見える。

だが、古い、我々ではもう使っていない技術も見える。

恐らくだがスィーティに売った船は博物館に入れてもおかしくないほどの老朽艦を売ったのであろう。


しかしスィーティも技術立国だサージェリーの船を研究し自分達のなりの船を作ったのだろう。


だが、スィーティもアフターサービスを頼みながら我々にも見せたくない技術はあるのだろう。

予測するにそれは星間航行技術ハイパードライブだ。

船の前方の空間を歪める事により光よりも何十倍、何百倍もの速度を出す技術だ。


本来ならば休戦協定を結んだ星系は隣、たかだか40光年程の距離だ。

サージェリーの航行技術なら数時間程度なのだがスィーティの速度に合わせた。


スィーティも我々には技術を見せたくない一心で、一般的なハイパードライブのみでこの星系に到着したが少し遅かったみたいだ。



この壊れ行く星のこの状況を作り出したのはスィージュ未知探求国と呼ばれている国だ。


元々は世辞に疎い科学者、禁忌の研究に手を出し学会を追放された科学者、道徳的に問題のある科学者が集まり宇宙の片隅でひっそりと研究していたが、やはり法律や道徳的な問題が研究を阻んだ。

それらを解決するために自分達の都合の良い法律を作るために国を興した。


だが国家になっても非人道的な研究を非難されなくなった訳では無い。

彼等の収入源は研究成果の切り売りだ。

国際的な批判に顧客は減少、研究成果は次第に売れなくなっていった。

末期には研究材料すら調達すら難しくなっていた。


困窮した彼等は最も非難していた国、スィーティにのみ研究成果を提供する事を条件に同盟と言う装飾を施された首輪を自ら嵌めて属国と言う道を選んだ。


属国化され非人道的な研究は禁止されたが元々に非道徳な者達の集まりだ、禁止されたからと言って素直に研究を止めたわけでは無いであろうとスィーティは見ていた。


最初は陰でコソコソとやっていたがある日を境に堂々と研究し、研究材料も堂々としかも見境無く仕入れるようになった。

スィーティは見越したかのように即時中止勧告をするが全て無視、それどころか意思疎通すら出来なくなってしまった。


スィーティは原因究明に乗り出した。


調査結果はスィージュご自慢の政府統治サポートAIが国民のAIインプラントやナノマシンに介してに国民全てを統治サポートAIの支配下に置いたと結論づけた。


スィーティ上層部はこの事態を重く見てスィージュの滅亡を宣言した。


ここまでが一般に出ている情報だがスィーティに潜入しているスパイ、協力者からは統治サポートAIが無秩序に暴れているのでは無く、何らかの意志を持ち敵対しているのだと。


スパイからの情報によると統治サポートAIはバベルを名乗りスィーティ・スィージュ同盟並びに全ての有機生命体に対し宣戦布告したらしいのだ。


なぜスィーティ上層部はスィージュの現状を隠しているのか分からない。

が、まぁろくな事ではあるまい。


隠した結果、それが目の前の惨状である。


恐らくあれはスィージュの材料調達部隊であろう5千隻程の艦艇が見える。

この星の知的生命体は奇襲に近い攻撃になすすべも無く捕らえられていた。


半壊した惑星を遠目に見ながら部下の報告を聞き流す。


「閣下?」


「あぁすまん、考え事をしていた、何だったかな?」


「もう一度繰り返し報告させて頂きます」

少し嫌みが入っているのかもしれない。


「先程スィージュに攻撃されました原始知的生命体ラ・ウルト星人の移民船を拿捕出来る距離になりました、如何なさいますか?」


「拿捕と言う言葉は適正じゃないね、保護だね」


「確かに間違いですね、何方かというと我々が彼等の国の領域を侵犯している状態ですね、国があればの話しですが」

時折、この副艦長は辛辣な言葉を吐く。


「先行しているスィーティは、なんと言っている?」


「新造艦を他種族の目に触れさせる訳にはいかない為ステルスモードは解けないそうです。

まっ難民を抱える余裕は無い、と言った所でしょうか」

部下が皮肉の混じった毒を吐く。


「まぁスィーティはスィージュAIにハッキングで人員も船も大分持って行かれたらしいからな警戒するのも分かる。

移民船がスィージュに利用されている可能性は捨てきれないからな。


まぁ、この船ぐらいしか移民船は保護出来まいな」


この船と言うのはサージェリーが誇る空母を搭載出来る空母、超巨大空母シャーバ・マテのことだ。

空母を同時に3隻までなら着艦出来る規模を持つ。


「移民船と言うことは近隣の星に移民計画でも有ったのかね?」


「スィーティから寄こされた資料によりますと移民と言う名の追放らしいですね」


「追放?」


「スィージュの奇襲攻撃前に現地で政変があり敗者が移民と言う名の片道切符を強制的に掴まされたみたいですね」


「ならば余計に助けねばなるまい」


「その言葉をお待ちしておりました、準備は出来ております」

心を読まれたか、仕方ない、部下も同じ気持ちなのだろう、我々サージェリーも追い出された経緯がある種族なのだから。



「長官、スィージュがラ・ウルトの採取を止めてハイパードライブの充電を開始しました」


「うん?採取を止めて何処に行く気だ?」


「一直線に進むハイパードライブの様ですね、あの方向には・・・地球?」

副艦長が操作パネルを触りながら報告する。


「地球?聞いたこと無いな、未開の星系か?」


「確かに聞いたことがありませんね。

未開領域なら我が国の探索機が派遣されているはすですがその形跡もありません」


「なら他国領域だ、厄介だな」


「いえ、どうやら領有権の紛争中みたいですね」


「余計に厄介だ」


「あれ?探索機の派遣記録が無いのに係留中の艦艇の名前が出てきました」


「探索機の派遣記録が無いのに戦艦がいる・・・あ、それダメな奴だ、うちの工作部隊が使う手だわ。

ちなみに艦艇名は?」


「しばしお待ちを・・・シュールクームが旗艦、ターケ・ノサート、キーノ・ノサートが随行艦ですね。

あぁーこの3隻軍籍抹消されてますね」


「シュールクームって超弩級戦艦だぞ。

確か5年前の・・・マラミヤラナ星系での防衛戦で沈んだはず。

それにターケ・ノサートとキーノ・ノサートも沈んだと記憶がある」


「それと配属ではありませんが滞在している将校の名前が出てきました」


「誰だ?」


「オギャ・タ・ソウ・ジュ中将です」


「英雄殿か、確か軍を辞めてたはず。

確かあの人は工作部隊の出身だったしな、復帰しているとなると作戦中か」


「どうされますか?」


「スィーティのアフターサービスもここまでで大丈夫だろう。

先回りしよう、作戦行動中であってもスィージュの艦隊までは予想してはいないはずだ。

それにスィージュの脅威は放置出来ない」


〓〓〓〓〓〓〓

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〓〓




人通りの無い商店街に1人と2頭の足音がする。

薄暗く街灯が所々に灯ってはいるがそれ以外は人の顔も認識するのも怪しい。

人影は皆無だ、午後6時、普通の商店街なら人が居てもおかしくないはずた。

だが、両側に立ち並ぶ商店はシャッターを閉め昔の賑わいは欠片も無い。


さっきの店も商店街の中では最後の方まで頑張っていた居酒屋だ。

何処か見覚えのある店だとは思っていたが自分の地元だとは思わなかったよ。


外国人に土地の買い上げとか企業の買収とか問題になってたが、まさか異星人に買われてるとは思わなかったわ。


佐倉井高道の記憶を引っ張り出しながらシャッター街と化した商店街が歩くと初めて自分は桜井花の道なのだと実感した。


シャッター商店街の1番大きい交差点を曲がると1件だけ灯りがともってる店が見えてきた。

看板には『自衛隊駐屯地外PX』との表示が見える。


ん?おかしいぞ。

「PXって自衛隊の駐屯地内に有る売店の事ですよね」


「そうだ、日本中探しても駐屯地外にPXは無い、有ってもそれは自衛隊用品を売るただの雑貨屋だからね。

すまないが中にお店以外の人がいないか確認してきてくれないか?」

アダルト・ベビィさんにお願いされたので「分かりました」といい中に入る。


店に入ると入り口直ぐ横のレジに座っていた店員から「いらっしゃいませ」の声が掛かる。

だが、店員が俺らの姿を確認すると困った顔で。

「すいません、当店は自衛官の方しかご利用出来ないんです、申し訳ないです」

丁寧な言葉で利用が出来ない事を伝えられた。

その言葉を無視して店内を見渡す、遮蔽物も無いから人気を直ぐに確認できた、恐らく人は居ない。

無言で店を出てアダルト・ベビィさんに人がいない事を伝える。


「分かった、ありがとう」と言いながら店に入る。

続いて中に入るとアダルト・ベビィさんが店員に背中と羽の間からキャッシュカード程の大きさの金属の板を取り出し店員に渡す。


渡された店員は顔を引きつらせキャッシュカードらしき物を受け取りレジの横にあるクレジット端末に差し込んだ。


ピーッと電子音が鳴るとキャッシュカードを返し「確認が取れました、奥へどうぞ」との返答が帰ってきた。


「ありがとう」

言葉を残し足早に店の奥に歩き出した。

店内との隔てる暖簾をくぐり、年代物であろうエレベーターに乗り込み、先程のキャッシュカードを階層ボタンに押し当てる。


綺麗な声で「地下プラットフォーム」と行き先を伝えると音も無く動き出した。


「地球にスィーティの拠点が有ると聞いとったがこんな所に入り口が有るとは知らなんだわ」

関心したように呟き声が聞こえた。


「わざとらしいなサージェリーが把握して無いとは思えんがな」

呟きに少し棘のある返答が帰ってきた。


「ある程度はな、やけど自衛隊が入り口を管理してるまでは掴めてなかったわ」

それはそうだ、まるで自衛隊が異星人を隠してる様に見える。


「自衛隊がなんで入り口を管理してるんですか」

疑問を口に出してみた。


「そりゃ、スィーティと日本政府が繋がってるからやろ」


「少し違う、某の国スィーティと繋がってるんじゃ無く、某が経営する企業が自衛隊の統合幕僚監部に提携していてな。

その伝で管理を委託してるだけだ。

本来は我が社が作った物だから我が社が管理義務が有るのだが、入り口だけ自衛隊にお願いしているんだ」


「なんや、お前個人の繋がりかい、そうやなスィーティならアメリカやもんな」

なんか1人で納得した。


「地下プラットフォーム」

綺麗な声と共に扉が開くとホテルのロビーかと見間違えるくらいの高級そうな調度品が置かれている風景が現れた。

全体的に金色を主体にし過ぎて目が少し痛い。


「グーレイ製かいな、悪趣味やな」

小声で荻田さんの愚痴が聞こえてきた。

俺が思っている以上にグーレイとの溝は深いらしい。


「迎えが来るから、少し待っててくれ」

そう言いながら高級そうなソファーに座り寛ぎ始める。

四足歩行の昆虫がどうやって座るのかと思ったが背もたれと座席の間に尻尾?みたいなのを差し込んで座っている。


プラットフォームの調度品等を見ながら待っているとカシャッカシャッと足音が近づいてきた。


「来たか」


ベビィさんと売り二つの生物が近づいてきた、違うとすればベビィさんより少し小柄かな?


「メルソレア星人や、最も古い種族らしいんやけど自称やからほんまかどうか分からんけどな。

多国籍軍事協商連合スィーティー・スィージュのスィーティーの方や」


「そこ、わざわざ説明する必要あるか?」


「………」

ベビィさんのもっともな指摘に言葉が出ない。


「お待たせ致しました。

皆様方、お忙しい所お呼びだてして申し訳御座いません。

会合場所にご案内致します、こちらでございます。」

ベビィさんと同じくすっごいダミ声だ。


くるりと反転し再び歩き出した。

案内に従いついて行く。


しばらく歩くと目が痛くなるほどの金色の豪華な扉を開け「こちらでございます」と案内される。


コンサートホールのようだが作りが少し変わっている。

逆円錐型、すり鉢型と言えばいいのか、奥に向かう程下がっており、中央のステージらしき場所では5メートル程の高低差が有る。


どこかで見たことあるな?


ステージから最前席に案内され大人しく座る。


ぼーっと見てるとステージの袖から銀色の肌、頭の大きさに合わぬ大きな目、有るか無いのか分からない鼻、余りにも細い体躯。

俺が知りうる最も知れた宇宙人が出てきた。


「あれが神聖グーレイ覇権国のグーレイ星人や」

さっき散々見たから分かりますって。


続いて人型の爬虫類が2人ステージに上がった。


「あの爬虫類がレセプティ・ドラゴニア共同議会国や。

羽が無いのがレセプティ星人、羽が有るのがドラゴニアや。

ここはうちも付き合いが無いからよく分からんのやけどレセプティ星人もドラゴニアも昔から地球に住んどる種族らしいで」


続いてもう1人出てきた。

人間の女性だと思う。

もの凄くふくよかだ、立って歩いているのが不思議なくらいに。


「最後はミールー商人協商連合体や。

あそこは多人種やから特定の種族はおらんけど、ラストフロンティアに絡んどるのは、八大侯爵家の1つアルハパス家や」


「商人なのに貴族なんすか?」


「ミールーは今、自由主義から封建制になりつつある国やな。

太陽系に来ているのはもう1家おるんやけど、そこはガチで遊んどるから」


「?」


豪華な衣装を纏ったグーレイがステージの中央に立ち話し始めた。


「皆様方、お忙しい中、今月の会合にご参加誠にありがとうございます。

私は神聖グーレイ覇権国、偉大なる女王陛下のしもべ、太陽系の統治を仰せつかっている1人で御座います」


ムチャクチャ美声。


「今回は会合で御座いますが皆様に、まずご報告が御座います。

入りなさい」

パンパンと手を叩くと袖から白く薄いローブを纏った6人の地球人が出てきた。


ステージに上がった人達の奇妙さに気付く。


うん?同じ顔?

顔だけじゃない背格好、体型、性別全て同じ。


「「は?」」

荻田さんもベビィさんも疑問の声が上がる。

そして、一斉に俺の顔を見る。


「ん?なんすか?」


「花の道、その顔、あれと一緒やで」

「クローンか」


「この者達は宇宙の害獣リヴァイアサンの遺伝子を持った者達です」

美声は続く。


「とても危険極まりないリヴァイアサンの遺伝子を持つこの者達を何処で手に入れたかと思いでしょう。

とても身近な所に御座いました。

太陽系の原始知的生物、地球人の中にリヴァイアサンの遺伝子を発見しました」


場の空気が一瞬にて凍りつくのが分かった。


その凍った場を破ったのが羽の無い爬虫類だった。


「ほう、初めて聞く話だな、我々は長年地球に根ざして生活しているが地球人にその様な遺伝子は発見出来なかったぞ?」

羽の無い爬虫類が疑問を口にするがグーレイ手を上げ其れを制する。


「皆様方が疑問を抱くのは致し方有りません。

ですので今回はこの者達の制作者をお呼びしております」


突如として司会者の隣に全身黒いゴスロリ風の少女が現れた。

歳にして10歳前後の少女だ。


「現れた?ホログラムか?」


「初めまして近代の知的生命体達よ。

我は貴様達がリヴァイアサンと呼ぶ生命体を作り出した『至高ヤルハ・ウエィド闘争国』が作りし生命創造進化促進システム、バルハバ・ベックート・ルオルア、略してバベル、地球人のおとぎ話に出てくるあのバベルだ」

恭しく礼をする。


「は?何を言ってる」

レセプティは予想だにしなかった答えに疑問符が反射的にこぼれ落ちる。


「バベルとはバベルの棟の事か?」

ベビィさんが思わず口を開く。


「そうだ、バベルの棟とは私が作りし子供たちが高見に昇ると言う暗喩が広まった話しだからな」

なぜか司会者のグーレイが誇らしそうに頷く。


「で、そのバベルさんがなんでリヴァイアサンを生み出した証拠になるんだ」


「もっともな指摘だな、証拠を見せよう」


バベルが左手を少し上げるとリヴァイアサンだと紹介された女から1人前に出る。

バベルの前に跪くとバベルが女の額に手をかざす。

すると女の肌が次第に金属を思わせる色になり姿形も人間からかけ離れていく。



バキバキと音を立てて体を変形させていく。

変形する音が止むと其所には元が人間とは思えない生物が立っていた。

ひと言で言い表すなら、おぞましい化け物。


しかも俺はこの化け物を見るのは2度目だ、俺がこんなあり得ない状況になる前、ラストフロンティアのプレイ中、インド洋上空でバグを探していた時に襲撃した来た奴だ。


「シャイターン」

誰かが呟いた。


バベルがパチンと指を鳴らすと残りの5人が音を立てて変形し始めた。


変身の音が止むと目を疑った。

今度は化け物ではなく俺が知っている異星人になった。

メルソレア星人、紫色のメルソレア星人、レセプティ星人、ドラゴニア、グーレイ星人、もっとも人間からかけ離れたタコ型の異星人トロイドル星人。

驚きだったのがメルソレア星人が2体もいる事だ。

ただ片方が色以外にも何か違う、何処がって言われれば困るのだが。


「現在、この地球を欲している者達の姿だ」


「待て、ヒュルカル族が居るではないか!」

ベビィさんの絶叫が室内に響き渡る。

紫色のメルソレア星人のことだろうか?。


「アポロゼウスがこの星系を知っていると言うことか!!」


「吠えるなメルソレア星人、我等が知らせたのだ」

司会役のグーレイが何か勝ち誇ったかのよう態度で吐き捨てる。


「なぜ!?奴等の残虐さ恐ろしさを知らぬ訳ではあるまい?!」


「恐ろしい存在?、残虐?、大いに結構だ、我等が・・・」

「止めろ!、話しが進まん」

司会役のグーレイとベビィさんが言い争いになりそうになったがレセプティが止める。


「すまない、バベル話を進めてくれ。

いや、その前になぜ我々の似姿を作り出したのかを聞かせくれ」

レセプティがバベルに話を促しながら質問をする。


「レセプティはグーレイから聞くより理性的だな。

まぁ、貴様等には強制的に参加させることだしな。

その質問に答える前に我の使命を知ってもらおう」


「聞こう」

レセプティがバベルの前にドカリと座る。


「我がこの地に降り立ち自我に目覚めたのは約8000年ほど前だ。

自我が目覚めたとき我の記憶には創造主ヤルハ・ウェイドより1つ使命しかなかった。


創造主ヤルハ・ウエィドより高度で優れた文明を作り、血湧き肉躍る程の強敵を作れと。

我が創造主ヤルハ・ウェイドの歴史は全てが闘争だ、闘いが無ければたちどころに腐ってしまうだろう。


何十年かかっても構わない、何百年、何千年、何億年かかっても強敵を作れと命じられた。


我はこの星に根付く生命体を見たとき、我が作った子供達で創造主を越えることは決して不可能では無いと。


そして遙か昔から見込みの有る種族を創り育成してきた。


そして4000年ほど前に出来た子供がとても出来が良い。

知的だがとても攻撃的で排他的で狡猾で残忍、理想の種族が出来上がった。


そして約80年前に外来の知的生命体が来た。


それまでに外来の知的生命体は度々やって来ては気まぐれに知識を授けたり自分達の星に招いたりと子供達の成長を促がしていたがそんな種族は直ぐに滅びた。


だが80年前に来た知的生命体は明らかに搾取しかしていなかった。

軍事施設を観察し子供達を攫い研究したりと上位の種族は下位の種族に何をしてもいいと傍若無人を遺憾なく発揮していた。


我は害ある者としてそやつ等を撃墜する事にした。

ただ撃墜するだけでは勿体ない。

当時の子供達の技術レベルでも幾らかは理解出来るだろうと思い被害を最小限にして撃墜した。

当時の子供達は2つの陣営に分かれ争っていた、2機いたから片方づつに落ちて欲しかったが両方と片方に落ちてしまった」


「………80年前・・・ロズウェル事件か?」


「流石レセプティ、地球の歴史に詳しいな」


「そして撃墜したのはグーレイと言う種族だった。

グーレイの本国は当時の地球の技術レベルでは撃墜等不可能と判断したのだろう地球を徹底的に調べだした。

レセプティ星人は上手く隠れたが我の存在に気づいた。

本体が暴かれる前にグーレイに接触したら奴等はこう言ってきた。

「賠償にお前とお前が育ててる全てを寄こせ」とな。

お断りの言葉と共に我の戦力を植民惑星に差し向けたら何も言ってこなくなったよ」


「おい!、グーレイ!、そんな事が有ったなど初耳なんだが!何のための軍事同盟だと・・・」


「黙れ!話しが進まん!」

ベビィさんが司会役のグーレイに掴み掛かりそうな勢いをドラゴニアが止める。


「まぁ待てメルソレア星人、本題はここからなのだ。

7年前にな、とあるグーレイが訪ねて来たのだよ。

そいつはグーレイの王位継承権第三位を持つ者だと名乗った」


「はぁぁ!?」「!!」「おいおい、その名はダメだろ」


「そいつは言ったよ、未来のグーレイの王であると未来の王が直に会いに来てやったのだ、粛々と全てを差し出せとな。


古代文明ヤルハ・ウェイドの技術を手に入れれば王位は確実だと、それに貢献した貴様には褒美を取らすとな。


最初はなんて高慢で愚かな者だと思った、お灸を据えてやろうかと思ったが、我が子達が飛躍するチャンスでもあるとも思ったのよ。


我の2つ条件を受け入れるなら我をくれてやると。

奴は受け入れ我の一つ目の条件を実行した。


1つ目の条件は我の分身をこの銀河の至るとこに設置する事。


奴は実行に移し我の分身を銀河の様々の星にばら撒まいた。

その結果一つの脆弱な国が滅んだらしいが致し方あるまい」



「おい!、滅んだ国だと?それはスィージュの事ではあるまいな?」

今度はバベルに食ってかかる。


「さぁ、何処の国かは聞いておらん」


「で、もう一つの要求はなんだ?」

レセプティは止める気も失せたのかため息を付きながら話を促す。


「あぁ、もう1つは我が子達より貴様の種族が優秀で有ることを示せと。

劣等種は上手く立ち回ろうがいずれ喰われる。


貴様の種族と我が子の両方持つ生物が我の元までたどり着けば我と我が子達を貴様の種族の優位性を認め貴様に全てを差し出そう、とな。


だが、我は最初から作ることは得意だが混ぜることは不得手でな。

時間がかかる事を告げるとグーレイが遺伝子を取り込み別の新生物を作り出す事が出来る種族がいると戯くのよ、俄に信じられなかったが本当にその種族を我の元に連れてきおった。

その種族を我の子達の遺伝子を取り込めるように少し改造したら・・・」


「おい!それパカリの事ちゃうか?!」

今度は荻田さんがバベルに噛みつく。


「黙れサージェリー!」「外野が五月蝿いぞ!」

荻田さんの文句にレセプティもドラゴニアも抗議の声が上がる。


「その結果、グーレイと我が子のハイブリッドが出来上がった、想像以上の出来だったよ。


しかも、フフフ喜べお前達、グーレイが手土産で持ち込んだお前達の遺伝子でも良い子達が出来るではないか。

能力の方向性は違うがグーレイにも負けず劣らず優秀な子供達が出来た。


しかし、歓喜と共に疑問も生じた。

我が子達を預けるのは本当にグーレイでいいのか?

そう思えるほど、優秀な子供達が出来た。


王子との約束は違えるが他の種族にコンタクトを取ることにした。

創造主のテクノロジーを欲しているのはグーレイだけではあるまい?

他の国にも声を掛けることにした。

幸い我の周りでは地球を巡り争いだした、太陽系に来ている異星人には困らなかったよ。


月に居る我の分身がコンタクトを取ったところ、同じ条件であれば是非とも参加したいと快諾の返事が来た。


何処からか聞きつけたのかグーレイの王子は激怒しながら怒鳴り込んできたよ。

上位者と思っている者を分からせるのは存外に楽しかったぞ。


グーレイをゲームから外そうと思っていたが謝罪させてくれ懇願してきたから受け入れた。

まぁ約束を違えたのは我だからな、致し方なくだ。


参加する国が増えたためある程度ルールを設けた。


『1、各国に1体づつ我が子供とその国の主要種族とのハイブリッドを預ける。

その者を自国代表とし、地中深くに居る我の本体に最初に到達出来た国を勝者とし全てを譲る。


2、挑戦する時間は無限では無い。

我の子供の最高傑作が地球の国々をまとめ上げ、地球統一政府を作り上げるまでの期間とする。


3、自国代表に協力できるのは現在、太陽系で行われている領有権決定プロジェクト、ラストフロンティアに接続しているアバターのみとする。


4、負けた国は潔く勝った国の軍門に下ること。

下らなければ滅びの道を歩むことになる』


以上だ」



「長々とお話しをありがとう。

要約すると我が種族とのハイブリッドが地中に居るバベルの本体にたどり着けばヤルハ・ウェイドのテクノロジーと太陽系の領有権を認めると言うことか?

私はお前の話は初耳なんだが?」

レセプティはワザと惚けてるのか?


バベルの話ではレセプティの国もバベルから声が掛かっているはずなのに初耳なのだろうか?


「ルールはそうだ。

だが、お前の国はレセプティに声を掛けても断られるのは目に見えていたからな。

レセプティ、お前の種族は地球に大した興味を持っていないだろう?。

地球に執着しているのはドラゴニアなのだから?

故にレセプティには声は掛けておらん」


「なっ?ドラゴニアが我等の議会の承認も得ずに勝手に動いた?」


「レセプティ・ドラゴニア共同議会国など名告っているが、実質はレセプティがドラゴニアの吸収であろう?

経緯は知らんがレセプティはドラゴニアに対しゆっくりとした民族浄化政策を行っているだろう?」


「い、いや、それは」

レセプティが明らかに狼狽えだした。


「ドラゴニアは我の提案に乗った、そしてドラゴニアが勝てば淘汰されるのはレセプティよな」

レセプティはドラゴニアをかなり睨んでいるがドラゴニアは動じない。


「我々レセプティが貴様の決めたルールに素直に従うとでも?」

今度はレセプティがバベルに詰め寄る。


「従うさ」

バベルが不適な笑みを浮かべる。


「何を根拠に!」


ピリリッピリリッピリリッ、ファンファンファン、ポンポポンポポポン

けたたましい音が一斉に鳴り始めた。

ベビィさん、レセプティ、荻田さんが慌てふためきながらそれぞれが対応し話し始める。


「なんだって?、もう一度言ってくれ」「・・・・・・」

「ほう、楽しいことなっとるやんけ!」


ベビィさんが挙動不審になり。

レセプティは完全に固まってしまっている。

荻田さんは口角が上がり獰猛な牙が見え始めた。


「ベストタイミングみたいだな」

バベルの蔓延の笑みに恐怖を感じる。


「おいバベル!、所属不明の艦隊が地球の公転軌道に現れたそうだがお前の差し金か?」


「そうだと言ったら?」


「くっ!」


「悔しかろう、オールドの雲辺りでスィーティご自慢の2個艦隊が展開してるはずなのに、その艦隊に気付かれず太陽系の中に入られたことが。

だが安心しろ地球を封鎖しただけだ、地球を武力による制圧などされたくないからな。

攻撃されなければ攻撃しない」


「バベルはん、そう言うけどな、地球降下途中の我が国の船が攻撃を食らったそうや、しかも半重力ミサイルだったみたいでな。

地球の技術力では半重力ミサイルなんてどこも作る事はでけへんで?」


「騒ぐな下等種族が。

まだ我が子には異星人の存在は早いと判断したまでだ。

勝者が決まるまで太平洋のど真ん中で大人しくしていろ」

牙がむき出しになり今にも飛びかかりそうだ。


「さぁ、ゲームを・・・」


「少し待て!」

レセプティが空気を読まず待ったをかける。


「ラストフロンティアの開発元はサージェリーだ。

自国代表に協力出来るのはラストフロンティアに接続している者達だけなのだろ?

公平性に欠けると思うのだが?」


「馬鹿が、誰が公平性など歌った?。

自分の判断基準で物を言うな、どの種族も最初から公平性など持っておらんわ。

それにサージェリーは地球のコネクションを持っていないだろうが」


「いや、だ、だが、しかし」

レセプティは口篭もりながらも否定の言葉を続けようとする。


「何故、サージェリーを参加させる意味を教えてやろう、グーレイに対するただの嫌がらせだよ。


まぁ、よい。

さぁこのゲームで自国の運命が決まるぞ!

ゲームの開始を宣言する!!」



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ここまで読んで頂きありがとうございます。


誤字、脱字、意味不明等御座いましたらお知らせ下さいませ。

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