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タイタンのダンジョン

「「キレイ」」

俺と竜巻の声が被る。


目の前には絶景と言える光景が広がっていた。


青や緑、赤や紫の1センチ程の球体が無数に浮いている。

壁や床は青白い氷に覆われ太陽の光を幻想的に映している。


ここは土星の第6衛星タイタンの中にあるマルナレキアダンジョンだ。

このダンジョンはラストフロンティアのイベントの1つタイタン地球化計画で中枢を担ったダンジョンだ。


イベント内容はタイタンにあったメタンやエタンをプレイヤーが採り尽くしてしまったので替わりに水の衛星にしてしまおうってイベントだ。

運営はイベントだけ立ち上げて放ったらかしなので地球の叡智が集まった最初のイベントだったのかも知れない。


たが、タイタンは地球ほど磁場が強くなく液体ならまだしも気体は直ぐに宇宙空間に逃げ出してしまう。

そこで立ち上がったのがタイタンのコア強化計画だ。


何十億年前の地球も磁場が弱かった、だが地殻変動によりマントルに海水が流れ込む事により磁場が強くなったと様々な研究が語っている。


タイタンは地球の縮小版だから同じ事が出来るはずだが地殻変動が起きるまで待てない、ならばとマントル近くまで穴を掘り水で満たせば勝手に水が染み込みマントルまで到達するのではとの案が出された。


子供染みた案だと思うのだが実際に実行された。


この案に色々課題があったのだが、その中に掘削の問題があった。


穴を掘るのも一苦労だ、測定機器なんかあれば軟質の地盤を掘り進めれたのだろうがそんなものは無かった。

そこで取られた代案が天然の洞窟を更に掘り進めるのが良いだろうと多くのプレイヤーが洞窟に入った、モンスターの巣窟と知らずに。


このマルナレキアダンジョンは当初は小型のモンスターしか確認出来なかったのだが深度が深くなるに連れ大型化し、最深部は全長100メートル近いヒトデ型のモンスターがいた。


排除の為に多くのプレイヤーが挑み散っていった。




「流石、マルナレキアダンジョンやな。

ぎょうさんプレイヤーが散ったダンジョンや、魂の残滓がムチャクチャあるやん。


魂の残滓をバグと勘違いか、残滓を見える時点で地球人ってサージェリーと同じくらい能力高いんじゃね。


ところで花の道、感動してるとこ悪いんやけどな、浮いてる球体何色に見える?」

荻田さんが浮いている球体の色を聞いてきた。

人が感動してるのに無粋な。


「?・・・・・・青、緑、赤、紫ッスカね」


「お、正解や、紫まで視えるとなると、そこそこええ眼しとるやん」


「普通は視えない?」


「バグの報告例は赤と青だけやな」


「竜巻は?」


「僕は~ディーゼレだから~視えるよ~」


「ディーゼレ?って何?」


「ディーゼレはね~なんて言うか~花の道の国では無い職業だからね~、なんて言えばいいんだろ~」


「ディーゼレちゅうんは、日本語に直すと魂技術物質変換技師になるんちゃうか?」


「ん?魂技術物質変換技師なにそれ?」


「え~と、魂はね~肉体が経験した事を~逐一記録してるのね~。

それを~僕達ディーゼレは魂から記録した情報を~切り離して物質化する事が出来る人を指すのさ~」


「物質化して何か意味あるん?」


「物質化して~食べると~前の人の経験や技術部が手に入るのさ~」


「・・・・・・マジ?」


「マジだよ~」


「経験や技術って言うと何かを作るときに手馴れてるとか、そう言う事か?」


「そうそう~」


「それってスゲーヤベー事じゃね?」


「ディーゼレが居ない世界ではそうかもね~けどね~僕達とっては普通だから~ヤバイ事とは思ってないけどね~」


「花の道、口も動かすんなら手も動かせやー」


荻田さんから理不尽な注意が飛んで来てしまった、話しかけたんあんただろ?


荻田さんが短い手で虫取り網をぶん回し光の玉をかき集めていた。

竜巻も竜巻の周りに自然と魂の残滓が集まって来ている。


荻田さんが疲れたのか無言で虫取り網を渡してきた。

「同じ色のだけ集めてくれや、ワイは残滓を加工するわ」

投げるように虫取り網を渡された。


渡された虫取り網をまじまじと見るがどう見ても。

(特別製の虫取り網なんかな?100均で売ってる奴にしか見えないんだけど魂を捕まえるなんて)


そう思ってると虫取り網の網に入ってた残滓が網をすり抜け出した。


「あ、あれ?」

その様を見た荻田さんが手で顔を覆う。


「あー、あかんわ、魂の残滓が見えるからいけるかと思たんやけど、魔力の使い方が分かってないわ」


「え?コツが要るとか?」


「ちゃうで、魔力の操作の技術や。

しゃーない竜巻、魔力操作のスキル玉あるか?」


「有るけど~高いよ~」


「金取るんかい」


「そりゃ~売り物だもの~と言うか~ディーゼレから~何で~タダで手に入るって思ったの?~」

何も無い空間に手を入れ何かを取り出す。


「・・・・・ツケで頼む」


「は~い」

掛け声と共に灰色の玉が竜巻から飛んできた。


3センチ程の歪な玉、少し柔らかいが強く握っても形が崩れない。

感覚的にはグミに近いかも。


「何これ?」


「スキル玉だよ~それを食べるとね~その玉に入ってるスキル、経験や技術が身に付ける事が出来るって~便利なものさ~」


「ディーゼレ?」


「そうそう~歪なのは~スキル玉を取った人の人の性格が歪んでたのかな~?」


「食べたらスキル以外にも影響ある?」


「ん~?分かんな~い」


「分からんのかい!」


「大丈夫やろ、コイツこんなんでもディーゼレは国家認定や、その上級持ってるし性格の混入なんて有るわけが無い、竜巻もあんましおちょくるな」


「だって~そのスキル玉~僕の一押しなんだよ~魔力操作以外にも複数のスキルが会得出来るかも知れないのよ~、メインスキルに魔力操作が出るはず~、他にね~サブスキルで~魔力吸収、王の気質、淫靡、カリスマ、卑猥、口八丁なんてステキなスキルがでるはずだよ~」


「おい、なんか変な単語が聞こえたぞ?淫靡や卑猥ってなによ?」


「変な単語かな~生物は少なからず~性欲持ってるから~人より性欲が強くなるだけ~?だって~」

惚ける姿が癇に障る、が。


「花の道!くっちゃっべってないでと手ぇ動かせや、チャッチャッとやらんと終わらんで!

それにサブスキルの発現率なんて小数点以下やわ!」

今度は雷が落ちた、急ぎスキル玉を口に放り込み咀嚼する。


創造通り、ざらざらとした食感、味は無味、体が吐き出しそうになるが耐えて飲み込む。


しばらくすると体に変化が起きた、スキルの取得だろう。

スキルの取得は知らない情報が頭の中に流れ込んでくる、と、思ってたのだが突然に昔の事を思い出した感覚だった。


視覚にも変化が起きた、空中に浮遊している魂の残滓が4色だけでなく様々な色をしているのが分かった。



視覚の変化は魂の残滓だけでなく景色にも及んだ。

景色というか感覚に近い、無色透明の何かが周りにあるのが分かる。


「何これ?」

何も無い空間に手を伸ばし何かを掴もうとするが掴めない。


「地球の言語って便利やなワイ等が言いたい単語や概念を現す言葉が何でもある、さすが精神文明や。

サージェリーの言葉では今掴もうとしているのをドゥーと呼んでるんやわ」


「ドゥー?」


「ドゥーの事を魔力でも霊力でもマナでもエーテルでもダークマターとでも言ってもええで。

呼びを変えても呼び方が違うだけで物は一緒や。

厳密には少し違うんやけど大枠には一緒や」


有言実行しているみたいだ、荻田さんは口を動かしながら手も動かしてたみたいだ。

集めた魂の残滓を混ぜ合わせて様々な色になっていく。

荻田さんの手なのかヒレなのか分からない手の上で目の前に虹色に耀く光の玉が出来た。


それを何処かから出したコアクリスタルの上に置くと溶けるようにコアクリスタルに入ってしまった。


「1つ出来上がりっと」

ゲームでアバターの体が崩壊した後によく見慣れた光り輝くコアクリスタルが出来上がった。


「どれくらい作るの~?」


「ヒュードラで管理してるアバターが3体やから3個でええよ」


「ヒュードラって~国が管理してるの~勝手に使っていいの~」


「しゃーないんやん、予算降りてきぃへんし。

ほい、終わり。

花の道、あとは雑に集めてええで、掃除や」


俺が虫取り網で悪戦苦闘している間に必要数が集まったみたいだ。


「後はお掃除だね~」

その言葉を境に光の玉の流れが変わった、もの凄い勢いで竜巻の周りに魂の残滓が集まりだした。


俺が虫取り網を振り回す必要もなく魂の残滓が俺を通り過ぎ竜巻に向かって行く。


しばらく竜巻の姿を様々な光の玉の渦で見えない位に埋めていたが徐々に足下に集束しだしみるみるうちにビー玉程の黒い球体になった。


「おし、忌み地の掃除完了や。

これで当分はバグ出んやろ」


「当分?」


「そや、ここにあったバグ、光の粒子が見える現象の半分はプレイヤーが死んだときに出た魂の残滓やけど残りの半分はイベントが終わった後の観光に来たプレイヤーの思いや。

イベント楽しかったねーとか沢山死んだねーとかの思いを残して行くねん」


「思いっすか」


「そや、花の道かて周りにあるやろ、何故かよく事故る場所とか、何となく気味が悪い場所とか、そんな所は科学的な要因とかもあるやろうけど思いが作用してることもあんねん。


ヒジュはここが忌み地って言ってたんやけど、ここは楽しい気持ちが集まるパワースポットやねん。

パワースポットではなんでか知らんけど魂の残滓をスキル玉に変換出来るねん、あんな風にな」

竜巻が作ったビー玉らしき物を指差した。


竜巻はビー玉らしき物をまじまじとみたり光源に翳してみたりと調べているとため息を付く。


「スキルは何も発現しそうにないね~5級品だね~」


「スキルは発動せんでもエネルギーとしてはどうなん?」


「エネルギーとしては問題無いよ~密度は問題ないくらいに集まってる~天の岩舟クラスの船でエンジンエネルギーにすると5年位は~軽く持つよ~」


「え?魂ってエネルギーになるんすか」


「そやで、魂って言っても所詮、魔力が集束した上に色んな情報が載った状態が魂やからな」


「へぇー、水に色んなもん混ぜてジュースにしたようなもんっすかね?」


「例えとしては悪いがそれで間違ってないで、水かて流れだけで水車動かせるし、水素だけにしたら立派な可燃性のエネルギーや。

それと同じで魔力で動くもん作ったら立派なエネルギー源や。

ただ今までのエネルギーと違うのが、どんな物質も限りある物なのに対して魔力は生命が作っとるから生命が存在しとる限り枯渇せんちゅう点やな」


「夢のクリーンエネルギーっすか?」


「その分、扱いはムッチャ難いしワイ等ヒュードラかて全貌を明かしてるわけでも無いけどな」

竜巻が魔力の塊を渡してくる。


「ふーん、これがねー」

指で摘まみ魔力の塊を見ていると球体だった物が歪な形に成っているのに気付く。


「あれ?これ球体じゃ無かったか?」

急ぎ竜巻に返す。


「ん~ホントだ~形が変わってる~人の力でどうにかなる物じゃないんだけどね~・・・密度が少し減ってるな~?って事は~花の道が魔力を吸収した~?」


「ほう、さっきのスキル玉のサブスキルやんけサブスキルが発現したか、儲けもんやん。

それに魔力吸収なんてレアスキルやん」


「ふ~ん、一応スキルチェックしてみるね~」

俺の絶望的な胸に手を置き小声で呟き始める。


「何のスキルが発現しているって分かるもんなんですね。

ディーゼレだから?」


「まぁそやなディーゼレやからやな。

魂に干渉して魂の中に有る情報を読み取る事が出来る奴がワイ等ではポテトちゅうねん、地球ではサイコメトリーの事やな。


そのポテトの情報を読み取る能力に加えて魂とスキルを分けて物質化出来るのがディーゼレや。


やからディーゼレは何のスキルが発現しとるか調べるんは朝飯前やねん。


けどなスキルの発現ってちょいと癖があってなー、スキルの情報としては魂がこれが得意、こんな資質が有るって自己主張しているだけやねん。


その情報を読み取って物質化するんやけどな、ここに一つ落とし穴があんねん。


自己主張だけあって実は確実に上手いんか下手くそなんか資質が有る無いはディーゼレが見極めなあかんのや。


たまに居るやろ下手くそな癖に上手って言い張って聞かない奴、あれは魂が得意やでって自己主張しているだけやねん。」


「あはは、マジっすか」


「ハァハァ」

竜巻の息遣いが荒くなり出した。


「竜巻、大丈夫か?」


「だ、大丈夫じゃない~少し休ませて~」

俺から手を離しへたり込む。

未だに息は荒い。


「なんや?、なんかヤバイスキルがでもあったんか?」


「ヤバイなんてものじゃなかったよ~初めて見るスキルが有る~」


「初めて見るスキル?ディーゼレのお前が?」


「うん、ハァ~~~」

体を落ち着かせようとしたのか深い息を吐く。


「なんで竜巻がこんな状態になったんスカ?」

素朴な疑問を口にする。


「あぁ、スキルチェックはいくつかやり方があんねんやけど、最もポピュラーで確実なやり方が自分に相手のスキルを一時的に自分に書き込んでどれ位のレベルなんかを確認する方法やな」


「あーだから俺のスキルが竜巻に書き込まれたから影響が出たって事っすか?」


「恐らくな、で、何のスキルやったんや?」


「言いたくな~い、一応こんなのでも~女の子なので~」


「あー?あっ!あースマン」

明後日の方向を向きながら直に謝った。


「?」


「花の道」

声を掛けながら指先をチョイチョイと前後に動かす。


来いって意味だ。


「んだよ?」

文句を垂れながら竜巻に近づくと腕を首に回され強引に引き寄せられる。

唇と唇が接触する。


「んーーーーーーーーーー」

「ん~~~~~~~~~~」


突然のキスにより奇声なのか悲鳴なのか分からない声を上げながら引き離そうとするが竜巻の力が強い。


竜巻も眉間にしわを寄せ激しい痙攣を起こしながら奇声を上げている。


痙攣が治まるとやっと力が緩み竜巻と離れる。


「いきなりなしてんの!」

文句を言うが竜巻は力無く横たわり聞いて葉いない、放心状態だ。


「あーぁ、こりゃあかん、放心状態やん、花の道お前どんなスキル持っとんたんや?」


「知らないッスよ、自覚無いんッスから」


「しゃーない、このままにしとくわけにもいかん、花の道、竜巻背負って洞窟出ようや」


「んっ待って・・・・・・ぁっ待って~・・・・・今は・・・今は触らないで~」


言葉の度に小刻みに体を震わせながら、力無く上半身を起こす。


鈍い俺でも分かる、竜巻は絶頂してるんだ。

キスをしたときが一番激しい絶頂でその後は敏感になってるから触るなってことか?。


「立てる、立てるから~」

弱々しく立ち上がる。

股間から無色透明の液体が太股を滴り落ちていくのが見えた。


「竜巻、診せるのは医者か?ディーゼレか?」


「両方かな~これは~魂のスキルじゃ~無くて~肉体の~遺伝子のスキルだから~」


「分かった、取りあえず月に帰ろう」

そう言って出口に向かって歩きだした。


竜巻も弱々しく歩きだした。

時折よろけたりしたので手を貸そうとすると睨まれた。



〓地球防衛軍メンバー財政状況〓


荻田 :-1600万ダロル

(竜巻よりスキル玉購入、代金未払)

竜巻 :-1600万ダロル

(隠し資産有り)

花の道:-1600万ダロル


〓地球防衛軍収支〓


-30ダロル

月からタイタンまでの船の燃料費


売り上げ

-30ダロル


ラストフロンティア運営よりバグ解消

25000ダロル(入金予定)


サージェリー科学省より魂の検証レポート提出

5000ダロル(入金予定)


三位一体連合ヒュードラより人工培養肉体を受領予定(無断借用)


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


ここまで読んで頂いてありがとうございます。

4日ごとのペースで更新する意気込みですが、少し遅れ気味です。

誤字、脱字、意味が繋がらない等を発見されましたらコメント、レビューでお願いします。




私事。

新作ゲームのベータテスト恐ろしいですね。

時間が溶ける。

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