第3王子
遠くに青く美しい星が見える。
最近はあの星を見ながらの酒が非常に美味い事に気がついた。
もうすぐあの星が吾の物になる、そう思うと愛おしい限りだ。
吾が母星の半分程の大きさながら気象は様々で、多種族が住まうことが出来るだろう。
これから吾が作る多種族国家に最適な星だ。
まぁ、多種族国家といえど政治の中枢は世界で最も優秀な種族、吾等グーレイが握る。
いや、グーレイの中でも最も尊い血筋の後継者たる王位第3継承権を持つ吾が握る。
吾の国の伝統で爵位、官位を持たぬ者には名が無い、正確には何番目の子としか名乗れぬ。
何時までも第3王子のままでは吾の経歴に傷が付く。
あの星の主になれば地方領主と言うことになる、必然的に最下位ながら爵位を王から賜る事になる、そうなれば名を名乗れる。
兄弟の中で最初の名乗りになる、吾がグーレイの王に成る為の第一歩になろう。
グーレイ王になれなくとも独立してもいい。
どう転んでも吾が王に成ることには変わりはない。
しかし、愛おしい吾の星だが、まだ吾の物では無い。
下等で醜い爬虫類擬きが吾の星を狙ってきおった。
最初は寛大な心を見せ殺処分もせずに見逃してきたのだが、途中からは言葉を話す虫ケラを引っ張り出してきた。
寛大な心を見せるとすぐにこれだ。
次に会ったときは吾の民になるか殺処分かを選ばせなければならん。
民に成ることを選べば寛大な心を見せねばならん。
だが、殺処分にせよ民に成るにせよ吾の手に掛かるのだ泣いて喜ぶだろう。
そんな事よりも問題なのは下等な爬虫類擬きや言葉を話す虫ケラに知恵を与えた者がいる。
第1王子か第2王子はたまた第4王子か。
吾の才能、血筋に嫉妬する下賎なる生まれの者共め。
吾の母は唯一の公爵家出の正室、侯爵家出の側室とでは尊さが違う、そんなことも分からぬ愚か者共め。
それに本来は最も尊き者を支えなければいけない家臣共も他の王子に尻尾を振る姦臣ばかりだ。
吾が王に成った暁にはそれ相応の報いを受らわねばなるまい。
「殿下、少し宜しいですか」
後ろに控えていた執事が声を掛けてくる。
「なんだ?」
思考を邪魔されぶっきら棒に答える。
「第1王子殿下及び第2王子殿下より信書が届いております」
厳重に電子的な封、機械的な封が施された5センチ程の球体を盆に乗せて持ってきた。
うんざりとした気持ちで球体を持ち上げ握りしめる。
瞬時に球体は眼紋、指紋を読み取り封を解除し起動する。
起動したのを確認すると床に放り投げる。
信書が放射線状に光を放ち2体のグーレイを形づくる。
第1王子と第2王子だ。
この2人、王子と言う立場ながら妙に仲が良い。
普通なら殺し合いをするのが当たり前なのに。
2人とも銀色の肌が少し黒ずんでいる。
グーレイが怒りを現す時になる現象だ。
まぁ、口を開かずとも言いたいことが分かる。
先日、第1王子が領主になる予定の星が吹き飛んだ、文字通り惑星が爆発したのだ。
惑星の核を異常な回転速度に上げる装置が使われたらしい。
痛ましい事に200億の人命が失われたらしい。
だが所詮、4級市民や5級市民だ、いくら死のうが替わりはいくらでもいるのだから。
惑星が吹き飛ぶ程の大事なのに犯人はなぜか捕まっていない、不思議な事だ。
まぁ、こいつら2人は吾が犯人だと決めつけて、このような信書を送ってきたのだろう。
「再生」
やはり口を開けば罵詈雑言の嵐だ。
聞くに堪えず、思わず信書を踏みつけてしまった。
憶測で物を言わないで欲しいものだ。
「殿下」
「なんだ?まだあるのか?」
「殿下に拝謁を願う者が来ております」
「誰だ?」
「殿下がお雇いになられた軟体生物で御座います」
「トロイドルか、通せ」
「はっ」
返事と共に執事が下がるとヌチョヌチョと音がし出した。
5メートル程の距離で止まる。
8本の足、体に似合わぬ大きな頭、肌は赤黒くとても知的生命体とは思えぬ生物だ。
「直答を許す」
「有難く、第3王子殿下におかれましてはご機嫌麗しく御座います」
「世辞はよい、報告を申せ」
「はっ、逃亡した被検体7号ですが、逃亡先が計画通りに」
「ほう、どこに逃げた?」
「ヒュードラが確保しました」
「三位一体連合ヒュードラか、サージェリー、クソ鳥が主導する連合だな」
「はっ」
「なら、クソ鳥を滅ぼす爆弾の配達は終了か」
「はっ」
「後は起爆剤を何時仕込むかだな」
「起爆剤も仕込み終えています」
「ほう、完了しているのか」
「はっ」
「流石、トロイドル仕事が速いな」
「有難く」
「起爆はいつ頃か?」
「次のラストフロンティアの定例会合の前後かと」
「任意での起爆は可能か?」
「可能で御座います」
「起爆のタイミングは何時がいい?」
「定例会合の最中が効果的かと」
「ふむ、ではそのように取り計らえ」
「承りました」
「そう言えば、ラストフロンティアの進捗具合はどうだ?」
「ラストフロンティアの方は問題も無く進んでおります。
殿下が直々に傘下に加えられた者が大層な働きをしております。
裏で殿下のシンパを大量に増やしております。
元祖国が相当憎いようで、ありとあらゆる方法で資金を元祖国から引っ張っているようです。
殿下のご慧眼で御座いました」
「国に報告出来ない資金はどうか?」
「そちらの資金の方も理由を付けて引き出せて御座います。
後、2回ほどは同じ理由で引き出せそうで御座います」
「愚民は操りやすいわ。
引退が決まっていた者をわざわざ暗殺に切り替えた。
その指示をしたのが何故に我だと思わぬのか、不思議だ」
「そこまでの知能が無いのでしょう」
2人揃って笑い出す。
(ま、それはお前も一緒なのだがなトロイドル。
何故、お前の祖国が同盟関係だったミールーから突如攻撃され滅ぼされたのか。
何故、ヒュードラの一翼、パカリが後方で通商破壊と称し海賊行為をしだしたのか。
何故、グーレイがミールーの反感を買いながらトロイドルの難民を快くを受け入れたか。
お前らトロイドルはミールー憎し、パカリ憎しで動いているかもしれないが、裏で糸を引いていたのは誰か、最も儲けたのは誰かを考えれない時点でお前達も愚民なのだがな)
「ラストフロンティアの構造は解ったのか?」
「申し訳ございません、そちらは管轄外になりますので、何方がご担当で?」
「誰が担当だ?」
後ろに控えていた執事が遠慮がちに口を開く。
「申し訳ございません、総括は私めで御座います」
大きい目を薄めている、明らかに怯えている。
「構造解析の進捗具合は?」
答えは分かりきってるが聞かねばならぬ。
「デバイス、アバター全ての復元に成功しました」
「それは前回も聞いた、その後の進捗具合を聞きたいのだが?」
「申し訳ございません。
完全にコピー出来ましたが、起動いたしません」
「それも前回聞いたな」
「申し訳ございません、恐らくコアの部分である3センチ四方の紙と模様に何らかの構造が隠されているのでしょうがそれが解りません」
「なぜ、クソ鳥の技術が解明出来ん!。
クソ鳥が吾等グーレイよりも優れているとでもいいたいのか!!」
「殿下、私めがクソ鳥に被検体を流す餌にした海賊・・・申し訳ございません。パカリから調書は取られたのでしょうか?」
トロイドルが強引に話を変えてきた。
恐らく執事を庇っているな。
本来、下位の者が上位の者に質問を投げ掛けたりしない。
「そう言えばその報告は聞いて無いな、どうなのだ?」
「はい、かの海賊を捕らえました直後に尋問をしております。
その海賊によれば機構はフェルガナ製、問題のコアの紙はアリアドネ製としか分からないそうで御座います」
「アリアドネ?聞いた事が御座いません。
執事殿、その海賊からそのアリアドネの情報は得られたのですか?」
「得られませんでした。
その海賊も紙に描かれている幾何学模様がアリアドネと言う事だけしか知らないようでした。
その幾何学模様がアリアドネというのか、個人を指しているのか、会社なのか団体なのか国なのかも分かりませんでした」
「国だ」
「ご存知でしたか、流石殿下、博識で御座います」
「知っている程のものでもない。
アリアドネ魔王魔導国、三位一体連合ヒュードラの構成する3ヶ国の内の1ヶ国、パカリ氏族連合を構成する氏族国としか外交資料には載っていない。
母星は不明、種族構成も人口も国政もどういった経緯で加盟したかも不明、何もかもが不明、この時代にそんな事あり得るのかと思うぐらい不明だ」
「確かに妙な話ですな、自国民である海賊にすら公表していない。
存在を明らかに隠している、それも徹底して。
その様なことが可能なのでしょうか?」
「外交資料にアリアドネの名が登場したのは約40年前、その頃からクソ鳥共の技術が異常に発展しだした。
それまで一進一退の攻防を繰り広げていたのだが、戦場で吾等がグーレイが同数ではまず勝てなくなった。
2倍から3倍近くの戦力差でようやく同等になるほどの技術格差が出来てしまった。
本国もアリアドネに何らかの鍵があるとみて箝口令を引いた」
「その様な存在が在ったとは知りませんでした」
「どうだトロイドル。
其方達がアリアドネの秘密を暴かぬか?
暴ければ他の王子共に差をつけれるし、王位に弾みが付く。
吾が王になればミールーに奪われた其方等の母星を取り戻す事を確約するが?」
「そのお言葉、信じても宜しゅう御座いましょうか?」
「吾に報いてくれた者には必ず報い返す当然の事よな」
「誠心誠意務めさせて頂きまする」
深々と頭を下げる姿を見てほくそ笑む。
(何故、書面に残さん、口約束など何時でも反故に出来るのに。
だから愚民と罵られるのだ)
「宜しく頼むぞ」
「はっ」
勢いよく返事を残して部屋から出て行く。
執事もこれ幸いと部屋から出て行く。
再び愛おしい星を見ながら酒を口に含む。
「愚民は操りやすいわ」
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更新が遅れてしまいました。
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6/3 エピソード大幅変更しました。




