三章の登場人物紹介
三章の登場人物
レリア、十八歳
前章の事件で傭兵の国にやって来た隠里出身の貂の獣人種の少女。
魔導術全般に非常に強い興味を持っておりそのことで時折周りが見えなくなる悪癖がある。
傭兵の国での生活に慣れて余裕が出てきたことで、心残りとなっていた兄の件で自分なりに決着をつけようと奮起して行動を起こした。
ダグラス、三十八歳
傭兵の国のギルド職員。元々はラガンジャ国の出身で代々南方伯に仕える文官の家系だったがダグラスの父親が不正に手を染め一家全員が国外追放となった。この時、南方伯は長く自分のことを支えてくれていた家臣の家系であったため追放という判決を言い渡す時期を調整し、傭兵の国が近くに来ているタイミングで判決を言い渡したのでダグラスは国外追放後に傭兵の国にたどり着くことができた。今もこのことに恩義を感じているので今回の件で南方伯軍とエルフの里の間に戦争が起こらないように尽力することにした。
実は妻子持ち。
サヤ、十歳
魔王の侵攻によって滅んだ開拓村で拾われた孤児で『天眼』が才能を見出したことで弟子入りする形で『近衛衆』に所属することになった。
身体造りの為に食事制限されているので間食などをする習慣が無く食事は腹が満たされれば味はどうでもいいという考えだったが、レリアが作った料理でその価値観が揺さぶられる程の衝撃を受けた。
得意技の『居合』は納刀状態で鞘の内部と刀身に『闘氣』によって形成したベクトルが真逆の力場をそれぞれに纏わせ、鞘の内部でそれらを相殺させながらそれぞれの力場の出力引き上げていき、抜刀と同時に刀身側が纏っている力場を反転させることで剣速を爆発的に加速させる剣技。
サヤはこの技に加えて力場の性質に魔力を霧散させる効果を付与する『魔断』を習得しているので今回の件で魔王と対面した場合の切り札として抜擢された。
姉弟子が二人いて上の方の姉弟子が狐の獣人種でフワフワの大きな尻尾を持っており、レリアもこの姉弟子に近いフワフワで大きめの尻尾を持っていたので比較的簡単に懐いた。
ジャド、三十一歳
使い手が少ない空間系統の魔導術を得意とする。『防人衆』という非戦闘員を狙ってくる魔物を積極的に討伐して周る部隊に所属している。
空間系統の魔導術の中でも空間の位相をズラすことで対象の防御能力を無視してダメージを与える術式を得意とする事から『断空』の通り名で呼ばれるようになった。
本気の戦闘では点位のマーキングを施したナイフを複数投擲し、それらの点位を結んだ直線上の空間の位相をズラすことで相手はナイフを回避したはずなのにぱっさりと切断されているという初見殺しのような戦闘スタイルで闘う。
シキシマ、七十四歳
『朧霞』の通り名で呼ばれる『先触衆』の実力者。
元々は『先触衆』で部隊の長を務めていたが数年前に年齢を理由に引退、現在は後進の育成に励んでいる。
気配を周囲に溶け込ませながら『闘氣』によって作り出した力場で光を屈折させて透明になる技や、一瞬だけ位相が異なる空間に跳ぶことで壁や障害物をすり抜ける奥義を習得している。
一章で登場したシキシマとは祖父と孫の関係。
シャマル、十九歳
おしゃれと噂話が好きなレリアと同期のギルド職員。
一章の魔王の侵攻を機に傭兵の国に加入した。
至って普通の村娘にも関わらず読み書き計算ができるのは、国家間を旅しながら行商を行っていた母親の教育の賜物で、母親は数年前に蔓延した流行り病で既に死亡している。
この母親が常々辺境からの立身出世を目指すなら傭兵の国に行きなさいと言っていたこともあり、魔王の侵攻のどさくさに乗じて家出同然に傭兵の国にやって来た。
おしゃれ好きなのは今まで興味はあったが生活に余裕が無く着飾ることができなかった反動で、噂好きなのは娯楽が殆ど無い開拓村出身だったため。
トリア(トリアーディア)、二十五歳
ギルド長を務める傭兵の国総大将の次女でエルフ種とのハーフの女性。呪術系統以外にも様々な魔導術を使いこなせるので戦闘力は極めて高いが立場上あまり前線に立つことは無い。
兄弟の殆どが戦闘狂や自由人ばかりの中、生真面目な性格なのでよく貧乏くじを引くことになっている。
なお本編中では一切描写されていないが、レリア達が出発した後に逃亡したフウを捕獲してラガンジャ国側の問題解決の為にしっかりとこき使っている。
セイジ、二十九歳
前の章から引き続き暗躍していた傭兵の国総大将の長男。裏に潜んでいる魔王を確実に仕留めるために入念な準備をして、魔王に最後の最後まで存在を悟られないように慎重に行動していた。
そのせいもあってレリア視点からでは存在の片鱗すら見えてなかったが、レリア自身は以前の「魔王は私が仕留めます」という発言からエルフの里の何処かにはいるはずと確信していた。
トリアと同じ母親から生まれているのでトリアと同様にシゲンの孫という立場だが、子供の頃から少し擦れている部分があったためシゲンの琴線には触れなかった。
シロ、二十代中半
セイジの姉がどこかからから拾ってきた孤児で本人も拾われる前の記憶を無くしていたので正確な年齢は不明。
傭兵の国の上澄み集団である『近衛衆』の筆頭で『天眼』という通り名がつけられている。
アルビノで虚弱体質だったが己を鍛えた結果、『闘氣』と『獣氣』を高い精度でコントロールできるようになり細マッチョの健康体になった。
サヤを含めた三人の弟子を育てている。
キキョウ、五十五歳
鬼人種と呼ばれる希少種族の女性で傭兵の国総大将の妻の一人。
鬼人種は人間種と比べて高身長で筋骨隆々になりやすい種族的特徴を持っており、キキョウもその特徴にもれず高身長で筋骨隆々の体格をしている。
一見するとゴツい体格でガサツそうに見えるがその立ち振る舞いや雰囲気にどこか優雅さがにじみ出ている。
戦闘能力を持たない一般的人や女性、子供が食い物にされないように気を配っており、傭兵の国総大将の妻という立場もあって表立って逆らおうとする馬鹿はいないので周囲からはないかと頼りにさせている。
なお、傭兵の国の総大将はそんなキキョウが見上げなければならないほどの体格で、彼の前でだけは自分も守られる存在でいられるので二人っきりの時は未だに恋する乙女のようになってしまう一面がある。
エルフの里の登場人物
シゲン、二百四十六歳
エルフの里の長の一人で今で原種のエルフに近い性質を色濃く引き継いでいる古い世代のエルフ。
シゲンよりも古い世代のエルフは皆森へと還ってしまったので、エルフの里に残っている古い世代のエルフはカスケードとシゲンしか残っていない。
セイジやトリアの祖父で外界からの来客に寛容な考えを持つエルフの派閥のトップでもある。
少しずつ感情の起伏がなくなり森へと還りかけていた所に、最後の挨拶にとまだ幼かった孫のトリアを連れて娘が帰って来た時に純真無垢だった幼少期のトリアを見たことで激しく感情が揺さぶられ、それ以降その時のトリアの姿が想起される度に森還りキャンセルが発生するようになった。
ゼイノビ、六十七歳
シゲンから見て子世代のエルフで人間種との混血化が進んだ新しい世代のエルフの女戦士。
両親がシゲンと同じ外界との交流を制限すべきでは無いと考えている派閥に所属しており、そんな家庭環境で生きてきたこともあって自然とシゲン派閥の考えがしっくりくるようになった。
長くひたむきに訓練を続けきたので戦闘能力はそれなりに高いが、比較的平和なエルフの里から出た事が殆ど無いのて実戦経験がやや乏しい。
カスケード、二百三十四歳
シゲンと同年代の古い世代のエルフ。
人一倍責任感が強く自分達に課せられた責務に真摯であろうという考えから、ラガンジャ国の王族の血筋に自分達の血統を混ぜることで国を乗っ取ろうと暗躍していた。
魔王かそれに近しい存在がこの動きに乗じて暗躍していることにうっすらと気がついていたが、自分達ならそれすら利用して最後には勝てると自惚れていた。
これは星零樹の御膝元で魔王が好き勝手に動けるはずはないと星零樹の力を過信していたからで、今回の事件の裏にいた魔王が暗躍に特化していた魔王であった為見事に裏を掛かれてしまった。
なお、カスケードは感情の起伏が激しくなる薬を常飲することで無理矢理森還りを遅らせている。
ジェスター、五十九歳
カスケードの息子でゼイノビと同様に新しい世代のエルフ。
ゼイノビとは恋仲であったが父親であるカスケードの命令でナイーダを口説くことになった。
美形が多いエルフの中でも上澄みのイケメンエルフで、恋仲のゼイノビと同じ時間を過ごす内にシゲン派閥の考え方に共感を持つようになった。
ラガンジャ国の登場人物
ナイーダ、十五歳
ラガンジャ国の王族の血を引く令嬢で具体的には現国王の弟の孫にあたる。
王家の血筋は国を覆う結界の維持のために絶やすことができない存在なので、本家の血筋が途絶えてしまったときのスペアとしてある程度本家に近しい分家の血筋を残さなければならない。
ナイーダが南方伯領に来ていたのもその一環で南方伯の息子とのお見合いに来ていた。
通常なら南方伯の息子を王都に呼ぶのだがナイーダが刺激的な非日常の体験がしたいと我儘を言い南方伯領に自分が会いに行くことになったのだが、分家の血筋を邪魔に思う勢力とエルフの里に侵攻して土地を奪いたい南方伯の思惑が合致した結果誘拐事件につながった。
この時ラガンジャ国内部の勢力だけで狂言誘拐をして犯人をエルフの里に偽装する手筈だったが、魔王の手引きで本当にエルフの里のカスケード一派がナイーダを誘拐してしまったので事態が複雑化した。
ナイーダ本人はイケメンに弱い面食いでいつか強くてイケメンな男性が自分を刺激的な世界に連れて行ってくれると妄想している。
南方伯
本篇未登場。
本作品の為政者にしては珍しい民の幸福を本気で願っているまともな貴族。
ラガンジャ国の南方伯領を収めており民が住みやすい政策を行っているため領民が増え続けているが、その陰で南方伯領から溢れて開拓村に押しやられている民衆がいることに心を痛めており、そんな人々に安住の地を与えられないかと悩でいた所に側近から色々と吹き込まれ、エルフの里に侵攻すれば安住の地を得られるという考えに至った。
その他の登場人物
忍び寄る悪夢の魔王
前章から引き続き敵役となった魔王。
前章では強者感を出していたが実は戦闘能力が魔王の中でも最弱クラスの魔王だった。
しかし、魔王であることには変わりないので一部の強さの次元がおかしい領域にまで至った者達以外には脅威でしかない。
魔王は今回の作戦に長い時間を費やして準備を進めており、七日目ー1で見学したエルフの里の魔導術の触媒を作り出している施設のエルフを一番初めに支配下に置いていた。
その後、細工を施した魔導術の触媒をエルフの里全域に普及させ徐々に支配下に置いたエルフを増やしていった。
この細工を施した魔導術の触媒はナイーダに仕込んだレンズとは違い影響力を極限まで削って探知されないことに特化させた物で、最低でも十年以上は所持し続けなければ影響を与えられないような代物であった。
だか、それだけ時間を掛けて準備しただけあって最後まで星零樹から探知されることは無かった。
なお、ナイーダに仕込んだレンズは怪しまれず探知されづらく短期間で支配下に置くことができる自信作だったが、大量に量産してその存在がバレてしまえば計画が水の泡になりかねないのでこの作戦が成功するまでは大量生産は行わない方針だった。
具体的にはナイーダに仕込んだ物の他にスペアを一組だけしかエルフの里には持ち込んでおらず、スペアの方は支配下に置いたカスケード一派の一人に持たせていた。
スペアはレンズの存在が露見してからカスケードに速攻で押さえられてしまったので、簡単に取り返せそうなレリアが持ち出したレンズを取り返そうと自ら動いた。
ちなみに、このレンズはラガンジャ国内部にもいくつかばら撒いており、南方伯の側近の数人は支配下に置いている。
南方伯がエルフの里に侵攻しようも考え始めたのも、実は魔王が側近を操って思考を誘導した結果だったりする。
この章は構想段階ではラガンジャ国の勢力も介入してきて三つ巴の抗争になる予定だったのですが、話が膨らみ過ぎるのと書いていて中弛みしてきた感覚があったので、方針転換してラガンジャ国側の登場キャラクターを大幅にカットしました。
そのせいでサヤ、ジャド、シキシマの活躍描写やエルフの里側のキャラクターの掘り下げが殆どできない展開になってしまいました。
自分の実力不足を痛感するばかりです。
次回からは気を取り直して四章に入って行きます。




