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傭兵の国群像記  作者: 根の谷行
レリア編
53/105

事件の収束

「とにかく、あの魔王に関してはレリアさんが何かを心配する必要はありませんよ。念のために仕込みもしておきましたし。」

「仕込み?」

「はい。戦闘中に月の光に魔力を祓う効果を付与したとか語っていたやつですよ。ああ言っておけばもし生きていたとしても新月の日に動こうとするでしょ?だから次の新月の日に広域魔力探知術式を発動させて炙り出そうかと。」

「なるほど…じゃあ、さっきの戦闘中に話していたのは…。」

「もちろん仕込みのためですよ。戦闘中に敵に語る言葉なんて相手の裏をかくための攻撃の一種みたいなものです。」


 ただ知識を語りたいからやっていた余裕の表れのようなものだと思っていたのですが、ちゃんと理由があってのことだったようです。

 流石は戦闘職の中でも魔王を相手にできる程の強者といったところでしょう。


「それにしても見事なものです。結果的に私が長年にわたり追っていた魔王に致命傷を与えるきっかけを作ってくれんたんですから。個人的に何かお礼をしたいぐらいです。」

「お礼ですか?…いえ、そんなものを貰うわけにはいきません。こちらは危ないところを助けて頂いたわけですから、むしろお礼をするのは私に方だと思います。」

「私がお礼したい気分なんですよ。何か無いですか?こう見えても私は多方面に顔が効きますから色々なことに応えられると思いますよ。例えば……見たところのギルド職員に就職したみたいですし、レリアさんを上級職員に取り立てるようにトリアーディアに一筆したためることもできますよ。」


 思わぬところで出世の糸口が転がってきました。ですがそんなことよりも私が気になったのは『トリアーディア』という名前です。話の流れからしておそらくギルド長のトリア様のことだと思うのですが…。


「『トリアーディア』というのは…トリア様のことですよね?」


 好奇心で聞き返した私の言葉にセイジさんが一瞬固まりました。


「………その名前は忘れて下さい。」


 聞いてほしくいない情報をうっかり喋ってしまったみたいな反応が帰ってきました。

 長年追っていた魔王をついに討伐できた喜びからうっかり口が滑ってしまったのかもしれません。


「忘れた方がいい理由が何かあるんですか?」

「それは……その…。」

「せっかくですから先程のお礼というのを頂こうかと思います。詳しく話してください。」


 私としてはセイジさんに助けてもらった身で変にお礼なんて貰えないのでここで、適当にお願いをしてしまおうという程度の意図だったのですが思いのほか触れてほしくない話題だったようです。


「レリアさん…あの魔王を出し抜いただけあっていい性格をしていますね…。仕方がありません。話しましょう。お察しの通りトリアーディアとういのはギルド長の本名です。あの子は職業柄特殊な魔導術を使うのでその対策としてトリアと名乗っているんですよ。」

「特殊な魔導術というのは…『制約』のことですか?」

「察しがいいですね。制約は呪術系統の魔導術ですから呪い返しというリスクがあるんです。」

「『呪い返し』…ですか。偽名を名乗ることでそれを防げるということですか?」

「正確には名前の一部だけしか相手に教えていないだけで偽名を名乗っている訳ではないんですけどね。呪い返しは制約などの相手に与えている呪を掛けた相手に反射させる魔導術なんですが、返えす先が明確であればある程強力な形で返せます。例えば極端な話、あの子の本当の名前を知っている私が本気でレリアさんに掛けてある制約をあの子に返すと、最低でもあの子から声を奪うぐらいの呪は返せてしいます。だからあの子は名前の一部だけを相手に教えて制約をかける掛けることで、呪が返って来る先を曖昧にしてリスクを減らしていというわけです。」

「なるほど…。」


『制約』などの魔導術はとても便利な魔導術なので何か弱点や落とし穴みたいなものがあるんじゃないかと思っていましたが、やはり大きなリスクがあったようです。


「ですので、あの子の本名を言いふらすなどの軽率な行動は控えて下さいね。最悪の場合、少々強引な手段でレリアさんの記憶を飛ばさなければならなくなるかもしれません。」

「それは遠慮したいですね……元から別に言いふらす気なんてないですけど。」


 結果的に思わぬところでトリア様の秘密の一端を知ってしまいました。

 それにしても、実は密かにレリアとトリアで名前が近いから親近感のようなものを感じていたのですが、本名がトリアーディアならそんなに近くはなかったみたいです。

 そんな話をしている内に、森のざわめきが収まり始め、森に静けさが戻りました。


「星零樹殿も戦闘態勢を解いたみたいですね。戦場全域から魔力が消えたということでしょう。私達も一度皆さんの元に戻りましょうか。」

「待って下さい。何処かに魔王の足止めをしてくれていたサヤという子がいるはずです。もしかしたら動けなくなっているかもしれません。戻るなら合流してからにしたいんですが…。」

「そうでしたか…では、迎えに行きましょう。」

「サヤさんの居場所がわかるんですか?」

「私は知りませんが、星零樹殿ならわかるはずです。ですので星零樹殿に導いてもらえば合流出来るはずです。……向こうみたいですね。行きましょう。」


 魔王はサヤさんを殺してはいないようですが、怪我をして動けなくなっている可能性とあります。

 私はサヤさんの無事を祈りながらスタスタと歩き出したセイジさんを追いかけました。




 魔王から逃げている時はかなりの距離を走ったと思っていたのですが、実際はそうでもなかったのか【星零樹】様が気を利かせてくれたのかわかりませんが案外あっさりとサヤさんと別れた場所まで戻って来れました。

 サヤさんは別れた場所の近くにある大きな木の根元で、何処か呆然とした様子で膝を抱えていました。

 ですが、戻って来た私の姿に気がつくとその場から一瞬で消えてしまいました。

 何処に行ったんだろう?と思う間もなく腰の辺りから軽い衝撃を感じ、視線を下げるとサヤさんが私の腰にギュッと抱きついていました。


「無事で良かった。」


 どうやら随分と心配を掛けてしまっていたようです。

 見たところサヤさんは細かなかすり傷をいくつかしてはいるようですが、大きな怪我はしていないようでした。


「はい。サヤさんが時間を稼いでくれたから逆転の一手が打てました。ありがとうございます。」

「…逆転の一手?」


 無事に合流できたので、私はサヤさんと別れた後の魔王との対峙とその結末を話しながら互いに面識が無いはずのセイジさんを紹介します。


「といことがあってこちらのセイジさんに助けてもらい魔王を倒すことに成功しました。」

「…セイジ様…総大将様の長男であさせられるあのセイジ様ですか?」

「私を知っているんですか?見たところまだ若い方なのに何処で私の話を聞いたのでしょう?」

「…お師匠様…『天眼』のハクから貴方様の事を聞きました。」

「………ハク……もしかして…かなり前に姉上が拾って来たあの子かな?私の事を知っていそうな傭兵の国の古参メンバーでハクという名前なのはあの子ぐらいにしか思い当たらないし……。」

「…お師匠様が自分でも勝てるかどうかわからない相手として名前を挙げた数人の内の一人に貴方様の名前がありました。」

「私が傭兵の国を出た時はまだ姉上にべったりだったあのハク君が随分と力をつけたみたいですね。……魔王の件も片がつきそうですし、一度里帰りするのも面白いかもしれません。」

「あの〜サヤさんとも無事に合流できましたし、募る話は他の皆さんの元に戻ってからにしませんか?」


 以外なことにサヤさんはセイジさんの事を知っていたようですが、ここでいつまでも立ち話をしているわけにはいきません。

 ダグラス先輩達にも私達が無事であることを早く知らせたいですし、結局カスケード一派とナイーダ嬢がどうなったのかなどの居残り組の現状がどうなっているかもわかりません。


「そうですね。話している間に転移術式を構築しておいたのでさっさと跳んで合流してしまいましょう。」


 セイジさんは雑談しながらも変える手段の準備をしっかりしていたようなので、セイジさんの術式で転移して残りの皆さんとも合流することにしました。




 転移によって跳んだ場所は私が魔王の触媒であつレンズを送った場所と同じで場所で皆さんが集まっていました。


「レリア君、無事だったようだね。セイジ殿が向かってくれたから希望はあると思ってはいたが……本当に無事でよかった。」

「はい。ダグラス先輩がセイジさんを連れて来てくれたおかげで魔王に逆転の一手をしかけることができました。」

「レリア君が出発前にセイジ殿が情報を求めて接触してくるだろうから状況説明をして切り札になってもらうようにと言い残していたから対応できたよ。この場所で守りを固めて待機しているとレリア君の読み通りセイジ殿が情報を求めて接触したきたからね。」


 ダグラス先輩とお互いの無事を確認し合ったところで、ダグラス先輩達側の状況を聞くことにします。


「こちらはエルフの里側の人達は別だが、被害らしい被害は出ていない。レリア君達が出発してからすぐにシゲン殿がカスケード殿の元へ話をしに行ったので迅速に防備を固める事ができた。」

「よくすんなりと協力態勢に入れましたね。カスケード一派との間で問題は起こらなかったんですか?」

「そこはやはり【星零樹】様が動いた事が大きかったみたいだよ。エルフの里では派閥間の争いよりも【星零樹】様の敵を討つ事が優先されるという絶対のルールがあるみたいだから。」


 信仰の対象でもある【星零樹】様が魔王と闘おうとしているのにその使徒であるエルフの方々個人的な思想の違いで争って協力できないというような醜態を晒すわけにはいかなかったということでしょう。


「カスケード一派はナイーダ嬢の件からは手を引いたという認識で良いんでしょうか?」

「流石にここまで魔王に付け込まれていた作戦を継続するのはないだろうと思う。」


 話をしていると私達が戻って来たと知ってかシゲン様とカスケード殿が連れ立って部屋に入ってきました。


「レリア嬢もサヤ嬢も無事じゃったようじゃな。……ほれ、カスケード皆に言うことがあるじゃろ?」

「ぐっ……今回の件では傭兵の国の方々に大変な迷惑をかけてしまった。どうやら我々は大義を成すために急ぎ過ぎてしまったようだ。申し訳ないことをした。」


 なんとカスケード殿が直々に頭を下げてきました。

 この様子だと今回の件でこれ以上ナイーダ嬢を利用する気は無さそうです。

 つまり任務を遂行する上での障害は全てなくたったということになります。

 エルフの里の方々にはそれなりの被害が出ているようですが、これにて一件落着という結果になったようです。

三章は後はエピローグを残すのみで、これにて終幕となります。

前の話(八日目ー4)が描写不足だった部分があったと思うので、少し加筆修正しています。

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