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傭兵の国群像記  作者: 根の谷行
レリア編
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傭兵の国の日常

 今日もようやく少し慣れ始めたテントの中で目を覚まします。私が傭兵の国に来てからそろそろ一月程経ちました。

 今私がいる場所は傭兵の国の女性達が集まって寝起きする場所の一角です。

 私は魔導術を多少使えますが傭兵の国で闘っていたいくには実力が無さすぎると言える程度の力しかありません。

 傭兵の国には私のように戦闘能力が低い人は一定数います。そうなると当然、弱者を食い物にして利益を得ようとする輩が現れます。

 基本的に弱肉強食がルールの傭兵の国ですが、意外なことにこの手の輩はあまりはびこることはありません。というか、できないみたいです。

 理由は単純に弱者を食い物する程度の中途半端に強いような人達が好き勝手することをその人たちより強い人達が許さないからです。

 本当に強い人達は弱者を食い物にしなくても自分で力を振るった方が簡単に大金を稼げます。そんな人達からすると、自分達より弱いやつが調子に乗って楽をしながらボチボチ稼いでいるのを見るとムカついて潰したくなるらしいです。

 とはいえ、来る者拒まずというスタンスの傭兵の国は常に色々な人が増えたり減ったりを繰り返しているので悪いことを考える人達がいなくなることはありません。

 なので、そんな人達から身を守る為に力が無い人達がお互い助け合う互助会が存在します。それは女子衆と呼ばれる組織で私も現在お世話になっています。


「レリア~もう起きてる~?」


 テントの外から声が聞こえた。この声は傭兵の国に来てからできた友達のシャマルだ。


「おはよう~起きてるよ。」

「おっ、寝坊しなかったか。最近は働き詰めだったから心配だったんだけど、しっかり起きれたみたいで感心感心。」


 戦闘能力に自信がない私は戦闘員として活躍するのは難しいと考え、別の方法でお金を稼ぐことにしました。戦闘員以外の仕事を探して色々あった結果、私は最終的にギルド職員に就職することになりました。

 シャマルもギルド職員に就職していて私とは同期の関係になります。

 今日は私もシャマルもギルドの仕事がお休みで一緒に遊びに行く約束をしていました。


「ずいぶん早いね。私、今から準備するとこだよ。」

「寝坊してないか確認しただけで、あたしも今から準備するとこ。」


 どうやらシャマルもまだ準備をしていなかったらしい。




 手早く準備を終えてシャマルと出かけようとしているとなにやら人集りができてました。


「レリア、あの人集りはなんだろう?」

「ん~…あっ、キキョウ様がいるみたい。微かに声が聞こえたよ。」

「えっ!キキョウ様!挨拶して行こうよ。」

「うん、賛成。」


 キキョウ様は女子衆の代表をしてくれている御方で面倒見が良く、傭兵の国に来たばかりで右も左も分からない状態だった私を色々と助けてくれました。

 鬼人種という希少種族の女性で、その種族の特徴から女性でありながら非常に体格が良く高い身長と鍛えられた見事な筋肉を持ち、それでありながら女性らしい美しさを合わせて持つ魅力的な人だ。

 御挨拶させて貰おうと近づくとキキョウ様と周囲にいる方が話している内容が聞こえてきました。


「昨日の晩は少し騒がしかったみたいだね。すぐに騒ぎも収まったみたいだったから様子は見に行かなったかけど何かあったのかい?」

「自制が利かなくなった馬鹿が潜り込もうとしてたのでシメときました。」

「そうかい。どこの誰だかは押さえてあるんだろ?もうこりたと思うが一応ウチの方からも釘をさしておこうかね。」

「御手数おかけします、姉さん。」


 私達が普段寝泊まりをしているテントはキキョウ様のテントの周辺に設営させてもらっており、キキョウ様を慕う強者の女性達が私達のテントを一定距離で囲むように設営されています。

 こうすることで夜中に私達を狙って忍び寄って来る良からぬ事を考えている輩が侵入して来るのを防いてもらっています。

 キキョウ様は見た目通りの実力者なのですが、それに加えてこの傭兵の国の総大将様の奥さんの一人なのでその発言力は傭兵の国でも屈指のものになります。

 そんな人から釘をさされたならその人はもう良からぬことはできないでしょう。


「姉さん、今日の水行の予定時間と警備体制についての確認なんですけど…」

「ああ、昼間過ぎからの予定だったね。警備は……」


 傭兵の国は普段は基本的に昼に休憩は挟むものの日が昇って日が沈むまで移動し、夜になるまでに周辺に住んでいる魔物などを狩って安全を確保しつつ晩御飯や寝る休む為の準備をする生活ですが、大きな川の近くまで移動できたので今日は移動はせずに溜まった洗濯物や水浴びなどができる休養日になっています。

 キキョウ様が話した通り、昼過ぎからは女性達が集まって集団で水浴びや洗濯をする時間になっているので、どうやら今はその打ち合わせなどで忙しいみたいです。

 シャマルと顔を見合わせて、邪魔をしては悪いので挨拶は諦めようと意思疎通していると、視界の端に気配を消した女の子が少し遠くの方からキキョウ様を見ているのが目に入りました。


「シャマル、あれって……」

「あれ?…あっ、ライカ様だ。キキョウ様に会いに来たのかな?」


 ライカ様はキキョウ様の娘さんの一人でたまにこうしてキキョウ様に会いに来る女の子です。

 話しかければいいのに遠くで見ながらモジモジしているだけの様子を見て、シャマルが何か思いついたような顔をしてライカ様に話しかけに行きました。


「ライカ様、ちょっとお願いがあるんですけど……」

「ん?お前は…ギルドの新人のシャマルだったか?ライカに何かようか?」

「はい。実はあたしキキョウ様に相談したいことがあるんですけど……人だかりが多すぎて気後れしちゃって……」

「母様に用があるのか!困っている人を見捨てるのは良くない。仕方がないな!ライカが母様に顔繋ぎしてやろう!」


 ライカは笑みを浮かべるとシャマルの腕を引きながら人だかりをグイグイと進んで行きました。

 忙しそうにしているキキョウ様に遠慮して声をかけるのをためらっているのを見越してシャマルが一肌脱ぐことにしたようです。

 私は慌ててシャマルとライカ様を追いかけました。




 キキョウ様に御挨拶した後、私とシャマルは予定通り商人達がテントを構えている一画に遊びに来ました。

 今日はギルドから給料が支払われてから初めての休みで懐具合も暖かいので生活用品に加えてずっと欲しかった魔導術に関する物品を買い漁ることができます。

 お互いに興味が惹かれる物が違うものでシャマルとは別れて商店を見て回ることになりました。


「すみません。ここに魔導術関連の道具や書物はありますか?」

「お嬢さんは確かギルドの新人さんだったね。うちは戦士職の人達をメインターゲットにしている店だからね。そういうのはあまり置いてないんだ。三軒隣のテントのゲント爺さんがその手の物品を幅広く集めているから尋ねてみるといい。」

「ありがとうございます。それにしても私のことをよく知っていましたね。」

「商人は情報が命だからね。顧客になりそうな人のことを知っておくのは当たり前さ。」


 隠れ里に住んでいた時は集落に商店なんてものは無かったので商人という人達にはあまりなじみが無かったのですが、傭兵の国に来てからギルドの職員になったことで色々な人達と関わることになりました。

 ギルトの先輩職員からは「商人の連中は信用しすぎるな」と言われましたが流石にこの情報は信用していいでしょう。

 言われた通りに三軒隣のテントを訪ねてみると目つきが鋭いお爺さんが商店を構えていました。この人がゲントさんなのでしょう。


「すみません。ここは魔導術」に関する物品が充実していると聞いてきたんですけど……」

「ん?お前さんはギルドの新人職員になった嬢ちゃんだな。戦闘職でもないのに魔導術に興味があるのか?」

「はい!私、魔導術の勉強するのが趣味なんです!」

「実戦で使う予定も無いのにわざわざ勉強しようなんてそれは珍しい趣味だな。まぁ、うちの商品に興味があるなら立派なお客さんだな。どんなのが欲しいんだ?」

「魔導書とか触媒とか……とりあえず片っ端から見たいです!」

「おぉう……そうか。ならこんなのはどうだ?」


 ゲントさんが取り出してきた物品はどれも素晴らしく私は夢のような時間を過ごしました。




 限られた予算の中で値段交渉を懸命に行い、ホクホク顔で手に入れた物品を確認していると別行動をしていたシャマルが合流してきました。


「レリアも満足する買い物ができたみたいね。」

「あっ!シャマル、そうなんだよ。凄いんだよこれ。なんと魔道国家アンセンブルで最近発売されたばかりの魔道についての理論書なんだよ!魔道術の最新の研究について学べるなんて夢みたいだよ!」

「何それ?レリア、あなたもしかしてその手の物に今回の予算全部つぎ込んだの?」

「そうだけど?」

「か~~、あなたねぇ……せっかく花ざかりの乙女なんだからもっとトキメク物に興味を持ちなさいよ。」

「私はにとってはこれが一番とトキメク物なんだよ。そういうシャマルは何を買ったの?」

「あたしはコレよ!」


 どこか自慢げにシャマルが見せてきたのはどうやら化粧品のようでした。


「見てよコレ!いい色の口紅でしょ。他にも肌に浸透してぴちぴちにしてくれる乳液ともあるんだから!」

「へぇ~。それは良いものだね。」

「なに全く興味ありませんみたいな声で返事してるのよ。私達は若い内に将来有望そうな人を捕まえとかないと将来大変なんだからね。」


 シャマルは今から将来を見据えて色々考えているみたいだ。私は今のところそんな未来のことまで考えることはできないので、この件に関してはシャマルのことを素直に凄いと思います。

 話をしている内にお昼の時間になりました。


「いけない。シャマル、そろそろ戻って水浴びと洗濯の準備をしないと遅れちゃうよ。」

「水浴びできる機会は逃せないからね。急いで戻ろう。」


 私はシャマルと一緒に急いテントに戻りました。





新章に入ったので新キャラがドンドン出てきます。

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