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ツルナと幽霊先生

 幽霊先生は、今日もぽつんと廊下の見回りをしていた。


寂しいときもあるが、

みんなが気にかけてくれるから頑張れるのだ。


この身体ではどうにもならないからお給料の代わりにと、生徒や同僚によって常に机には山になったご飯とか、おはぎとかをおいてもらう。

それらはうまく食べられないときがあるが、冷たいお水だけは飲めた。


放課後の見回りは先生の日課であり、地縛霊としての使命だった。


「生徒さん、残っていませんか?」


声をかけながら廊下を歩いていく。


「生徒さん」


今日も、みんな帰宅したらしいと思って、彼女は一息ついた。


「ふぅ、疲れてしまいますね……痛覚はないはず、なのですが」

「痛覚、か」


(生身だったときの私は、あの日痛みをかんじたでしょうか……)


なんだか、少しぞわぞわとした、むず痒さがある。ため息を堪えて廊下を進んでいると、職員室に呼び出しがあった。


 結界を常に保つ点検もしていた彼女は、結界への異変があると職員室のでんわがなるようにしていたのを思い出して慌てた。


「あらあら、いかなくちゃ」


走らないように、すいーっとすべりつつ移動する。途中、どんと何かにぶつかった。


「ふえ?」


目をぱちくりさせていると、ごめんなさいっ、と目の前の塊が謝った。


「その声、ツルナさんね」


 ツルナさんは、いわゆる先祖返りしたタイプの子だ。

純血だったおじいさまの血をひいているのだとか。

今のご両親の直系であるカーユさんとは違うために互いに肩身のせまい思いをしたらしい。

「昔はあの家の子じゃないかもしれないと、とても不安がっていた。

けど、この学園に来て、私は私で、姉さんや兄さんは、それぞれなんだって、優劣なんてないんだって、改めて思いました」

 おずおずと、そう話してくれたことがある。


直系じゃないから跡取りにもなれないし、もう、純血をいかすしか道がない、と思ったと。

「こ、こんにちは。あの、メイルを見ませんでした?」


「メイルさんですか……さぁ」


「ありがとうございます、失礼します」



どこにいったんだろう、と明るくかけていく姿は、なんだか元気がもらえる気がして、彼女は、よし、と気合いを入れ直した。


「見かけたら、声をかけますねー!」







一方、体育館では、メイルが床に倒れていた。


「す、少し休憩」


「もうへばっているのか」

 対戦相手はロデナリークロード。

不思議な男の子だが、この日、

勇気を出して、放課後に手合わせしたいというとなぜだか承諾してくれた。

 今日はちょうど、彼の見回りはない日で、メイルもバイトは無かった。体育館には人避けの結界を張ってある。


「思っているより、やるのね」


「お前こそ、数秒で終わる予定が、二時間ものびちまった……」


互いに疲れを表しているが、寝そべったのは、メイルのみで、ロデナリークは膝を立てて離れた場所に座っている。

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