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決起する

「花たちが、どんどん枯れて言ってしまう」


変わり果てていく町。


人や、土地がこのままではストックフィリアに占拠されていくばかり。

私たちは、悲しんでいた。

ある日、私たちの前に、それ、は現れた。


「良い方法があるよん」


「え?」


それは、きれいな顔をした銀色の、少女だった。気がする。水色かもしれないが。


「ぶっ壊せばいいんだよ。花たちの価値を落とす」

価値?


私たちの価値。

それを落とすとはどういうことだろうかと最初は思ったが、単純なことである。


社会には不必要な存在だ、と、知らしめることにより、それを使用するストックフィリアもまた、有害と見なされる。


「……わざわざ、価値を落としにいくのね」


私たちは、机を囲んでおとなしく座ってはいたものの、心は跳ね上がっていた。


「差別は助長されませんか?」

ひときわおとなしい、薄い紫の長髪を束ねた女性が挙手をする。


「いいえ。

純血はまだ、一定数いる。わたしたちがするのは、ストックフィリアとの思想の違いを明確にして切り離すことだけよ」


 私はあまり知らないが『思想の混同』は、前々から議題に上がっていたようだった。


普通の人間同士なくせにと斜めに見た思想による私たちの偏見が近頃差別をさらに増やしているのだ。


「特に危険度のある、純血クラスから……

そうね、フィルローグかしら」


フィルローグ婦人は、がたりと立ち上がり、不安そうに震えた。


「価値だと言っても! 自らにどうにかするものじゃ」


わなわなと震えている

フィルローグ婦人。

価値を下げたら簡単に戻るという確信はなかったのだ。


ある人、は人差し指を振りながらにっこり微笑んだ。


「能力値グラフを見たでしょ? フィルさんの方が高いことはすでに出ていましたよん。

相手が法外な手を使うことがない限りは

たいしたことはありません。


価値を落とす、ところで巻き返すことは普通に出来るでしょうし勝率はかなり高い」


確かに。グラフを見る限り相手が反則技を使わない限りにおいては、ほぼ勝ちが確定しているようなもの。

特に名声に傷がつきはしない感じだ。


「使った場合は」


「締め上げればいいじゃないですか。犯罪者は」



「疑うわけではありませぬが。万一があっては」


  が挙手する。


「いいえフィルはそこらのクローンには負けませんわよ」

 価値というのはあげることは難しくても、下げるのは簡単だ。

悪口を言いたがる人物はもとより多く、差別ももともと多い。

お前は醜い、劣ると、クローンの家族からそれしか聞かされずそだつケースもある。


その流れに、こちらも逆らわないというのは容易いものだ。




「……みたいなことを言っておけば、うまく騙せるわ」

銀色の髪の少女は微笑んだ。


このお話はふぃくしょんです。のテロップが、スクリーンにでかでかと表示される。


「舞台裏なんか絶対描かれないんだからねん!」


フィルローグ婦人は、なんとも言えない表情を浮かべる。


「確かに、記者がうっとうしいですから納得されそうなことを言っておけば、追求はされないでしょうけど……」


直接頭を下げにも来ないんだから、語る必要がないという意見はもっともだ。


「で、本日の議題は」

 言いかけたところで急な放送が鳴り、私たちは会議どころではなくなった。


    は、きらきらした目をこちらに向けて、諸君、と言った。



「私たちは誰にも得られない物語のなかに生きているよ。


売り物が霞むような、ね。

可愛い子たちを、絶対にネタになどさせないさ。



我々の宝物として、


それは、存在すればいいものだからねん」




誰もネタにできない。

私たち、それもまた物語。

それはある意味の勝利。

報酬のようなものである。

だから、何も言わずに、鍵をかけてしまうのだ。


「はい、承知しております♪」


さぁ


――霞むような毎日を!

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