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今まで食べたいちばん美味いラーメン

作者: 菊田よしお

うまいラーメンの話

あなたがこれまで食べたラーメンでいちばん美味いラーメンはどれですか?


人間の味覚というやつは実に鋭敏で、美味い、不味いという二つのみを判別するだけの道具では無い。甘い、辛い、苦い、酸っぱい、という感覚を感じ取り、さらに嗅覚と合わさって様々な味を脳に伝える。

味覚障害などでなければ、もしくは器官自体が物理的に欠損していなければ、人はあらゆる味を味わう事が出来る。


そしてラーメン。

ブームを繰り返し、多種多様に発展、地域によっても差が生まれ無数のラーメンが我々の世界には存在する。

中国生まれの麺料理が日本の地で発展し、今では日本人のソウルフードといっても過言では無かろう。日本中の街道のラーメン屋は星の数ほども有るのではなかろうか。

そしてラーメンを一度でも食べた事のない人はいるのだろうか?いや、今まで食べたラーメンが何杯になるか数えることなど出来ない方が殆どだろう。


では、いままで食べたラーメンでいちばん美味いのはどれかと言われると即答出来る方は如何程居ようか?

なんせ美味いラーメンもまた山程あるのだ。


では、オマエのいちばん美味かったラーメンはどれなのだ?と問われると私は即答出来る。


小さい頃、母親に手を引かれ夕飯の買い物に行ったスーパーで食べた試食のラーメンだ。


なんのことはない、市販の茹でるラーメンだ。特別な製品では無い。しかもプロではないマネキンさんが作った試食である。だが美味かった。確かに美味かったのだ。

あれと同じような製品は今でも普通に売っている。むしろ当時より今の製品の方が改良されて美味くなっているはずだ。

しかし、未だにあの時食べたラーメンより美味いものは食った事がない。

当然である。記憶の補正が掛かっているのだ。

夕飯前に腹を空かせた子供がほんの少しだけ食べたラーメンは美味く感じるに決まっている。しかも美味いものを食べた経験というやつが大人になった今より断然に少ないのだ。記憶にも残ろう。子供の頃の幸せな記憶と共にあの味は強烈に残っているのだ。

今後、あれに勝てる味など出て来ることは無かろう。

人間の味覚は鋭敏である。そして記憶というやつは自覚しているよりも曖昧である。あの時感じた味に記憶は補正を掛け、どんなに求めたところでもう二度と永遠に食べる事の出来ない味を頭の中に作り上げたのだ。


もう一度聞こう。


あなたがこれまで食べたラーメンでいちばん美味いラーメンはどれですか?


また食ってみたいなァ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 説得力のあるところ! [一言] 試食ってなんであんなに美味しいんですかねぇ。
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