オークとカオススライム
2章も張り切っていきますよ!
「……そもそも、アンネ様はうかつすぎるのです。これでは竜帝の奴が心配するのも当然でございます。アンネ様は塔内での自らの立場、そして実力を加味して、身の振り方を考えるべきでしたな」
「はい……はい、ごめんなさい」
さかのぼること1時間前。
スライム離宮の最奥、ウリエラの先導で向かったアンネ達はそこで何か書類整理をする執事姿の老人と対面することになった。
「こんにちはスラじい!ゲート使わせて!」
そんな、あんまりにあんまりな第一声に一斉に頭を押さえる俺たちだったが、アンネ一人だけズカズカと部屋の中に入っていった。いや、まあ、本当に親しい仲ならこれでも問題ないのかもしれないが。
というか、ウリエラさんの顔に血管らしきものが浮いていてすごく怖い。もうこれアウトだろ。
「おお、アンネ様。戻られましたか」
「うん、だからゲート使わせてよ」
スラじいと呼ばれた老人は、にこにこと笑って、アンネに対応し、そしてこういった。
「ではアンネ様、座ってください」
「え?いや、見たところ椅子はスラじいの使ってるのしか」
「座ってください」
「いや、だから……」
「床に、座れ」
「……はい」
スラじいの顔は未だに笑顔のままだが、その有無を言わせぬ態度にアンネもこれはまずいと察したらしい。脂汗を流しながら正座する。
そして、そこから始まったのはお小言の嵐だった。竜帝の叱責が落雷だとすれば、こっちは豪雨といった感じだ。スラじいの口調は常に穏やかで、嗜める要素が強い。だが、その分自分の至らなさやまずかったところを真正面から抉られるような叱り方だった。
そんなこんなで、冒頭に戻るわけである。
と、一通りの叱責が終わり、スラじいの視線が俺たちに移ってきた。
「おぉ、すみませんな待ちぼうけさせてしまって」
「あぁ、いや「いやはや全くですな。ここの主人は客人を一時間も待ちぼうけにさせるのですかな?」ちょ、ボス!?」
ボスの言葉に俺は慌てるが、その言葉にスラじいは頭に手を置いて朗らかに笑った。
なお、実際にはウリエラさんが三人分の椅子と飲み物を用意してくれ、更にはこれまでの経緯などを聞いてきたので(アンネが叱られているのと同じ部屋であるということを除けば)それほど放置されているという感じではなかったが。
「いやはや、本当に申し訳ない。何しろ、アンネ様に逃げられてはいけませんからな。と、そうでした。竜帝様から聞いております。あなたたちが、アンネ様を保護して下さっていたオークのお二方ですな。当然、ゲートについては使っていただいて構いません」
会話にして10秒、既に目的を達成してしまった。
「それはとてもありがたいが……いいのか?」
「ええ、まあ仮にあなた方が悪党だっとしても、賢者の塔をどうこうできるとは思えませんし。アンネ様のご友人だというのなら、断る理由はございません」
そう言って、スラじいは俺たちを先導する。案内されているうちに進む通路は、先ほどまでの中世の洋館と言った雰囲気から一転、まるでSFの世界に迷い込んだかのような、各所の壁に走った線上の明かりに照らされた通路だった。
そして、最奥まで到着した時、俺たちを迎え入れたのもまた、SFチックな装置であり……SF作品に登場する物で一番イメージしやすい物で例えると、さながら既に中身が出て来た後の培養カプセルと言った出で立ちのものだった。
「これが、ゲート、か?ゲートっぽくはないが」
「ええ、元々は本当に門の形をした、空間を繋げるような構造の転移門を使用していたのですが頻繁に使うものでもない上に空間を繋げておく魔力も馬鹿になりませんでな。対象をそのまま転送できる技術が確立されてからはそちらの方がエネルギー効率が良いものですから、順次交換していっているのですよ。尤も、儂自身は自前で転移が使えるので転移門自体必要はないのですがな……。っと、それでは転移陣を起動しますぞ。」
そう言って、スラじいが力を込めると、ゴウンと音が鳴り、機械が稼働し始める。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
膨大な魔力がはなたれ、俺たちに光が降り注ぐ中、その光が強くなっていき……。
気がついたら俺とボスだけ取り残されていた。
☆カオススライム(スラぼう) ランク フェンリル級
最高位のスライムであるカオススライム。斬撃、打撃、刺突、全てに無効に近い耐性を持っており、魔法に至っては99%吸収してしまう。
生半可な魔法では吸収されて終わりであり、受けた魔法が強ければ強いほどため込んだ魔力で反撃をされてしまうというチートキャラ。
一応、弱点……というか、倒すためには、ドレイン系の魔法が有効ということは知られている。スライム系は体全体が魔素に近い水でできているため、マナドレインなど魔素を相手から奪う攻撃を絶えず行い続け、マナ不足で形状を変化させることを封じることさえできれば、あとは核を破壊すれば倒せる。とされている。
また、これはスライム離宮のカオススライムであるスラぼう本人が口にしたことではあるが、本人はマナの吸収を制御できないため、マナを過供給の状態にすることで、許容量を超えたマナを体内で暴発させることができれば自滅させることができるらしい。ただし、これに必要な魔力量は少なく見積もっても宮廷魔術師クラスの魔法使いが複数人は必要であり、しかも、カオススライムが魔法を使った場合、その分も含めた魔素を送り込まなければならないため、この方法も現実的でないとされる。
なお、スライム離宮に存在するカオススライムであるスラぼうはこの状態から更に強化されており、ドレイン系でもマナの過供給でも討伐は絶望的とされている。
スラ爺にも若い頃はあったわけで……一般にはスラ爺で通っている彼ですが、本名はスラぼうだったりします。元々従魔出身なので、こんな名前なんですよね。




