オークの珍客
そろそろ佳境に入ってきました。
オレ ボス。
オレ イエ カエッテ キタ。
オーク キタ マエ オレノ イタ オーク。
オレノ マエ ボス キケン イマノ ボス ツタエル ゼッタイ。
グォーク達がアベルと情報交換している間、ボスは新集落から帰って来ていた。恋人同然の人ゴブリン、アンネによればゴブリナというその種族の女性との熱い一夜を過ごすためだ。
そんな一夜を過ごしたボスは、これ以上ないほど上機嫌で、だが、それでも自分の敬愛するグォークと過ごすために、元の集落へと戻っていた。
そして、そんなボスが集落に戻ると、集落の前に見慣れないオークが姿を見せていた。他のオークに比べれば体が引き締まっているが、それ以上に気になるのがそのオークが身に着けている、上等とは言えないまでもしっかりと武器の役を果たす棍棒と、同じくらいの品質の服であった。
オークが別の集落に行くなんてことはよくあることだが、だからと言って武装したオークという、そこそこの知性があるはずのオークであれば話が違う。
そう言った知性のあるオークならば食料が枯渇でもしなければ、わざわざ移住なんてしないだろう。そもそも、近くの集落には武装したオークなんてボスとグォークくらいしかいないのに、どこからか武装したオークが湧いてくるなど考えにくい。
武装したオークは、しばらく鼻を鳴らしていると、にやりと笑って咆哮した。その声を聞き、ボスがそのオークに声をかけた。
「オウアー グォ-ティグゥア?(狩猟隊だな?)」
その声を聞いて、武装したオークはニヤリと笑う。狩猟隊はボスのいた集落にいた統率個体であるオークキングが、集落全体を四つに分けた組織のことだ。
基本的にはオークキングが一人で独裁を行っているが、その役割によって、狩りを基本とする狩猟隊、冒険者などの女性を主に攫う雌狩隊、鍛錬を続けて王の側近として常に王に従う守護隊、そして、能力の面で他の隊に入ることができず、雑用や危険な仕事で使い潰される肉壁隊に分けられていた。キングは、その四つの枠は変えず、他の集落を吸収したり、雌を孕ませたりした場合などオークが増加した場合はそれぞれの隊に振り分けることで対応していたはずだ。
そんな中でも狩猟を基本にする狩猟隊がどうしてここにいるのか、そんなことを考えていると、狩猟隊のオークがどこからか一匹の魔物を呼び出した。
ぎょろぎょろとした単眼と、強靭な蝙蝠ようなの皮膜を持つ魔物。そう、山岳地帯ににもいたフライングアイだ。フライングアイを見ていると、その眼球が閉じらた。そして再び目が開かれた瞬間、元々目があったはずの場所に、ゾロリとした牙を備えた口が現れ、驚く間もなく聞く者を不快にする甲高い声で言葉を発し始めた。
「オウから、オマエにオツタエデアル! コレハ オウのイシでアル!スグニキカンし、ワガてあしとナレ」
その言葉を聞いた瞬間、ボスは今まで感じたことがないほどの強力に意識が薄れ、身体が勝手に狩猟隊のオークと共に移動しようとしていた。
ボスは薄れる意識を必死に集め、すぐさまその言葉に抵抗する。ボスにとってフライングアイから発せられた言葉で体が勝手に動き出した……という経験はないものの、その状態自体、つまり体の自由が効かない状態になったことは、初めてではなかった。
それは即ち元々ボスがいた集落でのこと、オークキングに命令されたときと同じ状況だった。
「……ぐぉぉぉぉ!」
フライングアイの強制力よりも、ボスの精神力が優ることで、ボスは取り戻した体の自由でフライングアイに向けて投石した。
「ギョ?」
そんな言葉を最後に、フライングアイは石を巨大な目に食らい、消し飛ばされた。だが、言葉を発したフライングアイが居なくなったにも関わらず、ボスの体はまだ十分に動かなかった。それは強制力の源がフライングアイではないからだ。
だが、ボスはそれでもあきらめなかった。何故なら、本気で抵抗すればこの強制力は長続きしないということを知っていたからだ。
幸い、フライングアイの言葉は狩猟隊のオークにもバッチリと効いていて、しっかりと歩いてはいるものの、あのオークに帰還以外の意志はかなり薄くなっている。あまり動かない体だが、それでも鞭打ってボスはその体を加速させる。
オークの重量を持ったタックルが決まり、無防備に背後を晒していた武装オークは見事に吹っ飛ばされた。そして、ボスは油断せずに首の骨を踏み付けでへし折り、頭をもう一度踏みつけて踏み砕いた。
そして、全てのことが終わった後、勢いよく強制力が導く場所と反対側に走り出したのだった。
side?????????
俺は賢い、俺は最強。そして、俺にはたくさんの手下がいる。彼らは愚かでどうしようもないほど何もできないが、腕力だけならだれにも負けない者達だ。そして、俺の英知と、下僕に行動を強制させる力。この二つがあれば、俺はどのような場所でも制覇できるだろう。
と、ふと配下とのつながりがなくなっているのに気が付いた。それは、フライングアイと共に旅立たせた、以前最も優秀だった配下を探させるために送ったオークだった。
それを知って、俺の顔はにたりと自然に緩んだ。
「グォーゲガ! コノエイゴ!(見つけたぞ!コノエ!)」
こうして、今まで全く動かなかった王が、たった一人の部下を求めて重い腰を起こしたのだった。
鎧オークはオークよりは賢いですが、言葉が話せるだけでボスよりも一回りくらい知能低いです。
……実のところ、オークの知能って地頭の悪さもさるところながら、大量のアホオークと生活していて地頭的にはもうちょっと上に行ける奴らもアホになってるってのもあるんですよね。日常生活ならそれでも困らないし。




