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オークと香辛料

連休ついでに今日も投稿します。

 トレントを探して歩く俺たちだったが、深夜になっても俺たちは歩き回っていた。


「……すまん、言い出しっぺの俺が言うのもなんだが……」


「言いたいことは分かるわ」


 うん、この森、トレントなんていないんじゃないかという説が浮上していた。


 そもそも、アンネの思い出した”テイストレント”は、アンネが図鑑で見ただけの魔物であり、そもそも、どんな場所にいるのか、という基本的なことさえ判明していない魔物だ。

 これは、俺たちが舞い上がっていただけで、そもそも香辛料など夢のまた夢だったという可能性の方が高い。


 そうだ、この森にトレントなんかいなかったんだ。だから、香辛料もないし、現状で我慢……。


「……?ドウシタ、グォーク?」


 ふと、俺はボスを見て、空を見て、地面を見て、そして叫んだ。


「いたああああああああ!?」


「!?イタ! イタノカ!?」


「え?何何?トレントがいたの?どこどこ!?」


 騒ぎまくった俺たちだったが、二人に今ここにいるわけではないことを伝えると、驚くほどに消沈した。とはいえ、一応手掛かりは手がかりだ。


「前、武器を使って戦うことをボスに伝えた時に、ボスが丸太として持ってきたのが、瀕死の木の魔物だったんだ。すぐに動かなくなったから、アンネは見てないかもしれないが……」


「なるほど、それであんな叫んでたわけね。まあ、トレントがこの森にいるってわかっただけでも収穫よ。テイストレントは、確か割とポピュラーな進化先だったし」


 なんでも、テイストレントが実らせる香辛料は、当たり前だが他の生き物に食べさせるためではなく、本来は目つぶしや催涙弾などの行動阻害のための道具として使うためのものらしい。

 さらに加えて言えば、調味料として使わなければただただ辛かったりきつい匂いがしたりと食べにくいもののため、積極的に動かないトレントが自衛の為に進化するのがテイストレントなのだとか。仮にその価値を知る種族に発見されても調味料の確保の為に討伐されないという本当に生存特化の種族であるようだ。


「と、言うわけで、引き続きトレント、探すわよ!」


 と、意気込んで飛び出そうとしたアンネの腕を、ボスがむんずとつかんだ。


「え、ちょ、うわっ!」


 腕だけが固定されたため、バランスが崩れたアンネは羽ばたきも間に合わずに頭から地面に突っ込んだ。

 恨めし気に見つめるアンネの視線に申し訳なさそうな顔をしながら、しかし、ボスはこう宣言するのだった。


「トレント ウゴク キ オレ シル ナイ カッタ、ウゴク キ オレ バショ シッテル」


 それは、まさに俺たちが望んでいた情報だった。



~~~~~~~~~~


 ボスに連れられて向かったのは、俺たちの集落から北の山岳部に沿って歩いて行ったところであった。一応森から木々は続いているが、十分も東に歩けば平野が見えてくるような場所なので、なるべく来ないようにしていたところだ。


 そんな場所を進んで行くと、再び広い森が姿を現した。木の密度的には、黒き茂みの森よりも濃いかもしれない。そんな森だ。


「へぇ、こんな森があったのね。なんていうか、うっそうとしてるわね」


 感心しているアンネに、しかしボスと俺は警戒を深めていた。


「アンネ。油断するな。囲まれてる」


 風もないのに木々が揺れ、枝がしなり、そして、あり得ないことに幹が体を捻るように動いていることさえあった。それらはほんの僅か、動いた距離にすれば5㎝もないかもしれないが、鋭敏なオークの感覚は、その動きを見逃さなかった。


「囲まれてるって……まさか、トレント?」


「ああ、さっきから、風もないのに枝やら葉っぱやらがかなり動いてる。その割に動物の気配もないしな」


 警戒するアンネに、ボスが落ち着いた声で安心させるように声をかける。


「ココノ ウゴク キ。サワル トウゴク。サワル ナイ ウゴク ナイ デモ ジメン ノ イシ サワル タマニ キ ウゴク」


「なら、空を飛んでたら大丈夫ってことね。……地面の石で動くってのもおかしな話だけど」


「根っこのことじゃないか?とにかく、警戒しながら進もう」


 俺たちは警戒しつつ、なるべくトレントと思われる動く木が近くに無いところから、実のなっているトレントを探すことにした。


「……って、無いんだけど」


「本当にないな。ここにはただのトレントしかいない……のかもしれないな」


 一時間経過したものの、結局香辛料どころか、木の実すら見当たらなかった。


「こんな時に、鑑定を使えたら、なんて思うわね」


 そんな風につまらなさそうにしていたアンネをふと見ると、なにかが光を反射しているように見えた。


「……アンネ、その光ってるのって……」


「え?光ってるって、こrきゃあああああああああ」


 いきなりアンネに大量の糸が巻き付き、樹上に持ち上げられてしまった。慌ててみると、巨大な蜘蛛が俺たちを見下ろしていた。


「アンネ!?」


「グォーク!とりあえず、こっちはこっちで何とかしてみるわ!口は塞がれてないし、走るくらいは何とかなりそう!だから、そっちも頑張って!」


 樹上でそんな声が聞こえて来た後、アンネが引き上げられた木の枝が動き出し、俺とボスの方をギョロリと赤い光がにらみつけた。


「アンネを助けるためには、まずはこいつを倒さないとってわけか」


 そうして、俺たちとトレントの戦いが始まったのだった。


 


 

 妖精さんの大きさは一般的な成人男性の手のひらに少し余る程度です。両手で支えればちょうどいいくらい。


☆ジャイアントスパイダー

 巨大な蜘蛛。大きさは妖精よりも一回り大きい程度。魔力によって巨大化しているものの、魔物としてすら認識されていない存在である。

 蜘蛛の糸は非常に強い強度を持ち、粘り気のない糸であればそのまま裁縫に使うことも可能である。熱に弱い点は注意。

 その一方で、仮に蜘蛛の巣に獲物がかかっても自身の倍以上の大きさがある生き物を狩ろうとしないため、一般的には安全な存在である。


☆トレントスパイダー

 トレントと共生する蜘蛛の魔物。ジャイアントスパイダーの進化した姿でもある。糸や毒を使いこなす厄介な相手ではあるものの、トレントに近づかなければそもそも出会わない。であったとしても、ジャイアントスパイダーと同じく小動物しか襲わないといった面から、脅威度はスライム級である。

 トレント系統は、基本的に高い防御力と攻撃力、それに比例して低い機動力と、動く際の燃費の悪さが特徴であるため、通常は深い休眠状態にある。そのため、脅威や獲物を素早く察知するためにトレントスパイダーを住まわせるのである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 知能が高いボスを味方になり実験が色々出来るようになってきてワクワクします。料理もどうなるか楽しみ。 [一言] 妖精は手の平サイズとありましたね。すみません
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