オークと帰ってきた日常
暫くは1話ずつの投稿になると思います。
ドラゴン幼女が去ってから、かれこれ一週間ほどたった。それからは問題と言った問題も起こらず、今日も今日とて捕まった雌達の悲痛な声と、オークのうれしそうな声、それに、雌オークの俺を探す声が聞こえてくる。いつも通りの日だった。
さあ、一週間前と言えば、平穏な生活を取り戻した日であると同時に、傷持ちが俺たちの仲間になった日だった。なお、話し合いの結果、傷持ちの名前はボスになった。見た目といい命令権を持っていることといい。名前だということに目を瞑れば最適だろう。
そんなボスは、ここ一週間念話教育法で言語を習得させていた。が、俺の時とは違って結構苦戦しているようだ。……いや、これは逆に俺の習得速度が異常だったと言えるのだろうが。
まあ、とりあえず現状としては。
「グォーク、エモノ、トル、シタ」
「お、狩りしてきたのか。これは結構大きなサラマンドラだな」
こんな感じの片言である。まだ十分に言語を習得したわけではないが、たくさんの言葉を覚えたことで、思考能力や判断能力はだいぶ上がってきている。恐らくは、前世の小学生くらいの思考力はなってているのではないだろうか。
さて、今日は……そうだな、武器選びでも教えてみよう。ボスは確かに賢い。思考力的には小学生レベルだが、今までの生活経験から、サバイバル術や戦闘術(対獣用)に関しては普通に高いスキルを有している。そのため、格上の相手であってもある程度戦える能力を持っているようだ。
とはいえ、……とはいえだ。実のところ、もしも武器を持つ戦いであれば、俺であってもボスを倒すことができる確率がある。ボスの丸太を持ったぶん回しは確かに恵まれた膂力を十全にいかした驚異的なものであるものの、実のところ非常に隙が多い攻撃でもあるのだ。
どうやら、ボスは、基本的には素手で戦い、それでも倒せないような硬い装甲を持つ相手に対して丸太などを使って高威力の質量攻撃で仕留めていたらしい。
……そして、隙以外の問題が一つあった。それが今日教える内容である、武器選びである。
オークの集落には広大な森の中に存在するため、入手できる武器と言えば、木の枝や丸太、それと石、あとは骨である。一応冒険者やゴブリンの作った武器などもあったが数が少なかったり小さかったりするので今回は省く。
そして、さらに言えば技術という言葉に縁のないオークにとって、木の枝はリーチ以外は腕の下位互換なのでこれも省くべきだろう。
そんな武器になる素材だが、朽ちたり枯れたりしたものがほとんどで、そうそういいものというのは落ちていない。そんな中ボスは、兎に角大きな木を引き抜き、相手に叩き付けることで対応していた。
つまるところ、オークにとっての武器というのは、ボスほどの頭をもってしても弱点を穿つためだったり、射程の補助的な使用法ではなく、ただの質量兵器として扱っているのである。
因みに投石も射程の拡張を狙っているわけではなく、より大きなものを投げる質量兵器として運用しているようだ。
まあ、そんな理由は分かる。オークというのは当たれば勝ちの種族であり、どこに当てるか、自分がその間にどれだけ被弾するかなどを木にせずに殴り飛ばせば大抵は何とかなってしまう。
射程に関しても、近寄ってなぐればいい話で、それ以上武器を使って自分を強化する意味が見いだせなかっただろう。実際、この森の中では武器を使って戦わなければならない相手などほぼいなかったのだろう。
だが、身に着けて困る技能でもないし、こちらで武器が作れるようになった現在、その武器の選定方法を覚えさせないという選択肢はないだろう。少なくとも、倒木だと思って持ち上げたら瀕死のトレントだったかというコントみたいなことにはならないようになるだろうし。
……それに、もしオークの集落が危機に瀕するとなれば、普通のオークが対処できないほど高い防御力や恐ろしい攻撃力、あるいはそれを補う智謀を持った存在のはずだ。それらに対処できるようになるのは、俺たちにとっても、そしてボスにとっても決してマイナスではないはずだ。
そんな考えを巡らせながら、またぞろ腐った倒木を持ってきたボスに倒木を置かせて、武器選びのレクチャーを始めるのだった。
武器を使えるって普通に高度なことだからね、仕方ないね。




