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初心者メンバーの冒険

「さて、それじゃあ進もうか」


 そう言ってリュックをゆすって歩き出したアリシアさんをアベルさんが止める。


「ちょっと待つっすアリシア」


「どうした?別に見送った後に始末がいるわけでもないだろう?ジュモンジの持っていたテント類は私が持ったしな」


 そう言って荷物を掲げるアリシアさんにアベルさんがため息をついて答えます。


「そりゃ、アリシアだけなら何も言わないっすけど、今はアンネさんとニコットちゃんとウリエラちゃんがいるんっすよ。そんな大荷物で咄嗟に動けるっすか?」


「む……」


「そもそも、その大荷物確かテントっすよね。グォークの旦那や蘇芳殿、ボス殿が乗ってたメタルリザードに括ったりして身軽にした方が……って、よく考えたら、残ったメタルリザードどうするんっすか。あっしらの中で魔物使いとかいないっすよね」


 アベルさんのその言葉に、今度はニコットさんが手を上げました。


「それなら、一旦荷物整理してリザードも返しちゃいましょう」


 そう言うと、ニコットさんの背後に巨大なひずみが生じて先ほどジュモンジ様が生み出した転移門と同じものが生み出されました。


「ちょっと待つっすよ。ニコットちゃん」


「どうしたんですか?」


「何かあった後では遅いっすし、何かの間違いでメタルリザードたちが死んでしまったらそれこそ大損っすから返すことには異論ないっす。ただ荷物の選別によっては、荷車や資格のいらない従魔を使う必要があるかもしれないっす。だから、まずは荷物整理から始めないっすか?」


「……それもそうですね。流石先輩!」


 そう言うと、ニコットさんは笑顔で転移門を閉じてこちらに近づいてきました。それと同時にアリシアさんも荷物を下ろして車座になって荷物整理を始めました。

 そして……。


「とりあえず、こんなところっすかね」


 いろいろと相談した結果、今まで自分たちで持っていた武器や最低限の食料と資金、はそのままに、武器の整備用品や10日分の食料、テント、調理器具等、またわずかな娯楽用品をアリシアさん中心に持つことになりました。

 人数より多い食料や余計なテント、それとアンネさんが大量に持ち込んでいた紙類なんかは全て王都にあるグォークさんたちの宿屋に一旦置かせてもらうことになりました。


 それと、決まったことはもう一つありました。それが、全体の役割分担です。

 まずベテランのアリシアさんが先頭、そのすぐ後ろでアンネさんが魔法で索敵、私とニコットさんが真ん中で、後ろがアベルさんの警戒です。


 進む先は見晴らしのいい平原から少し見通しが悪い雑木林に変わっていくところでした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「アベルさんたちってどれくらい冒険者を続けているんですか?」


「ああ、俺はそれこそ5歳くらいの頃に登録して、いろいろしてたっすよ。アリシアはちょっと田舎の方にいたから登録は5年前っすね。俺も魔物相手にし始めたのは同じくらいっすよ。グォークの旦那のお仲間二人はどうなんっすか?」


 そう振られたアンネさんとニコットさんは何事もなさげに言葉を続けた。


「えっと、一週間前?研修が終わって正式にギルド職員になったのがそれくらいなので」


「一週間!?冒険者になって一週間であんな魔法が使えるんですか!すごいですね!あ、でも、冒険者になる前から冒険に行ってたとか?」


 ニコットさんは私の言葉に困ったように顔を傾けた。


「えっと、期待してるところ悪いんだけれど、私、生まれてからも一年くらいだよ」


「!?あ、その茸!ニコットさんってグォークさんの所のマイコニドさんだったんですか!」


 ニコットちゃんが見せた手のひらサイズの茸に私はそう声を上げました。確かに、グォークさんの道具袋にいつも入っていたマイコニドさんは私も覚えがあります!


「うん、そうだよ。そう言えば、ウリエラちゃんは私持ち上げて一緒に遊んだりしてたもんね」


 そう言って微笑まれた後、おまけのように手に持った茸を手渡されました。


「おいおい、今は野外で、ここは見通しの悪い雑木林だ。いくら警戒をこっちがしてるからって油断するな」


「はーい」


 アリシアさんに言われてそう答えた私たちに、アンネさんの鋭い声が響きました。


「来たわよ!」


 思わずアンネさんの指さす方向を向くと、確かにザワザワいう音が響いて、敵の襲来を知らせました。


「サスティナ様!あ」


 私はいつもなら後ろにいるサスティナ様に声をかけて、そう言えば今は別行動だったと思い出しました。


「今は私達だけよ!さっさと準備!」


 慌てて弓を構えた私の目の先に、小さな影が目についた瞬間、私は引き絞っていた弓を放ちます。


「っておい!ちょっと待て!何してる!」


「え、ふぇ?」


 敵を狙撃したのに怒られたことに混乱する私でしたが、そんなことをしている間に敵は間近まで接近してきました。それは渡地たちと同じくらいの大きさの猿の魔物でした。


「っ!話はあとっすよ!とにかく討伐っす!」


 そうして戦いの火ぶたが切って落とされました。

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