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オークと小旅行

 リス・デュアリスを出立してから少し。進む道は何事もなく、平和なものだ。何しろ空にドラゴンが随伴しているのだ。遠方からもわかる明らかな脅威で逃げないのは、その首にかかっている人権印章の意味が分かる知的生命体と脅威度関係なく襲い掛かるオーク位のものである。


 因みに、かなりファンタジーなこの世界においても道というのはそこそこの意味は持っているようで、日に何度かはすれ違う人の姿を確認できた。まぁ、街の発展具合や商品の流通量と比べると行商なんかの数が圧倒的に少ないようにも感じるが、そこはそれ、俺たちは使えるか使えないか微妙だが、普通ならかなり有用な転移門が各所に設置してある世界の、流通系はそちらを使う方が主なのだそうだ。まあ、日持ちしないものでも簡単に輸送でき、その間の盗賊などに襲われるリスクも軽減できると考えれば夢のような施設であることは間違いない。……その分高いらしいが。


 例外は、以前護衛依頼を受けたレビンのような流れの行商人だろう。賢者の塔のギルドはそれこそ少し大きい村程度の場所にも設置されていることがあるが、転移門となるとそうはいかない。そのため複数の村が一つの転移門を共同管理しているところもあるようで、そう言った場合は、食料は基本自給自足、足りない者は村民が代表して買い出しに行ったり、レビンのような行商人から買い求めるような形になるらしい。

 特にその手の行商人は村から村へと移動していくため、王都からの道だと逆に数が少ないようだ。


 なら誰とすれ違っているかと言えば、それは冒険者である。転移門は夢のような施設であるが、何分、高い。賢者の塔ではありえない量の転移門、しかも冒険者ごとに移動先が変わるような頭のおかしい転移門を使用していたが、そこはそれ。本来なら一回使用するだけでオーク級ランクの依頼1回分の報酬が軽く吹き飛ぶくらい、場所によっては2~3回分の資金を要する施設なのである。

 上級冒険者であれば、まあそこそこ気軽に使える値段ではあるものの、普通の冒険者にはやや手を出しにくい値段設定である。しかも、彼らは一般的に魔物と戦う術や野外での休息の術も心得ており、そもそも彼らの主な仕事場所である魔境の近隣には殆どの場合転移門は設置されていないため、結局冒険者たちは転移門でなく徒歩や従魔を使っての移動が基本になるのである。


「……お、俺たちはここでお邪魔するぜ」


 そんなわけで、街を出るときはある程度いた冒険者たちも、だんだんと人が減っていき、とうとう俺達だけとなった。まあ、そもそも遠出する冒険者も数は少ないだろうし、当然と言えば当然だ。


「平和ですな」


「そうだな」


 そんなわけで、俺たちは俺達だけの旅をのんびりと楽しんでいた。目指す黒き茂みの森はおおよそ一か月半の旅程となる。とはいえ、以前のユグドラヘイムの時とは違い、こちら側は特に難所があるわけでもなく、普通に旅すればいいだけだ。まあ、例外的に強いのが流れてくることはあるようだが、それは例外中の例外である。


 本来ならばサスティナがそのままその姿を見せていれば、恐らく魔物に襲われることは無いと思うが、アリシアがあまりサボると勘が鈍る、という意見を出してきたり、路銀の足しにするための素材はいるのでは?とウリエラが提案したりした結果、しばらく進んだ後はサスティナが人型形態に戻って暫く歩く時間を作ることになった。

 なお、なぜ常時、でないかと言えば、ジュモンジの全力疾走の時間に制限があるからである。スピード自体はそこまで遅くないのだが、やはりもともと植物体であるのに全力で動くのはかなり労力を使うらしく、一時間ほどしか持たないそうだ。……まあ、それでも冒険者でなければ驚異的な持続力ではあるのだが。


 そんなわけで、それぞれの戦闘スタイルも見ることができた。


 まず、サスティナとウリエラ、ジュモンジ、エルフたちは基本的にはウリエラが主体になって狩りを進めていた。まあ、これに関してはウリエラが主戦力、というわけではなく、彼女たちの中がで最も未熟なウリエラに経験を積ませるためというのが大きいのだろう。

 その戦闘スタイルは同行していた時にその片鱗を見せていたように弓を使ったもので、現在は弓に魔力を纏わせて、火の矢とか氷の矢とかそう言った属性攻撃を主体に戦っていた。


 それと、ちょっとした変化なのだが、ウリエラとサスティナの距離が少し縮まっているように感じる。なんというか、以前はきちんと子弟と言った感じの距離感だったと思うのだが、今はウリエラがやけにサスティナにスキンシップを求めていくというか……ありていに言って意識しているように感じるのだ。……まあ、サスティナが嬉しそうだからいいか。


 それはともかく、そう言ったわけで彼女たちの担当の時は基本実働はウリエラだけである。数が多いとサスティナが食い破ったり、指導と称してエルフたちが弓を撃ったりすることはあるが、それもごくごくわずかだ。


 一方、アリシアとアベルの方はきちんと連携を取って戦闘を進めている。流石にレベルは上がっているようで、出会った当初俺達オークを見て叫び声をあげていた彼らも、オーガ級の魔物も危なげなく倒している。その見た目通り、アリシアが攻撃を受け止め、そのすきをついてアベルが突き崩すような戦い方であるようだ。リトルウィッチフェアリーがアリシアの後ろから声援を飛ばしていたが……あれはどういう意図なのだろうか?


 とにかく、お互いの戦いを見ながら俺たちは旅を続けていったのだった。

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