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オークと大所帯

 過去話をしたらジュモンジに旅の同行を提案された件について。

 一瞬どう返答しようか固まったものの、すぐさま俺は聞き返した。


「……そりゃまた何で?」


「そうじゃ。わらわたちは慈善授業じゃないんじゃぞ?」


 不満の声を出すサスティナにジュモンジはいたずらっぽい声色で諭した。


「まず、お主が冒険者になれたのはこやつらのお蔭と言っても過言ではない。その礼。というのが一つ目の理由」


 ジュモンジは更に指のように見える木の枝を三本立て、そのうち一本を折り曲げた。


「次に、黒き茂みの森周囲の魔物は弱いが土壌は豊かじゃ。そこそこの大仕事をしたんじゃし。ちょっとは休暇もかねて行ってみたい。そして……」


 そう言って、ジュモンジは最後の一つを宣言する。


「オークの進化実験とか、面白そうじゃないかのう?」


「……確かに、なのじゃ!」


 そう言って歓声を上げるサスティナもどうやら結構乗り気になったようだ。


「いや、あそびじゃ……まあいいか」


 腐ってもジュモンジ達はマンティコラ級、アリシア達もシーサーペント級だ。最悪オークに圧殺されるとかそう言ったことにはならないだろう。

 ……オークの集落に戻るとなると、例の木の実を用意しなければならないか……。


 そんなことを思いつつ、俺は早速ニコットを見つめた。


「じゃあ、早速ニコット頼む」


「……?」


「ねえ、グォークグォーク」


 アンネに肩を叩かれ振り返る。


「ニコットと出会ったの、賢者の塔よ」


「……あ」


 よく考えたらそうだった。かなり前から行動を共にしているように感じていたし、実際本格的に一緒に行動し始めたのは蘇芳やリナよりも先なので前からと言えば前からだが、黒き茂みの森へ行くためにはほとんど意味をなしていなかった。


「一応賢者の塔へは行けるけど……正直あんまり意味ないわね。精霊郷突っ切るくらいなら徒歩で言った方が確実よ」


 ついでにサスティナに目を向けると、サスティナも慌てて首を振った。


「確かにわらわも黒き茂みの森には行ったことがあるが、転移は使えんぞ!それに、わらわは竜としては小柄じゃ。ジュモンジというデカブツもおるし、この人数を一気に運ぶのは無理じゃぞ!仮に運べたとしても途中で振り落としかねん!」


 そう言うことなら、答えは一つだ。


「よし、歩いて帰るか」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 まぁ、実際には歩くというのは語弊がある。転移や航空運搬ができないなら取れる手は陸路で地道に進むこと……程度の話だ。

 なお、ジュモンジの伝手で(というか知識で)貸出従魔の制度を使い、移動することになった。

 この貸出従魔というのは、現代で言うところのレンタサイクルやレンタルカーのような制度で、人になれやすく従魔にしやすい魔物を貸し出して他のギルドで返却するというシステムだ。高額な転移料金は払えない、もしくは風景を見ながら旅をしたいといったニーズに合わせたサービスらしい。

 ただし、従魔という命を扱うサービスの為、最低でもオーガ級の実力を持ち、借りる団体の内最低一人は従魔を従える経験があることを証明する必要があるなど、意外とその制約は厳しかったりする。

 なお、この時に活躍したのがいざというとき頼りになることに定評がある蘇芳とその従魔のスライムだった。一応サスティナもウリエラの従魔だが、流石にそれを理由に借りるというのは認められなかった。まあ、あいつに関しては従魔(仮)だからな。

 ……というか、なんであいつ従魔契約解除してないんだろうか?ウリエラに従魔契約を続けてほしいと思われているのはなんとなくわかるが、説得の機会はいくらでもあるだろう。


 今回借りたのはメタルリザード、見た目や大きさはサラマンドラやサスティナ達が戦ったというアースリザードとあまり変わりがない銀色の体が特徴的な魔物だ。

 ダチョウのような魔物や、犬や馬形の魔物、変わり種ではミミズのような巨大な虫系魔物もいたりするが、それらも用途によりけりだ。

 今回の聖都リス・デュアリスから黒き茂みの森まで(返却の必要があるため、実際は最寄りの街、具体的に言えばアベルたちが拠点としていた領都オルドネスクまで)の距離を移動するとなると持久力とある程度の防衛能力を持つ魔物でないと意味がない。

 ダチョウのような魔物レミューイは高速移動に向いていて安価だが戦闘能力と持久力が低い。

 犬型は戦闘能力も持久力もあり、速度も中々だが、移動の際にしがみつく形になるので乗客である俺たちの腰の方の限界が来る可能性がある。

 馬型は最も一般的ではあるが、臆病なためオークやドラゴンのいる俺達パーティでは扱いきれない。

 ミミズ系は観光用でそもそも長距離に向いていない。


 と、いろいろ吟味した結果、多少割高にはなるが、戦闘能力が高く、速度も並み以上、物怖じもしないメタルリザードに白羽の矢が立ったのだった。


「……のう、ちょっと考え直さんか?」


 なお、ジュモンジは小さくなったとはいえ3m級の細長い樹木であり、高速で移動すると激しく揺れた後にパキッと行きそうな雰囲気があったので、二頭立てのメタルリザードの引く荷車に括りつけられている途中である。


「……」


「……」


「……」


 確かに、この扱いはちょっとかわいそうである。だが、貸出従魔で安定してジュモンジを乗せられる魔物はそうはいない。いても大分足が遅い種族になる。


「む、なんじゃ、ジュモンジそんなにリザードが嫌ならわらわが乗せてやろうか?」


 結局、貸出従まですべて賄う必要もないので、構わず縛り上げようとするエルフたちを押しとどめて空輸のサスティナメンバーと俺達&アベルペアの陸路メンバーに分かれて進むことになったのだった。

作戦会議中ジュモンジ

(儂自身は行ったことないけど、株分けする前のジュモンジは言ったことあるから一回ユグドラヘイムに転移してあっちのジュモンジに転移してもらえば遠距離移動しなくていいけど面白そうだから黙っとこう)

縛られ中ジュモンジ

(ちょ、なんで儂縛られてるの!?確かに従まで儂乗せられるのそんなにいないけど、そしてなんでエルフたち喜んでるの!?まって、ヘルプ、ヘループ!?)

エルフA(……はぁ、はぁ、聖木様の枝ぶり、聖木様の肌触り♡)

エルフB(……縛られてる聖木様、最高!)



(ようやく帰り始めたよこいつら……)


構成(大きさ順)

ドラゴン    一体

トレント    一体

上位オーク   一体

オーク     二体

人       三体

エルフ     二体

ゴブリン亜種  一体

マイコニド亜種 一体

フェアリー   二体


こうしてみたら小隊クラスやな。

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