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オークと帰路

「うっ!うぷっ……」


「……すまん」


 凄まじい勢いでえずいているリナを横目に、俺たちは船を降りて再び聖都の地へと足を付けた。やはり帰りも何事もなく、無事にここまでたどり着いた。


「ねぇ、グォーク。思ったんだけど、既にリス・デュアリスは行ったことあるんだし、ニコットに頼めば……」


「……すまん」


 実は気付いていたのだ。ニコットに頼めばリナだけでも船に乗らずに帰ることができることは。だが、それでもそうしなかったのは、この世界の船旅がそこそこの高級サービスだったからだ。

 最初から船に乗らないのなら誤魔化せただろうが、一度乗ってしまった場合は食事時に乗員を確認されるため途中下船はできなかった。


 まあ、船員の目の前で転移魔法を使って下船するところを見せればよかったのかもしれないが、正直そこまでして船を降りるというのはあまりにも失礼に感じたし、リナも声をかけても「気にしないでください」と言っていたのでそっとしていたのだ。


「……な、なんと、お、おぇ……」


 あ、気付いていなかったようだ。本当に申し訳ない。


「さ、さて、ギルドに行って挨拶したらいよいよ黒き茂みの森に帰るとしよう」


 そんな風に誤魔化しながら、俺たちはギルドへと向かったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~

「は~い、いらっしゃーい。あ!お兄ちゃん!」


「お、ニコット!元気してたか?」


 俺たちがギルドに入って最初に見たのは10人近くいるニコット達だった。恐らく分身体だろう。


「えーっと。本体はどこだ?」


「え?本体は宿屋ですけど」


 そんなやり取りをしながら、俺たちはニコットと共に受付へと向かう。


「というか、なんでこんなにいっぱいいるのよ」


 わらわらと近寄ってくるニコット軍団という、ややホラーじみた状況に突っ込むアンネにニコットも苦笑しながら答えた。一応、話をするのは一番最初に話かけたニコットにすることに決めたらしく他は無言で俺達の荷物などを持っていた。

 ……逆に何もしゃべらない方が怖いんだが。


「えっとですね。無事に学習は済んだんですが、その後に暫くギルドで働くことになりまして。で、そのタイミングで廃都の方でマイコニドが大量に増殖しているっていう話が上がってきまして」


「……一応聞くけど、それって、あれだよな?」


「ええ、あれです。実際は増えてはいなかったんですけど、結局誰かが処分することもなかったみたいで、しかも私が魔力を与えているわけでもないので勝手に動き出しちゃったみたいで」


 なんでも、そう言うことらしい。で、最終的にはマイコニドたちにニコットの魔力を流し、無理に支配下に置き直したらしい。だが、そうしたとしても魔物は魔物なので放置もできず、だからと言ってニコットが大量のマイコニドたちを押し込む場所を用意できるはずもなかったため、ギルドの臨時職員として雇用することになったのだという。

 まあ、その際のマイコニドたちは俺達が最初に出会った際のニコット程度の知能と力しかなかったため、マスコット的な感じで働いていたのだが、とことこ歩くマイコニドたちが意外な人気になり、従魔術師たちがこぞって譲ってくれるように頼みに来たのだとか。


「……それで」


「おい、ニコット。仕事中だぞ」


「はっ!すみませんギルドマスター殿!」


 話の途中だったが、そこでファンレイに声をかけられ、ニコットが直立不動で敬礼をして答えた。なお、他のニコット達はアワアワと荷物を置いて別々の場所に散らばっていく。


「……はぁ。とりあえず、帰ってきたことに喜んでおこう。お帰り」


「ええ、お久しぶりです。ファンレイさん」


 そう言うと、ファンレイは苦笑しながらも頷いてくれた。そして、寂しそうに言葉を続ける。


「そうすると、いよいよ王都による理由もなくなるか……分かっていたことではあるが、寂しくなるな」


「まあ、ニコットもいるし、たまに顔を出しますよ。カーク様にも紹介状と船のお礼を託させてもらってもいいですか?」


「ああ、構わない。承ろう」


 そんな短い言葉を終え、俺たちはその場を後にする。長い別れになるのかもしれないが、今生の別れというほどでもないだろし、これくらいで良いだろう。ニコットに関してはこの後引継ぎ等の話があるらしく、ファンレイと共に裏へと消えていった。

 俺たちはニコットが帰ってくる間に、ギルド内の知り合いに声をかけて行った。

 オーク級の受付にいた男性受付や蘇芳と共に一時期冒険に出ていたバルディア達。他にも少しの関係だが知り合いの冒険者はたくさんいた。

 そして、ひとまずのあいさつ回りが終わり、ニコットもいったん帰ってきたのでそろそろお暇しようかと扉に向かった時、何やらがやがやと扉の先から聞こえて来た。


「だから、この依頼はやりすぎだったんっすよ。いくらランクが上がったって、俺らにはまだ早すぎたんっす」


「まあ、確かに。実際助けられてしまったわけだしなぁ。しかし、旅費のことも考えるとここらでガッツリ稼ぎたいところでもあるだろう?」


「ふぉふぉふぉ。まあ、じっくり考えるがええ。悩むのもまた大事な勉強じゃて」


「まぁ、わらわがおれば万事解決じゃがの!」


 ……なんでだろうか、扉を開ける前から全員知り合いのような気がしてきた。


 バン!と扉が開かれ、そして俺達はその姿を認めた。


「……お?」


「やっぱりか」


 そこにはアベルとアリシア、そしてジュモンジとサスティナ、ウリエラの5人が勢ぞろいしていたのだった。



 ミニニコットの魔力供与に関しては、ニコットの分身体としてでなく主従関係としての魔力接続です。簡単に言えば、思考も一部同期しているニコットhubみたいな存在から、ひよこと孵化した時に目の前にいた主人くらいの存在に変わっている。

 ミニニコット自体は元々ニコットの思考で動いているので、その癖が残ってて意外と賢いが元はニコットのアバターなので主体性は全くない。


 なお、100年後くらいに某アニメの警察とモンスター病院みたいに大量に配置されたニコットが定番職員になる未来もあるかもしれない。

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