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閑話 騎士と樹木と竜

 「アリシア、そっちは大丈夫っすか?」


「ああ、問題ない!」


 そう言って、私は巨大なトカゲを切り伏せた。


「しかし、アースリザードは結構固いな」


「なら、ワタシも手伝うのです!」


「結構だ!」


 その声を聞いて、思わず私はその声に大声で反駁してしまった。

 しゅん、とするリトルウィッチフェアリーのポポルンに私は慌てて声をかける。


「あ、ああ!ちがう!違うんだ、その、君は奥の手だから!だからおいそれと戦場に出すのは間違っているというか……」


「そんなことは気にしないでいいのです!ワタシはあなたを助けるために着いてきたのです!」


「何話しているっすか!今戦闘中っすよ!」


 アベルのそんな言葉の瞬間、私の顔に影がかかった。


「……っ!」


 反射的に振り払った剣でそのアースリザードは退けたものの、無理をしたせいで体制が大きく崩れてしまった。すぐさま受け身を取るが、体制を整えたとしても周りをアースリザードに囲われ、集団で襲ってくるだろう。

 ちらりと懐を見て、私は心を決めた。ポポルンに言ったことは決して間違っていない。半精霊のポポルンと契約したことで得た力は、修行や冒険で鍛えられた今の私からしても必殺と言えるほどの力を有していた。だが……


「……ミラージュ・ミラクルパワー!めいk……」


 契約の言葉を唱え始めたすぐ後に、周囲の状況が一変した。爆音が鳴り、近くアースリザードがすごい勢いで吹き飛んだ。そして、気が付けば目を射抜かれ息絶えたアースリザードの姿があったり、巨大な木の根に絡めとられたアースリザードが呻いていたりした。

 そして、遅れて甲高い笑い声が聞こえる。


「ワハハハハハハ!よい!良いぞ!ウリエラ!その調子じゃ!」


「はい!サスティナ様!」


 馬鹿笑いをしている方は、超高速で動きながらアースリザードに突撃し、すれ違いざまに爪を一閃……と思いきや、あまりに威力が高すぎるのか、斬りつけるというよりはスピードでひき殺していた。

 弓で狙っている方は弓とは思えない高速で弦を引き、10秒程度の感覚でほぼほぼ正確に敵を撃ち抜いていた。


 呆然としている私とアベルに今度は巨大な何かが声をかけて来た。


「ほっほっほ。どうやら危ない所を助けれたようじゃのう」


「あ、貴方は!ジュモン……ジ、さま?」


 そこにいたのは、ジュモンジ老人に話し方と多分木の種類が同じな若いトレントだった。


~~~~~~~~~~~~~~

「はぁ、なるほど、ジュモンジ様はあれから世代交代をしたのですね」


 私達はジュモンジ様とサスティナ様、ウリエラ様と輪を描くように座り、手短に状況を話し合った。


「そうじゃよ。確か、世代交代の話はギルドで何度か話しておったと思うのじゃが……」


「聖木様。最後に世代交代について話したのは10年ほど前の話だったかと」


「聖木様。彼女たちは、聖都の冒険者です。偶々オーク討伐では一緒になりましたが、それまで数十年間周辺のギルドを点々としていた聖木様とこの者達との接点は殆どないかと」


 ジュモンジ様の言葉に二人のエルフが訂正を入れ、ジュモンジ様は誤魔化すように朗らかに笑った。


「ところで、其方はいかがしたのかな?特にアリシア殿の方は、加護と……何やら特別な契約をしているように見受けるが」


「え、えぇ。そうですね」


 そこで私はジュモンジ様に今までのことを掻い摘んで説明する。……一応グォーク達のことは同行者ということでぼかして話した。ジュモンジ様はいろぼ……じゃなかった。リリスウェルナ様からの助言でオークへの手出しを控えていたから安全だと思うが、それでもオークはオークだ。こちらの安全性はこの際気にしていないが、私の言葉からジュモンジ様や、あの血気盛んそうな幼女にグォーク達が狙われることになればそれこそ申し訳なさすぎる。


「ふむ、どうやら旅を経て、かなり成長したようじゃの。うれしい限りじゃて……む」


 そんな少しばかり弛緩した空気が、一瞬で緊迫したものに変わった。そして、お互い無言で頷き合う。


「サスティナ嬢。どうやら、最悪……とまではいかずとも、多少の予想は当たったようじゃのう」


 なんでも、ジュモンジ様のメンバーの一人、ウリエラがこの近辺の村出身だそうで、彼女が村を出ることになったきっかけ、アークアースリザードという強力な魔物討伐後の経過を確認するために出かけたのだという。

 

「恐らくは、アースヒュージリザード。先ごろ出現したというアークアースリザードに比べれば大分劣るが、それでもそこそこの強さを持つ魔物じゃな。……む」


 ジュモンジ様が一旦言葉を切り、私たちを見つめた。


「……アリシア嬢、アベル殿、アースヒュージリザードの相手を頼めるかの?儂等は手が離せそうにないでな」


 ジュモンジ様が見ている方を見るとそこには空を覆い隠すほどの鳥の群れが姿を現していた。


「ジュエルイーグルの群れじゃな。行くぞ!」

 

 ジュモンジ様が言った途端、ウリエラがサスティナに飛び掛かり、飛び掛かられたサスティナはその身を巨大な竜に変じて飛び立った。

 そのあまりの展開の速さに、アースヒュージリザードもあっけにとられたようにサスティナを凝視している。


「アリシア!今仕留めないとヤバいっすよ!」


 それを聞いて、私ははっとする。それはそうだ。今は動きを止めているが、近くには村もあるのだ。今は良いか、もし下手に逃げられれば村人に被害が及ぶ。なら……。


「ポポルン!力を借りるぞ!」


「はいなのです!」


「ミラージュミラクルパワーメイクアップ!」


 光に囲まれた私は、数秒後に白と桃色を基調にしたフリルワンピースを身に纏い、先端にハートをあしらった長大な杖を持った姿に変貌する。


「……くっ、やはりこの姿は……というか、スカートが短すぎるのだ!」


 そうぼやきつつ、私はアースヒュージリザードに杖を向ける。


「何もかも、お前のせいだ!くらえ『メテオライトシャワー‼」


 こうして、流星群のように降り注ぐ魔法によって、アースヒュージリザードは押しつぶされたのだった。


 ……なお、その後、ウリエラ嬢とサスティナ嬢に熱い視線を注がれたり、ジュモンジ様に微妙な視線を向けられたことは、考えないことにした。







ここがすごいぞ!リトルウィッチフェアリー!

・契約した相手の能力を10倍~最大100倍程度に増大させるぞ!

・契約履行時(変身時)一定時間無敵時間を作り出すぞ!

・通常の攻撃と比べて威力1000倍以上の必殺技を使えるようになるぞ!


ここがダメだよ、リトルウィッチフェアリー……。

・契約履行時(変身時)一瞬装備が外れる演出が入る。

・そもそも見た目が妙齢の夫人がするにはファンシーすぎる。

・リトルウィッチフェアリー自身は別に強くもなんともない。むしろ弱い。

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