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オークとお祭り騒ぎ

 港町、リーヴィアは現在狩猟祭の真っ盛りだった。普段もにぎやかな路外には、もう驚くほど多くの露店が立ち並び、多くの人々が品物を物色して盛んにやり取りをしていた。

 そして、そうやって浮かれ騒ぐ一段と場所を同じくして、物々しい雰囲気の人々の姿がちらほらと見受けられた。

 それは、この祭りのメインイベント。狩猟(モンスターハント)をするために集まった面々だ。

 狩猟祭の起こりは、大帝国建国時、海側から来た彼らの祖先が、陸地に上がってすぐ、即ち現在のリーヴィアにて行われた大規模な開拓が行われた際の伝説が元になっている。

 その際に最も活躍した人物が初代獣王であり、その際の契約により、現在まで獣人に力を貸している神獣ディノケルスの存在もある。


 つまるところ、狩猟祭というのは大帝国の祭りの中でも、最も重要なものという位置づけであった。


 そんな祭りで俺も狩猟に参加する。仲間たちにもそう伝え、現地で合流する予定だ。っと。そろそろ時間だな。


 俺は、皇宮庭園へ向かって歩き出す。炎の魔剣も獲物を求めて唸っているように感じた。


~~~~~~~~~~

 皇宮庭園に着くと、既にかなりの人だかりができていて、結構な大賑わいだった。銀狼級以上の冒険者は運営に回るため、ここにいるのは俺達のようにそこまで等級の低い探索者たちだが、それでもこれだけ集まれば壮観だ。


「おーい!」


 お、俺の仲間たちも、支度を終えてやってきたようだ。そして、彼女たちと話をしようとしたところで、皇宮庭園の奥から一人の狼獣人が姿を現した。


「あれが神獣人の一人、黒狼のヴォルフか」


「ヴォルフ様、よ。流石に国の重鎮を呼び捨てにしてるの聞きとがめられたら結構まずいわよ」


 その声に俺は手を上げて謝りつつ、始まった話を聞く。


「さて、冒険者たちよ。今年もこの日がやってきた。我ら偉大なる初代獣王陛下がこの地に国を興された日だ。我ら偉大なる獣王様に魔物の命と貴殿らの闘争を捧げてほしい」


 そう言うと、にやりと笑う銀狼が宣言をする。


「今ここに、狩猟祭を開始する!」


 湧き上がる探索者たちがいきり立つ中、近くにいた魔物が一瞬で何かに包み込まれた。


「……はい?」


 莫大な水のような物が視界の限り広がり、その中で魔物がもがいている。


「ほら、行くよ!ライム!」


 そんな規格外の魔物の上でそんな声が聞こえ、見れば獣人の少女が魔物の上に立っていた。


「マーナ、か?」


 いったいどういう手品を使ったらああなるというのか、しかも正義感は強いもののやることなすこと裏目に出ているマーナが、だ。


「っと、こうしちゃいられない!」


 マーナがどうしたと言っても結局はこっちが魔物より倒せばいい話だ!


「行くぞ!みんな!」


 そう言って、俺達「銀牙の大猪」は狩場へと繰り出していったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~

「次だよ!ライム!」


 スライムのライムだが、育って2か月ほどの短期間で、馬鹿みたいに成長していた。どうやら魔法に関しては全く強くないようなのだが、物理方面に関して打撃も斬撃もほぼほぼ聞かないという規格外な魔物に進化していたようだ。


「マーナ、前にマジックイーグルがいるわよ!」


「承知した!」


 アンネの言葉を聞いて、マーナは飛び出してマジックイーグルを一刀両断する。そして、落ち行くマーナをライムが伸びあがって受け止めた。


「さて、次だ!」


 そう言って、マーナは次の魔物に挑みかかっていった。今回俺たちは見学だ。マーナには、この狩猟祭でとことん目立ってもらう。


「主君……西側、追い込み完了しました。東側に向かいます」


「あぁ、頼む」


 ……まあ、多少の小細工はしているが。因みに、リナが追い込み、ボスと俺がある程度魔法を使う魔物の間引き、アンネが魔物の種類の伝達と周辺警戒、蘇芳に関しては周囲を警戒という役回りだ。


 そして、狩猟が始まって二時間後、特に大きな動きもないまま、魔物の姿もなくなってきた。


「そろそろいいっ!?逃げろ!」


 慌てて俺がマーナたちの前に立ちはだかると、同時にアンネやボス、リナも同時に並び立った。

 こいつは……ヤバい。目の前にいるのは強力な魔物……とか言うレベルではない。恐らく魔王級の化け物だ。

 見た目は小柄な狼ほどの大きさだが、その身にまとった鱗は堅固で、長い尾をトカゲを思わせる顔が凶悪な笑みに歪む。


「面白い。面白い獣人よ」


 そう言って、その魔物……控えめに言って四肢の発達したドラゴンと言ったいで立ちのそいつは俺達を見ずにマーナを見据えていた。


「ま、まさかディノケルス様……ですか?」


「クククその通りよ」


 そう言って面白そうに笑うディノケルスとやらは、その身に魔力を纏わせ、その姿を変える。


「…………うーん」


 いや、分かっている。物事がテンプレ通りにならないってのは当たり前の話で、こういう時は威厳ある老人とか絶世の美人になるというのが前世の創作の話だというのはただの幻想だったということだったのだろう。ただ、ただだ。


「二足歩行のドラゴンに代わるのは予想外だったよ」


 先ほどまで獅子のような四足獣の体に爬虫類の尾と頭と皮膚を移植したような見た目だったディノケルスは直立した熊の手足をやや伸ばし、顔と尾と皮膚は変化前の通り、と言った見た目に変化していた。


「クックック。別に貴様に喜んでもらう為に変化したわけではないわ。だが、そんなことを言ったのはお前が初めてだ」


 そう言って改めてこちらを見るディノケルスに俺はぞっとして顔を下げる。


「クックック。安心せい。敵対する気はない」


 目線を向けたディノケルスは、その威圧感をマーナに向けた。


「そこな獣人……剣を抜くのだ、その力を私に見せよ」


「抜くな!死ぬぞ!」


 俺の言葉に、しかしマーナは静かに剣を抜いた。


「ディノケルス様、胸を借りさせていただきます!やぁっ!」


 そんなマーナの姿に、俺は見守るしかなかった。

あけましておめでとうございます。

正月ボケで登校日ミスってそのままちょっと休んでました。


とりあえず来週からいつもの感じに戻します。

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