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オークと途中経過

 一日の目覚めは日の光から始まる。スィフォン老人に借りた拠点は、オークでも伸び伸び過ごせるワンルームだ。食事なんかは自分で狩ったものを簡単な調理で食べることもあれば、この魔境の魔物たちから獲物や魔石との交換で手に入れることもある。

 とはいえ、まだスライムが成長しきっておらず換金をしていないので今のところ狩りが基本的な食料調達方法だ。

 とにもかくにも、そうして栄養補給をしたら、次はスライムの餌やりだ。これはスィフォン老人特製の物を幾つか貰っているのでそれを使う。因みに初回以降も無料で貰えるが、上位の餌に関しては購入が必要なシステムになっている。

 それが終われば、次の場所に向かう。その間のスライムたちは柵の中でお留守番だ。柵といっても、結解のような性質を持っており、スライムが襲われることはまずない。だから、気にしないで育てればスライムたちは逃げ出さないし、外にいる魔物もスライムを襲えないということだ。


 これを3回行い、スライム同士の同族での争いなどが無いように見回り、適度に食事を与え、そして放置する。

 とりあえず、こうすれば普通のスライムができるんじゃないだろうか。


 俺はそう思いながらスライムの育成をつづけたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


  試練を受けてから3日経った。進化したベビースライムは、スライム、アメーバ、ブルースライム、ブルーアメーバ、グリーンスライム、グリーンアメーバ、それに、なぜか生まれていた謎の黒いスライムの7種。黒いスライムは試練の50種に入っていなかったので残りは14種だ。


「まあ、序盤としてはまあまあってところだろ。後は場所と方法を変えて育てていけばいいか」


 とりあえず報告もかねてスィフォン老人に会いに行くと、丁度他の仲間たちも老人のところにやってきていた。


「みんなも来たのか」


「そりゃ、3日経ったんだから来るでしょ。うう、重い」


 重力を操って檻を浮かせていたアンネだったが、アンネの実力をしても、見上げるばかりのスライムの山を浮かべるのは重労働だったようだ。


「というか、えらい育てたな」


「こっちは実験も兼ねてるからね。でも、これはひどいわ、今回は70育てたけど、これは半分で良いわ」


 そう言ってとても疲れた様子で老人の所へと飛んで行った。

 見た感じだが、アンネの所には普通のスライムとゲル、それと少しのアメーバとゼリーが混じっているような感じだった。


 アンネを見送ると引き続きボス、蘇芳、リナ、マーナと続いていく。

 ボスは10匹前後の数を育てたらしく、レッドスライムとレッドゲルを連れて来ていた。蘇芳はゼリーを3匹、リナは普通のスライム2匹になぜか紫のスライムを連れて来ていた。スィフォン老人に貰った図鑑には載っていなかったので、これも試練の達成外のスライムだ。

 

 そして、マーナは大量のベビースライムたかられながらやってきていた。

 ……本当に何やってるんだあいつ。


 とにもかくにも、俺たちはスィフォン老にスライムを渡したり、 物資を補充したりして、今度は20匹のベビースライムを連れて次の飼育場所へと向かったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~

 スィフォン老人の試練を受けて二週間たった。

 

「ゲル、スライム、ゲル、ゲル、ゲル、スライム……はぁ」


 あれから7回分の育成をしたが、場所での変化で多少増えたものの、5種が増えるのみとなった。その代わり試練対象外のスライムが7種類増えた。

 あまりにも、進捗が無さすぎる。そう言って過言はなかった。

 今もベビースライムを40匹育成していたが、その半分以上が黒いスライム、ナイトメアスライムに変化していた。


 俺はため息をついてから、スィフォン老人の所に向かう。


「……なにあれ?」


 老人の所に向かうと、アホみたいにでかいスライムに乗ったマーナに出くわした。


「あ、グォーク殿!」


 そう言って、スライムの上に乗ったマーナが声をかけて来た。


「マーナ。なんなんだ?そいつ」


「あぁ、ライムは一番最初に育てたスライムの一匹だ。スィフォン老に引き渡そうと思ったのだが、どうも懐いてしまったようで、渡すに渡せなくてな。そのまま育てていたら二回目の進化をしたんだ」


「そうか」


 そういって、マーナは何匹ものスライムを引き連れて俺たちの前を通り過ぎていく。もちろんその中にはゲルやらゼリーやらアメーバも存在しており、その数は100を超えている。

 どうやら彼女は既に試練を達成しているという噂だ。


 マーナ以外もそろそろ試練を完了できる……雰囲気だ。


「はぁ……」


 なんだか自信が無くなってくる。我武者羅にこれまでやってきたが、どうしても上手くいかない。

 スィフォン老人に交換してもらってから小屋を出ると、そこにアンネが飛んできた。


「あのさ、何やってんの?あんた」


「……うるさい」


 言いたい事は分かるが、それを指摘されて素直に受け止められるかどうかは別だ。しかし、強く反駁する気力も沸かず、力なくそんな憎まれ口を挟むくらいしかできなかった。


「……そうね、これは試練だし、アドバイスは禁止って言われてるからギリギリだけど……あんた自身の今の在り方を鑑みなさいな。自分のことが分かれば、この試練、乗り切れるんじゃないかしら?」


 そんなことを言って去っていってしまった。


「……、ちょっと頭冷やすか」


 結局その日は、ベビースライムを補充せずに、一人で考えをまとめることにした。

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