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オークと捕獲依頼

 俺たちが向かったのは獣王の森だった。討伐なら鳥皇の断崖でもやりようはあっただろうが、空を飛んでいるものが多い場所で、生きたまま魔物を捕獲し、帰ってくるのが困難だと感じたからだ。


「捕獲にはこれを使います」


 そう言うとマーナは……えーっと。うん。これ多分転生者が関わってるな。


「一応確認しておくが、これはある程度弱らせた魔物に投げつけて使えばいいのか?」


「!以前にこちらに来たことがおありですか?」


「いや、そういうわけではないんだが、少し聞きかじったことがあったからな」


「なるほど……」


 因みに、俺が見たのは上が赤、下が白のボタンの付いたボールである。他は言うまい。


「ただ、今回は狩猟祭で使う魔物なので、あまり弱らせすぎないように気を付けてください


 そんなマーナの言葉に、俺たちはうなずいた。

 そして、一度敵と戦ってみる。相手は大猪、ヒュージボアだ。中央大陸にいる種とは厳密には別種らしいが、対応方法は変わらない。以前アリシアと行動を共にした時と変わらず、突進してきたところをボスが受け止め、俺が拳で……っと、今回は倒すのが目的ではないのでそのままボールを投げつける。


 小さな光となって吸い込まれていく大猪に、俺たちがこんな感じか、と感触を確かめていると、マーナが大きな口を開けて呆然としていた。


「え?あ?ズィディ?」


 なんとなくその様子にアリシアを思い出し、思わず吹き出してしまう。


「ナ、……何ですか、グォーク様」


「いや、俺たちが以前行動を共にしていた仲間を思い出してな。とりあえずこれくらいなら問題ない事は分かったな。ちゃっちゃと行くぞ」


 さっさと行く俺たちに、マーナが慌ててついてきた。

 どうせなので俺たちはボールを投げる役と足止めする役を取り換えながら依頼をこなしていく。


 アンネは重力魔法で足止めし、リナはいつの間にかあちらこちらに細い糸を張り巡らせ獲物をがんじがらめに縛った。俺はとりあえず投石で追い立て崖際に追い詰めた後ゆっくりとボールを当てた。

 蘇芳は……うん、びっくりした。投網を使って捕獲をしていた。なんでも以前他の冒険者と行動を共にしたときに教わっていたそうだ。意外と多芸になっていた蘇芳に驚きつつ、今日は10匹を捕獲してお開きとなった。


~~~~~~~~~~~~~~~~

「……常識が音を立てて崩れる感覚ですね」


 まぁ、なんだかんだで後衛まで全員魔物を足止めできる実力があるのはなかなかないのかもしれない。とはいえ、うちのパーティで後衛といえるのはアンネと現在ギルドで研修中のニコットだけだが。


「まぁ、とりあえず組合に行こう。どれくらいになるだろうな」


 と、組合に行ったのだが……何でか知らないが提出後に組合のカウンター裏に呼び出されてしまった。あきれたように頭を抱えるマーナと、なんのこっちゃ分かっていない俺たち、あとちょっと考えてるアンネという何ともまとまりのない図だ。


「なぁ、アンネ、これってもしかして、やっちゃった感じか?」


「うーん。どうなのかしらね。連れてきた魔物に何か問題があったのかしら?でも、毒を持ってたり残忍な魔物は今回捕まえた中ではいなかったはずだし……」


「……なあ、それ、本気で言っているのか?」


 そう言って何かマーナが言いだそうとしたところで、扉がノックされて大柄で、かつ横幅はも背と同じくらい大きい中年の男が姿を現した。耳や尾からみられる特徴からして、狸の獣人かそれに近しい存在だろう。


「いやはや、こんにちは、異国からの旅人がえらい功績を上げたというんで飛んできましたわ。

 ああ、ワイはここの組合長をしとります、二バールと申します。どうぞ贔屓に」


 そう言うと、俺たちが声をかける前に、二バールが身を乗り出してきた。


「それにしても、今回の依頼結果、見させていただきましたぞ!まさかプリンセスアントをとらえてきてくれるとは」


 プリンセスアント……確か、大量のアリ系魔物がいたので、とりあえず一番大きいのだけ捕まえてきたが、それのことだろう。


「プリンセスってことは……」


「ええ、うまくすれば狩猟祭も盛り上げ役がより増えることになる。感謝しますぞ。それにしても、あんたらも運がいいのう。単騎のプリンセスアントに出会うとは」


 二バールの言葉に、マーナがぽつりとつぶやいた。


「群れに突撃してたけど」


「はい?」


「……この人たち、アントの群れに突撃してました」


 耳ざとく聞きつけた二バールが、より一層俺たちに詰め寄った。


「あ、あんたら、プリンセスアントの群れを真正面から相手にしたんかい!しかも、プリンセスアントを大した損傷も無しに捕獲したと?プリンセスアントは赤猪級、お付きのワーカーアントでも緑蛇級やで!」


「えっと。確か赤猪級はオークキングくらい、緑蛇級はサラマンドラくらいだったか?昔なら苦戦しただろうけど、なぁ」


 俺がそう言うと、二バールはぶつぶつと呟いた後、俺たちにあることを提案してきた。


「等級を黒熊級にまで上げるから、専属の探索者にならへんか?」



 モ○ボが出現しました。

 なお、魔物は魔物だけどポ○モンではないので普通に意味はない。

 正確に言うと、混沌神カオスが面白がって転生させた存在の一人で、オリジナルは魔王と同じく法則を超越した本物であり、いわば初代ポ○モンマスターの持つモ○ボは自分で捕獲できたモンスターに捕獲者への親和性と忠誠心を植え付け、魔物自体の肉体の保護や快適な休養所としての役割を十全に果たしている。

 ただし、この初代ポケ○ンマスターは大農場の魔王とは別人。


 一方、現在大帝国に流通しているモ○ボは初代マスターの持っていたボールを模倣して空間魔法をあれこれして作ったもの。要するにオリジナルのボールの「モンスターを縮小して保管できること」を主眼にした複製品。法則を超越したわけではなく、製法が確立しただけの従来魔法の応用品なので捕まえたからといってモンスターを使役できるわけではない。

 ただ、テイマー系職業の人たちについては別口でテイムしたモンスターを持ち運ぶ方法として有効なので普通のポ○モントレーナみたいな戦い方をする人はいる。ポ○センとかはないし、時間凍結機能とか体調維持機能はないので、宿では一度全部出す必要があるけど。


 空間魔法の魔法道具であるので、非常に高価な道具になるはずなのだが、アホみたいな情熱を持った集団がいたせいで、時空属性の魔石と材料さえあれば複製できる装置を作り上げてしまった。問題の時空属性の魔石も、かなり小さいものではあるが落とす魔物の出る魔境が町の近くにあったため、少し高価ではあるものの、富裕層ならば子供でも買うことができる程度には値段が抑えられている。



 組合のメンバーの練度は塔のギルドの練度と大きな差はない。最上位クラスのメンバーはどちらもドラゴンをたやすく討ち取るし、最下級はゴブリンに苦戦するのはどちらも一緒。

 ただし、根付いている範囲と歴史の長さから、構成人員や最終的に組合員が到達する強さの限界値は塔のギルドの方が高い傾向にある。

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