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骨王との謁見

 ヘルは、ギンバリエを踏みつぶした後、徐に俺たちに向かって微笑みかけて来た。


「君たちも無事で何よりだ」


「いや、それはそうですけど、その手に持った大量の首は……」


「っと、どうやら無事でない者もいるようだ。介抱しながらでいいかな?」


 そう言われて俺は慌ててアンネをヘルに手渡した。


「……ふむ、……成程、ならこうして……っと、すまないね、質問に答えよう。この首の元の持ち主は、いまヨルの体の下で潰れている肉塊の元同僚さ」


 それは即ち、ギンバリエの所属する……確か廃銀塔とかいう組織のメンバーだったか。


「彼らは言ってしまえば一人の化け物の生き方に魅入られた存在でね。届きもしないのに、憧れて、結局私欲を優先して自分達に都合のいい方便を使う馬鹿者達なんだ。今までは全容が把握しきれず逃がしていたところがあったが、こうも大規模に攻勢をかけて来るとは思わなかったよ」


 そう言うと、ヘルはひとまずと言った感じでアンネを俺に差し出してきた。


「取りあえず出来ることはやったよ。ほぼほぼ大丈夫だろうが、目が覚めないようならば精霊郷の医師を訪ねると良い」


 そう言うと、彼女は心なしか大きくなっている骨蛇に乗りながら踵を返した。


「それじゃぁ、私はギルドの方に今回の顛末を話してくることにしよう。上の方も大変だったみたいだしね」


 その言葉を最後に転移魔法なのだろうか?閃光が光ると共に、ヘルたちの姿が掻き消えていた。


 その後、ミニニコットを一か所に集めたり、骨王に今回の顛末を説明したりして、長い長い一日が終わったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「……よって、貴君らを我ら王国臣民として認め、その尽力に感謝を表すものである」


 俺たちは今、骨王の前で叙勲式に参加していた。

 本来住民権を得るためにしていた剣闘士と研究職としての働きは、全く考慮されなかったわけではないが、この結果に至る背景としては微々たるものだ。

 今回の叙勲は、ギンバリエ討伐の褒章によるところが大きい。

 本来ならば達成されるか怪しかった住民権の獲得だが、ギンバリエの討伐、廃都の住民にかけられた洗脳の解除を功績として、特別授与という形で一気に重臣レベルの待遇になることが決まったのだ。

 はた迷惑なギンバリエだったが、その部分においては良かったことだろう。


「それ故に、我らは貴君らに緊箍児を下賜し、また我らが陛下からの祝福をもって、その報いとするものである」


 そう言うと、俺たちの額が熱くなり、眼には見えない印が刻まれた。


「これより、彼らは我が王に忠実であった栄誉ある臣民であることを認め、その権利を保障し、名誉伯爵を名乗ることを認めることとする!」


 その途端、謁見の間に控えていたアンデッドたちが一斉に喝采を上げ、俺たちを祝福した。

 その後、アンネが地上からもたらした製法で作られた料理などが振る舞われ、謁見の間は無礼講の様相を見せて行ったのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「おい、もう行っちまうのかよ」


 そう言い募る巨人アンデッド、ガイアスとその隣で甘えた声を出すヘテロに、俺たちは笑いかけた。


「前も言ったが、西大陸に行く予定もあるしな。まぁ、ひと段落着いたらまた顔を出すから、待っててくれよ」


 俺たちはそんな風に言いながら、廃都の、あの巨大ならせん階段の前で笑い合った。

 そこには闘技場で戦ったオズワルドやミドエイリン、それに宰相のグランツの姿もあった。


「我ら廃都の住人は、有て、在りて、居る。時を生き抜いた存在じゃ。そう簡単にはいなくならぬゆえ、存分に世界を巡って来い」


 そう言うオズワルドに、ミドエイリンやグランツもうんうんと頷いた。


「そして、帰ってきたら、しっかり話、聞かせてくれよ」


 そう言って笑うミドエイリンに、俺たちも笑って頷いた。


「よし、それじゃあ、行ってくるよ!」


 そう言って、俺たちは螺旋階段を上り始めた。目指すは地上、そして、船旅をこえて、西大陸だ!!


~~~~~~~SIDE ヘル


「どうだったい?そっちの方は」


「そうだね、こっちは特に収穫無しだね。あの妖精は自然発生型で珍しいけど、居ないわけじゃない。茸人も希少だけど、スラじいに比べれば全然希少性は低いね、ゴブリンについては言うまでも無しだ」


 塔へ帰る道中、私はヨルとあの者達について語り合う。


「それで、そっちはどうなのさ」


「中々だったぜ。騎士についちゃ特にいうことはねぇが、女オーク、あいつは天才だな。それに、()()()()()()。ご主人に比べれば10分の一もないだろうが、()()()()()()()があるだろうさ」


 それを聞いて、私は目を見開く。


「そんなにか。魔王たちも目を付けるはずだ……それで」


「あぁ、リーダーだな」


 そこで、私達は示し合わせたように黙り込む。あれは、おかしい。だからこそ興味が尽きないのだ。


「おい、悪い顔してるぜ、相棒」


「何を言うんだ、ヨルこそ」


 あぁ、あのリーダー、たしかグォークとか言ったか。まかり間違って悪事に手を染めてくれないだろうか。そしたら……


「存分に実験出来るのに……」


 私はそんな有り得なさそうな未来を口にしながら、塔への道を進んだのだった。

ヘルの能力その1

 ヘル様は、アンデッドに最大特攻を持っている。現実の神話でヘルは地獄の門番的な役目をしてるのと同じで、冥府への干渉権を持っているため、既に死んだ相手に関してはほぼ問答無用で冥府に叩き込むことができる。さらに言えば、吸血鬼等の不死性についても「いや、死んでるよね?誤魔化さないでね?」的な感じで冥府にぶっ込める。具体的に言うと首跳ねてもマナの影響で死なない相手でも、マナの影響を無視して殺せる。


ヘルの能力その2

 ヘル様は冥府の干渉権を持っているため、力を持たない死後すぐの亡者と話したりもできるし、場合によってはその魂を保管することもできる。一般的に措置をしていないか、強烈な未練によってこの世にしがみついているような場合、あと廃都のような特殊な空間以外での死亡はかなりの短時間で魂が霧散し跡形もなくなるが(一応冥府的な場所はあるが、たどり着いた時点で魂はかなり霧散している。この世界においては地獄や天国は悪魔や天使の住処であって死者の向かう場所とは異なるという扱い。また、古代神の棲む場所に関しては他の神とも区別して異空間があるとはされている。


廃銀塔 本来はとある存在の身勝手さと強さ、不死性に憧れて結成された存在であり、そのほとんどすべての存在は吸血鬼で構成されている。名前の由来は吸血鬼の弱点である銀を廃れさせるほどに吸血鬼の栄華を極めようという心理と、彼らの最大の仮想敵が塔のギルド(冒険者ギルド)であったため。

 なお、結成の理由になった怪物さんからはそこまで好かれていないことを彼らは知らない。何故なら、その人物は実のところクッソ強く残忍なもののグォークに降る前のボス程度には慎重な男で、自分を頂点に置く悪の組織(又は邪教)とかがあると自分が塔のギルド辺りから目を付けられるんじゃないかと考えているため。




 と、言うわけで、やっと4章 廃都編が終わりました!

 いや、長いよ!短い予定だったのに気づけば前の章とおんなじくらいのボリュームになってるよ!


 なお、最後にヘルちゃまが本性表したねしましたが、一応善なる集団に属しているので、悪事を働かない限りグォークは安全です(フラグ)

 実のところヘルちゃまが積極的な協力を申し出て来たのは、グォーク達を間近で観察するのが目的だったり。アンネとグォークが別行動した時にアンネ達について行ったヘルちゃまがずっと歩いていたのも、グォーク達を観察するために骨蛇ことヨル君が離脱してたからだったりしました。あんまり生かせてないけど。


 次回は恒例の奴をやったら、とうとう新大陸編に突入です!短いつもりですが、今回の例もあるので、ちょっと自信が……。

 とにかく、ここまで見てくれてありがとうございました。もしよければ、まだの方、評価、お気に入りをお願いします!感想も大歓迎です! 

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