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オークと吸血鬼2

「私の、高貴な身体を、フザケルナ!コロしてヤル!!」


 先ほどまでの余裕のある紳士的な態度とは打って変わって、むき出しの殺気でもって俺たちに向かってきたギンバリエの剣を、俺は炎の精霊剣で防ぐ。


「主殿っ!」


「ボス!回復を!」


 今回一番消耗しているのは直接操作をしたボスだ。だからこそ、俺たちは、最初の一撃を放った後はボスに体力や魔力の回復をするように決めていた。


 初遭遇の時に比べて、アンネとリナもいる。だからこそ、次を考えてボスを休ませる。そう言う作戦だ。

 その分への圧が高くなるが、しかし、それも問題ない。そもそも、防御力的にボスには負けるものの、俺だって防御能力が低いわけではない。


「行くぞ」


 俺はギンバリエに向かって剣を振るう。灼熱がギンバリエを襲い、それに反応して彼は再び影の動物たちをその身から溢れさせる。

 そして、それらが俺たちに向おうとした時、その体に胞子が降りかかり、一瞬にしてミニニコットに埋め尽くされた。


「黒いのは私が止めるよ!」


 ニコットがそう言うと、周囲のミニニコットもザワザワと動いて今まで以上に敵から養分を吸い取り始める。

 若干戦後処理でミニニコットをどうするかという心配が頭をよぎったが、取りあえずニコットは仲間なのでミニニコットも何とかなるだろう。多分。


 とにかく、俺は精霊剣を手にギンバリエに再び切りかかる。俺が切り込んだ剣は、ギンバリエの酔夢剣に受け止められた。


 二度、三度と切り結び、確信した。

 こいつは、俺よりも強い。正確に言えば、筋力に関してはこちらが上、武器の良しあしもこちらが上、だが、それを上回る程相手のスピードと剣技がこちらよりも高い。


 だからこそ、俺はある程度の被弾を受け入れつつ、腕や首を狙って剣を振りかぶった。

 技量による攻撃ではなく、どちらかというと腕力に任せた大ぶりの攻撃。本来なら命中精度的にも後の防御という面でも望ましくない攻撃方法だが、何はともあれ大ぶりの攻撃というのはそれだけ相手に警戒心を与える派手な攻撃となりやすい。

 ましてや、我を忘れている相手なら効果は絶大だ。酔夢剣が俺の肩や腹にかすり、俺の精霊剣から放たれる灼熱にギンバリエは体をわずかに煤で汚す。


 さらに何合か打ち合った後、俺の肩にギンバリエの酔夢剣が深々と突き刺さった。


「シネ!」


 剣を引き抜き、同時に魔法で生み出した黒い球体を俺に向けるギンバリエに、俺は肩の筋肉を収縮させ、酔夢剣が抜けないようにすることで答える。


 そして、黒い球体がこちらに放たれる前に、ギンバリエの剣を持っている方の腕が、根元から血しぶきを上げて断ち切られた。


「!?」


 驚く彼の後ろからは、既に遠くまで退避しているリナの姿が見える。さらに、そちらに気が向いた瞬間に、アンネが黒い球体に向かって水弾を発射した。

 一瞬の後、爆発、俺もわずかに衝撃を受けるが、手元で爆発したギンバリエほどではない。


「ナンナノダ!ナンなのだ貴様ら!」


 その叫びと共に、俺の真下から何かがせり上がってくるのを感じる。


「!?影の、槍?」


 慌ててその場を離れた直後、黒い槍が地面から生えて来る。そして、直後にミニニコットがそれに取りついて吸収を始める。


 見れば、アンネや蘇芳の所にも影の槍が出現していた。と、思えば、その槍はすぐに姿を消し、そして再び足元がせり上がる感覚がある。同時に、ギンバリエが迫って来る気配も感じる。


「フザケルナ!コロス!コロス!!」


 遮二無二に無事な方の腕を振るうギンバリエの攻撃を、咄嗟に避け、そして激痛と共に俺の腹に大きな一条の傷が出来上がった。


「グォーク!」


「主殿!」


 仲間たちの叫び声が響き、俺は咄嗟に精霊剣を腹に押し当てる。


「……っ!」


 肌が焼ける痛みに思わず呻くが、それでも出血による消耗は抑えられる。


「主殿、下がって!」


 飛び出してきたボスと、無言で苦無を投擲するリナを見ながら、俺は蘇芳に後方へと引き寄せられる。


「大丈夫なの?グォーク」


「問題ない……とは言えないな。だが、動けないほどじゃないそれよりも、何があった?」


 腹はじくじくと痛むが、出血は火傷で止まっており、既に再生も始まっている。それよりも問題なのは、俺がどうしてやられたのか把握していないということだ。俺の言葉を聞いて、アンネがギンバリエを見つめながら言葉をつづけた。


「私には、あの吸血鬼の返り血を浴びたらあんたが出血したように見えたわ」


 その言葉を聞いて、俺も足元に気を付けながらギンバリエを見つめる。

 ボスの剣による冷気で、身体に霜が降りたようになっているギンバリエは、しかし足元から生える影の槍を活用し、武器もないのに互角に渡り合っている。


 いや、違う。みれば血が不自然に蠢いている。さりげなく剣にぶつかり、その軌道を変え、冷気を受けて凍れば、やや控えめにではあるが、ボスに向かって氷のつぶてとして襲い掛かる。


 これは、偶然ではないだろう。つまり、ギンバリエは自分の血液を操れるということだ。

吸血鬼と言えば定番の血操術。

一応今章のボス枠なのでこの程度はできます。

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