表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/261

妖精と廃都道中

 廃都へと戻るため、鬼道転移符、転移門を駆使して聖都リス・デュアリスに到着してすぐ、ヘル様が不自然に立ち止まった。


「ヘル様?どうしました?」


「……、えっ、あー、ごめん。アンネちゃん。ちょっと抜けるわ」


 そう言うとそのまま一瞬で姿を消してしまった。


「何かあったのかしらね」


「通信……でしょうか。何かを察知していたように感じましたね」


「あー、まぁいいのよそう言うのは適当に流しとけば」


 思ったより高い感知能力のおかげでヘル様の何かしらを察知していたらしいリナから、半ば独り言に近い私の発言の返答をされ、苦笑をしながら返してから、私はこれからの予定をもう一度確認する。


「それじゃあ、向こうでも言ったけど、最初はギルドに行って、もう一回図書館に……ってあーっ!?図書カード無いじゃない!」


 出る時と同じ問題を抱えていることに今更ながらに気付く私たちなのだった。


~~~~~~~~

 廃都に入る方法に問題があることに気付いた私達だったが、最悪図書館の職員かスカー院長に頼み込もうということにして、ひとまずは予定通りギルドへと向かうことにした。


 ギルドに入りいつも通り異種族用の受付に行くと、あまり見慣れない女性の姿があった。


「あれ?ファンレイ様は?」


 そう言うと、女性は不可解そうな顔をして私を見つめて来た。


「あの、統括支部長なら現在別件ですが……アポイントはおありですか?」


「統括支部……ま、まぁいいわ、ならテュフラ様は」


「副支部長もお忙しい方ですので」


 ……。おかしいわね。普段ならこの受付で割といつもいたんだけれど。

 と、そんなことを考えていると顔見知りの受付……グォーク達が登録する時に対応してくれたオーク級担当の受付の男性がこちらに来て一言二言女性に声をかけ、場所を入れ替わった。


「妖精の嬢ちゃん、これからの対応は俺が引き継ごう。それで、要件は何だい?」


「……要件もそうなのだけれど……いや、まぁそのことは良いわ。ひとまずギルドに私達が帰ってきたことの報告よ。転移門も貸してもらっていたからお礼もしたかったしね」


 それを聞いて、男は「支部長殿に伝えておく」と笑顔で対応した。そして、頭を掻きながら言葉を繋いだ。


「あーっとだな。一つ言っておくが、普通テュフラ様やファンレイ様が受付対応されることなんて滅多にないからな?お前さんたちがこのギルドに来てから暫くはあの赤竜の抑制っていう理由があったようだし、その後に関しても、なにか伝えることがあるとかで受付に暫くおられたが……」


「あー、そりゃそうよね」


 よく考えれば、一応彼女たちは賢者に認められたこの世界に20人と居ない賢者の直弟子の内の二人である暇なはずが無かったし、受付対応で時間を潰すような人物ではなかった。

 改めて特別扱いされていたのかと思い直し、男にもう一度お礼に関して伝言してほしい旨を伝え。受付を後にする。

 つもりだったのだが、そこで男が私達を引き留めた。どうやら、先ほど席を離れた女性が男に何か耳打ちをしたようだ。


「あ、ちょっと待て、え~と、アンネさんと、リナさん。アンタらニコットちゃんの保護者だよな?」


「え?保護者……まぁ、保護者と言えば保護者になるのかしらね?」


「一応養育者の一人ではあるかと」


 それを聞いて、男は大きく頷いた。


「なら、ニコットちゃんを一旦預かってほしいとの伝言だ。支部長や副部長を始めとしたニコットちゃんを抑えられる人たちが全員何らかの形で手が回らん状態らしい。廃都なら子どものいたずらには寛容だし、なんだかんだ言ってお前たちなら抑えがきくだろうって話だ」


「そう……賢者のお弟子様達がそこまで忙しいって結構なものよね?」


「あぁ、そうなんだよな~こっちにも、聖水の素材採集依頼だの犬やら蜥蜴やらこう……ってすまん、流石に言いすぎたか。とにかくそれ関係の依頼が増えててな。ったく迷惑な奴らだよ全く」


 そうして腕を組む男を見ながら、私は先ほどの言葉を反芻していた。聖水が必要で、犬や蜥蜴を討伐する必要がある存在が、何らかの理由でこの聖都付近に出没した……しかもそれは賢者の直弟子が対応するような存在……。

 スキュラの上位種でも出たのだろうか?一般的には蛸のような触腕が有名な魔物だが、進化した上位種は犬の姿をした副脳や竜のような触腕を持つはずだ。ただ、あくまでも副脳や触腕であるため、犬や蜥蜴の討伐依頼というのは少しおかしい気もする。

 

 後は、魔物使い系のアンデッドが出没した……などだろうか。


 などと考えている間に、ニコットが連れてこられたので合流し、思考を一旦中断して廃都に向かうことにした。目指すは孤児院だ。と、思ったのだが、リナがそこに口を挟んだ。


「ニコット、主様の所に転移は出来ないか?」


「いや、リナ、転移っていうのは転移者がしっかりと認識している場所しかできない……」


「グォークお兄ちゃんのところ~?出来るよ~」


「出来るの!?」


 普通に驚いた。それが出来るなら、世の転移魔法使いはどこにでも出没できるかなりヤバい存在になってしまう。まぁ、転移魔法を使える時点で相当ヤバいことに変わりはないのだけれど。条件の無い転移は場合によってはそれだけで身柄を拘束されかねないくらいの重大事項だ。


「えっとね、グォークお兄ちゃんの荷物袋に、私が出したほうし?が入った瓶が入ってるから、そこからちっちゃい私を出して、そこを元にしたらグォークお兄ちゃんのところに行けるよ。というか、そっちの方が楽だからいっつもそうやって転移してるんだ」


 なるほど、ニコットにとってはミニニコットでの認知もしっかり認識しているに入るのか。そう納得しつつ、ミニニコットの管理もしっかりさせなきゃいけないな、と頭の中で考える。


 とはいえ、転移できるのならこれ以上ないことなので、食料を買い足したりした後、ニコットの転移を使って廃都へと戻ったのであった。

次回合流です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ