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オークと女オーク

「……よう!おはよう、ダーリン!」


「……あぁ、おはよう蘇芳、取りあえず、俺の上から降りてくれ」


 寝起きに知り合いの女性に腰辺りに跨られているという、恐らく普通ならご褒美となりそうなシチュエーションとセリフでおこされた俺は、きわめて冷静を装いつつ蘇芳に言葉をかけた。なお蘇芳はそのまま「ダーリンのイケズ!」といってウキウキした雰囲気を保ったまま俺から降りた。


「……というか、蘇芳だいぶ体が軽くないか?痩せてきてるのもあるだろうけど」


 昨夜も思ったが、蘇芳の見た目が出会った当初よりもだいぶ絞られている。比較対象がすらっとしているリナやミニマムサイズのアンネ、或いは逆にタッパが俺以上のボスとの比較になるためそこまで目立たなかったが、ぽっちゃり体型ががっしり体型に変わった気がする。


 ちょっと気になり俺は蘇芳の腹に手を当てる。うん、硬い。俺やボスもかなり戦闘をこなしたり訓練したりして鍛えているためオークにしてはやせ形(と言っても筋肉量も多いし骨太なので人間基準だと痩せてはいない)なのだが、蘇芳もその領域に達しているように感じる。


 更に横に滑らせると、脂肪の後ろにうっすらと腹筋の感触が……。


「おぉ!主殿、朝からお盛んですな!」


「!?すまん、つい」


 蘇芳の痩せた体型が気になって、思わず触ってしまったが、はた目から見ると少しセンシティブな映像になっていたことだろう。少なくとも蘇芳に確認はとるべきだった。


「ダーリンなら、いつでもイイよ♪」


「……すまん、今度触る時は確認させてくれ」


 と、そんなこんなありながら俺たちは朝食を貰いに行くのだった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「レディース&ジェントルメン!どうもお待たせいたしました。登場から破竹の勢いで勝ち進んだ新進気鋭の剣闘士の登場だぁ!」


  今日も今日とて声援鳴りやまぬ闘技場。そのボルテージが、俺たちが登場するとひときわ大きくなった。


「まずは鉄壁のボス~!その大楯は今まで何者の攻撃も受け止めてきました!」


 ボスが大楯を突き上げると、観客も手を突き上げて盛り上がる。


「お次は、恐れ知らずのスオウ!飢狼のように相手に突き進み、相手の喉元を食い破る!」


 蘇芳はその言葉を受けて、くるりと歩きながら一回転しながら手を振った。すると、波のように歓声が沸き起こる。

 

「そして、最後に登場するは、知将グォーク!これまでボスと蘇芳を導き、戦いを勝利に導いて来ました!その頭脳は、今回もいかんなく発揮されるのでしょうか?」


 その言葉に合わせて、俺は剣を突き上げる。ボスのパフォーマンスとほぼ同じだが、まぁ盛り上がっているから良いだろう。


「そして!、本日はなんと、彼らに立ちふさがる相手として、この闘技場のレジェンドにお越しいただきました!」


 俺たちが舞台に上がり、そんな言葉が解説から告げられた途端、先ほどの歓声が嘘のように声が途切れる。じりじりとした緊張感の中、解説からその名前が告げられた。


「剣闘王ガイアスとその愛竜ヘテロだぁ!」


 ワァァァァァァァァァァァ!!!


 俺たちとは比較にならないくらいの歓声と共に、開かれた扉の先には二つの影が姿を現した。


 大きい。巨人族なのだろう。俺たちの倍はある巨体に全身にスパイクが付いた鎧を見に纏っている。その横には彼と同等の大きさの二本足のドラゴンが追従していた。羽根はないが、飛ばれなくてもかなり強力そうな顔つきだ。


「ガイアスは200年を通してこの闘技場て戦い抜いてきた我らがスターです!この難敵に、チャレンジャーはどう立ち向かうのでしょうか!」


 歓声が響く中、ガイアスと呼ばれた巨人……いや、よく見たら縫い跡とかあるから巨人アンデッドだな。とにかく、相手の巨人が手を差し伸べて来た。


「外から来た奴とやり合うのは久しぶりだ、楽しませてくれよ」


「……いや、というか、破竹の~とか新進気鋭~とか言われてるが、俺たちが初参加したのって昨日が初だよな?」


 俺の疑問に、ガイアスはハッハと大笑する。


「なに、そう言うノリだ!因みに、俺は剣闘王なんて二つ名がついちゃいるが、ここの闘技場じゃ上から10番目くらいの強さだ。比較的剣闘士になったのが新しいもんだからもてはやされてんのさ」


 そう言うものかと納得し、俺はガイアスの手を取った。


「なら、胸を借りることにするよ」


「あぁ、いい試合にしようぜ」


 そう言って、俺たちはお互いの武器を握る。


「それでは、試合、始めっ!」


 その合図とともに、俺たちは動き始める。


「ぬんっ!」


 ガイアスの武器は巨大な戦斧だ。超重量なそれを、俺は剣の腹で滑らせて受け流す。


「ま、この程度は凌いでもらわねーとな」


 そう言って再び斧を振りかぶるガイアスの隣では、轟音を響かせてドラゴンがボスに突撃していた。


「主殿!そちらは!」


「ボス達はそっちに専念してくれ!賢者の塔で見せた実力、発揮してくれよ」


「承知!」


 言葉少なにそう言うと、ボスと蘇芳がドラゴンの方に向かっていく。


「良かったのか?一対一でよ」


「なに、俺はあいつらを信用してるからな」


 そう言って、俺は魔力を滾らせながらガイアスに剣を向けるのだった。


 

闘技場の選手について


 竜災>魔王大戦>現在の時系列上、最低でも5000年以上前に廃都は廃都になってるわけで(実際にはその数倍は時間が経ってる)……。アンデッドになれば腐敗や風化に耐性も出来るけど、流石にアンデッドになる前はそう言うわけにもいかないため、数千年前に廃都出身の剣闘士はもう出尽くしてる。

 そんな中で剣闘士として新たに戦いに参加する存在は結構ちやほやされる傾向にある。


ヘテロ 種族 ランドドラゴン  シーサーペント級

 翼を捨てた代わりに強力な外皮と高い移動能力を得たドラゴン系の魔物。某竜幼女に滅されたアークアースリザードさんがまさに蜥蜴、みたいな姿をしているとすれば、ランドドラゴンはややほっそりして素早い上に巨大な角とかいろいろ装飾が追加されたティラノみたいな見た目と性能をしている。

 耐久はやや低めだが、それもアークアースリザードとかと比較してであって、決して低いわけではない。因みにこの子は種族見てわかる通りゾンビではない。


ガイアス 種族 ジャイアントゾンビ  ヘルシックル級

 廃都に流れ着いた巨人族がゾンビになった存在。元々も冒険者で、色々あって500年ほど前に事件に巻き込まれ、廃都に逃れるも死亡、その後何やかんやあって剣闘士に転向した。

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