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ニコットの本気

「ニコット、無事だったのか!」


「無事?ってどういうこと?」


 あまりの緊張感のなさに、俺はガクッと頭を下げ、そしてその頭をアンネに叩かれた。


「いま、一応交戦中よ!もうちょっと緊張感持って!」


 確かにその通りなので、俺は慌てて周りを見据えて手に持つ何かの小物を男に向ける。周囲の男たちは、ニコットが話し出したせいで飛びかかるタイミングを失ったようで、今はお互いを見ながらこちらをけん制している状態だ。


「……ん?」


 俺はふと、何かが引っかかり、ニコットを見ずに彼女に質問した。


「ニコット、今の状況分かってるか?」


「え?ペンデリちゃんたちと遊んでて、眠くなって中庭で日向ぼっこしてて……あれ?」


 それを聞いて、俺はあることに思い至った。即ち、もしかしてこの男達、ニコットに関して詳細を全く把握していないのでは?ということだ。そもそも、ニコットは進化する前から転移を得意とする個体だったわけで、ただの牢屋では彼女を捕らえておくことなんてできない。

 となると……。


 俺は頭をフル回転させ、言うべき言葉を紡いでいく。


「ニコット、朗報だ」


「ろーほー?」


 俺が場違いな言葉を告げたことで、男たちが警戒心を露わにしてこちらに注目する。ただ、相手がオークということもあり、中々踏み込んで来ない。それをいいことに、俺はそのまま話を続ける。


「ココにいるおじさんたちが一緒に遊んでくれるらしいぞ!ルールは、閉じ込められている子どもを全部外に出して、おじさん達を全部、今ニコットがいる檻の中に入れることだ!」


 その言葉を聞いて、ニコットがキラキラと目を輝かせる。


「鬼ごっこだね!グォークお兄ちゃん!」


「それと、これはハンデで、白い粉も分身もOKだそうだ!」


 それを聞くと、ニコットは更に目を輝かせ、わはーとか言いながら頭をぎゅんぎゅん動かした。


「それじゃぁ、いっくよー!」


「なんだかわからないが、あいつを止めろ!」


 カイゼル髭の命令に、一瞬俺たちとニコットを交互に見つつ、ニコットの方に向かった男たちだったが、その判断は遅すぎた。ニコットの頭から大量の胞子が放たれ、その一帯を白く染め上げた。


 そして、その一瞬後。


「「「「「つーかまえた」」」」」


「「「「「!?」」」」」


 恐らく男達と同数であろう数のニコットの声が聞こえ、その直後に息をのむような声が同じ程度の人数分聞こえる。


 そして、胞子が落ち、視界が開けた時にはすでに、男たちは全員牢屋の中に入っており、そしてその体には同人数のミニサイズニコットがまとわりついていたのだった。


「……やっぱりこの粉、無害とは言えないんじゃないかい?」


 スカー院長の言葉に、俺は苦笑いをするのだった。



 起こったことは単純だ。ニコットが男たちを全員つかまえ、転移魔法で牢へご案内したのである。

 そもそも、直接戦闘で殴り合ったわけではないが、蘇芳と共に竜帝に突撃をかました実績もある実践派である。出来るかできないかであれば出来ると確信していた。


 そして、肝心の身の安全であるが……これもニコットに関して言えば、実はそう心配する必要はなかった。彼女の種族は"クロノ・レギオン・マッシュラウネ"アルラウネ系統は割と珍しい、植物系から精霊になる系統であり、依代と呼ばれる本体を起点に実態を持った精霊体を生み出す性質を持つ。


 まぁ、詳しいところはアンネの受け売りだが、要は彼女の本体は未だにフィノの宿屋にあるのである。

 孤児院に行く前にニコットの本体の様子を見に行ったのだが、全く反応が無かった以外は異常が無かったため何らかの魔術的な要素で精神体の方を捕われて無反応だったのだと思っていたのだが、どうやら単純に眠っていて事件を感知していなかったというわけだ。


 さて、そんなこんなで全員牢屋にいるわけだが、どうしたもんか……ひとまずリナにここの場所を知らせるのと、蘇芳やボスに外で寝ている人たちをここに押し込んで……と考えていると、俺たちが入ってきた扉がバン!と空き、一人の女戦士が武器を構えながら声高らかに宣言する。


「冒険者ギルド、賢者の直弟子、ファンレイだ!魔物の密輸及び、孤児院他の不法侵入の容疑によって……って、あれ?もう終わってる?」


 その言葉に、俺たちはいっせいに大きく頷いたのだった。


~~~~~~~~~~~~~~

「全く、厄介な」


 倉庫で既に牢に入れられていた男たちが、ファンレイが召喚したマザーサラマンドラクラスのオオトカゲに乗せ換えられて運搬されているのを見送ってから、俺たちはギルドへと事情聴取に向かうことになった。


 そして、今回の事件のあらましを話していたのだが、最初はにこにこと聞いていたファンレイとテュフラが、終盤になるとすごい渋い顔で俺を見つめてくるようになっていた。そして、冒頭言葉がテュフラの口から放たれたのだった。


「こいつらは、うちの孤児院のペンデリの為に動いてくれたんだ。何とかならないのかい?」


 テュフラの言葉に、スカー院長が声を上げるが、それに二人は頭を振り、ファンレイが言葉をつづけた。


「いや、私達としては、そこを問題視はしていない。リコット、だったかな?一緒に冒険をしているマイコニドを連れ去られて追いかけるのは、大きく見て自衛の範疇だからね。これで相手を皆殺しにした……とかなら話は変わってくるけど、まぁ、厳重注意くらいだろう」


「問題は、そのマイコニドの方」


 ファンレイから言葉を継いだテュフラは、そう言い切ったのであった。

どこかで書いたけど時属性の術師をまともに相手したら勝ち目がないので……。

もしニコットVSグォークで戦ったらニコットはいくら倒されても再生するしニコットはニコットでグォークに有効打与えられずに千日手になる程度には生存率が高いです。

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