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オークとカブトムシ

投稿一つミスってやがる……

 巨大カブトムシは、大きく旋回すると俺に向かって突撃する。俺はそれに向けてウォーハンマーを構え(精霊王の剣では間違って世界樹を燃やしかねないため)ハンマーでカブトムシをいなす。


「リシ―さん!」


 俺は気を付けながらバケツを放る。リシ―はバケツを何事もなかったかのように受け取った。


「とりあえず、樹液お願いします」


「それくらいなら承ります」


 リシ―の声を受けて俺は再び前を向き、そしてクワガタが迫っていることに気付いた。


「っつ!」


 俺は咄嗟にウォーハンマーを放り出し、クワガタの顎をガッチリと掴む。……意外と挟む力が強い。

 何とかオークの怪力で拮抗しているが、他の行動を取るのは難しいだろう。そんな攻撃を受けつつ、俺はあたりを警戒する。

 見つめた先にカブトムシが飛び込んでいるのを見つけた。


「よし、ウォォォォォォ!!」


 俺は力を込めて、タイミングを合わせてクワガタを持ち上げる。そして、そのままカブトムシに向けてクワガタに投げつけた。


「!?」


 投げ飛ばされたクワガタは、見事クワガタに命中しもんどりうって崖下に落ちていき、途中で分かれ、そのままどこかへ飛び出していった。


「終わりか?」


「えぇ、虫の魔物は一度負かされるとすぐに逃げることで命を繋ぐ種が多いですから。具体的に言うと、個々の木から落ちると負けを認めてその場を去るんです」


 なるほど、そう言えば前世でも虫相撲みたいな感じで勝負する人たちがいた気がする。詳しくは知らないが、そう言う習性があったからなのかもしれない。


「……と、それじゃぁ、最後の”形代人形”ですね……これが厄介なんですが……まぁ、ついて来て下さい」


 微妙な顔で進む……前に、ふと気が付いたリシ―が何やら虚空を見つめて意識を集中させた。すぐ後に、転移門が出現する。


「なんか、ジュモンジ様から、転移するように言われたけど、上手くいったの?」


 すると、安全の為に離脱したアンネがひょっこりと顔を出した。どうやら、ことが済んだためにリシ―とジュモンジ老の間で話をしてアンネを呼び出したらしい。

 因みに、アンネ達の転移先としてジュモンジ老の所を選んだのは、もしも虫も一緒に呼び込んでしまった時に戦えない物がいる場所だと事故が起きかねないからだ。

 


「あぁ、何とか樹液も採れたぞ」


 それを聞いて、アンネは嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、次が最後ね!」


 そして、全員そろった後で、俺たちは最後の場所に向かって歩き出した。とはいえ、世界樹の周囲は崖があったり、町から伸びる壁があったりはするもののそこまで景観に変化はなく、正門から更に四分の一周ほど回ったところで、最後の目的地が見えて来た。


 そんなところで、リシ―がおもむろに語り掛けて来る。


「さて、そろそろ目的地に到着することだし、あらかじめ形代人形について伝えておきましょう。

 形代人形とは、名前の通り本人の分身となるために生み出された人形です。魔力を持った土と、対象の魔力を混ぜ合わせることによって魔力的にほぼ同質な存在を生み出す呪具。使用法は多岐に渡るけれど、まぁ、高度な魔術であることに変わりはない。


 そして、そんな呪具を生み出せる存在は多くないから」


 そう言って、近づいてきた小屋を見やり諦めたようにため息を吐いた。


「恐ろしいほど偏屈で、狂人と思うばかりの変人であっても重宝されるんです」


 次の瞬間、足元から土の槍が出現し、リシ―は軽く宙に飛んで躱す。


「ふんっ!何をしに来た草食み虫め!」


「土もぐ……いや、不調法者のノームの君に言われたくないですね!」


「ならば、貴様に土を付けてやるわ!」


「ちょっと待て待て待て!」


 慌てて俺は二人の間に割って入った。リシ―を草食み虫と呼んだ髭を生やした小さな老人が放った土の槍が、俺の足元から生えるが、俺はそれに拳を合わせて破壊する。


「……、む、なんじゃ貴様」


「俺は、オークのグォークと言います。形代人形を作れる職人は、貴方ですか?り……いえ、ジュモンジ様にとある件で助力を頼んだ際、形代人形について聞いたのですが……」


 老人の反応を見て、元エルフのリシ―の名でなくジュモンジの名前を出すと、老人は顔を顰めながらその場にどっかりと座り込んだ。


「ふん、聖木様の頼みとあれば、話を聞いてやらんでもないわい。じゃが、形代人形か……」


 そう言いながら、老人はじろじろと俺を見つめて来た。


「ふん、話にならんの。お主の歪で定まらん魂なぞ、形代にする価値もないわ」


 そう言って、老人はぷいと視線を横に逸らす。


「む、むむむ?むむむむむ!?」


 そして、俺の横をふわふわと浮いていたアンネの周りをくるくると回ったかと思うと、ギュッとその手を握り込んだ。


「なんと素晴らしい!是非お主を元に形代人形を作らせてくれ!」


 急展開に困惑していると、いつの間にか近づいて来ていたリシ―がため息をつきながら声をかけて来る。


「やはり、こうなりますか……。ノームは我らエルフや土に住むドワーフと違い、実用性を排除した芸術を好むのです。それ故に、たとえ恩のある者であっても自分の納得しない物は絶対に作らず、そして、自分が納得する物なら、まぁ、あのようになるのですよ」


 それを聞いて要するに偏屈な芸術家肌なんだと理解し、アンネを見た。


「だから!形代人形を作ってほしいのは私じゃないのよ!」


「そんなことより、お主の人形を!」


「あぁ!まどろっこしいわね!、この子よ!この子の形代人形を作ってほしいのよ!」


 アンネがいつもの癖で道具袋に入っていた茸人を引っ張り出した。それを、ノームの老人はちらりと見た後、困惑気味に頭を下げた。


「む、むむむ、なるほど……確かに、しかし、お主の方が……」


「なら一緒に作ってもいいから。ただし、しっかり力入れなさいよ!」


「おぉ!それなら構わんぞ!早速作るから入っとくれ!」


 そう言うと、半ば引きずり込むようにアンネと茸人を小屋の中に招き入れ、そのまま扉を閉めてしまった。


「……こう言っては何だが、あの爺さんに任せてよかったのか?かなり不安なんだが」


「まぁ、あの土モグラは実力は確かですからね、口惜しいですが変なことにはならないでしょうね」


 その後、しばらく待つと、アンネと茸人、そして満足そうなノームの老人が出て来た。二人の手には半透明で少し成長したアンネと、頭に笠を被った女性の人形をそれぞれ持っていたのだった。


 何はともあれ、形代人形もゲットである。

今作世界では

 エルフVSドワーフよりエルフVSノームの方が根深い問題。というのも、数千年年亜人って括りで共闘してきたので、エルフとドワーフは嫌いつつも人族として身内感覚がどこかにある。

 一方でノームはそもそも亜人種でなく精霊種のため、魔王大戦時に他の精霊種と共に中立を保ち、割と好き勝手に自分の創作に没頭していたためエルフたちの中で反感が強い。ただ、ドワーフは独自の交易路で彼らと交易していたのでそこまで反感は無かった。

 なお、彼らは皆芸術家肌と言われることもあるが、方向性は全く違う。


エルフ 繊細な造形を好む。また、実用品や嗜好品の制作に長けている。基本的には植物性の素材を使い、稀に動物性の物も使用するが、鉱物は一切使わない。また、武器、防具に関しては実利的で質素で機能性を重視する。


ドワーフ 繊細な造形を好むのはエルフと同じだが、エルフよりも機能美を探求する傾向にある。そのため、武骨な物を作ることもしばしば。素材は問わないが、鉱物を特に好む。依頼を受ければ何でも作るが、どちらかというと自分の制作物で世界に名を残したいという意志が強く、そのため派手な活躍を産みやすい武具系を好んで作る。


ノーム 自分の感性を信じる。機能美は一切無視し、真に自分の作りたい物を作ろうとする。素材は地面に関する物であれば何でも使うが、特に土や砂と言った素材を使うことが多い。土属性の魔力の扱いについてはドワーフ以上のものを誇り、土を扱う場合は彼らに不可能はないともされる。

 ただし、自分の感性を信じる種族であるため、依頼を受けて仕事をするということを好まず、仮に受けたとしても自分の納得できる方法、完成品でなければ仕事もたやすく捻じ曲げる。

 その特性上、実用性のあるものよりも、意味不明なものの方が多いともされている。

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